戯曲 こじらせプリン⑨

愛希 私ってケチなのかなー?なんか、私には割引シール貼ってあるプリンが1番似合うかなーって。なんか私みたいでしょ、3割引って。みんなほどよくできた人間じゃないから、安売りして、割引して、気づいてもらえるようにシール貼って・・・私そんな感じで生きてるからさ、なんか3割引のプリン見てたら自分のこと見てるみたいで買っちゃうんだよね。私からすれば、まみちゃんは手の届かない258円のプリンアラモードだよ。

まみ えーなんかそれって喜んでいいのかびみょー。私258円の女とかなんかヤダ。絶対ヤダ。

愛希 まみちゃんのワガママレベル神様に負けてない・・・。

まみ でもまあとりあえず、プリンアラモードとしてひとこと言わせてもらうけど、誰がいつ愛希ちゃんに3割引のシール貼れって言ったの?自分で勝手にシール貼ってるだけ。しかもそんなシール貼ってる24歳女子とか超絶ダサいからね。

愛希 え、うそ、ダサい?

まみ うん、ダサすぎて見てらんない。

愛希 どうしよ。

まみ まあ別にいいけど、愛希ちゃんが貼りたいなら、ね。さっきも言ったでしょ、やりたいことやったらいいの。やりたくないことだけ無理にやろうとしてる愛希ちゃんはさ、知らない間に自分で自分に棘刺してるようなもん。十分自殺してるよ、海に飛び込むよりもっと残酷に自分を殺してる。あはは、なんか十分自殺って変な言い方だけど。愛希ちゃんが自分でつけた傷、割引シールなんかで治らないよ、絆創膏じゃないんだから。

愛希 ・・・。

まみ 愛希ちゃんの夢、今すぐにでも叶えられると思うけど?プリンアラモード買っておいでよ。私からすればそんなの夢とも言えないけど、でも愛希ちゃんにとっては、ずっと大事にしてきた大きな夢なんでしょ?愛希ちゃんがやりたいことは、世界を裏切ることでも、ダサい割引シール貼ることでもない。私ここで待ってるから。

愛希 いいよ、今日の分のプリンもう買って食べてるし。

まみ ちょっと愛希ちゃん、私の天国行きがかかってるんですけど?

まみ、愛希を立ち上がらせ、背中を押す。

愛希 これでまみちゃん天国に行けるの?

まみ 行けるでしょー!ちゃんとプリンを食べさせるってこういうことだったのかー。これ以上愛希ちゃんが勝手な自己評価で自分に棘を刺し続けてしまわないように。

愛希 まみちゃんはダサいって言うけど、私割引シール結構似合ってると思うんだけどなー私赤色似合うってよく言われるの。

まみ まあ、私よりは似合うかな〜?私は赤じゃなくて青が似合うから、真っ赤な割引シールなんて死んでも貼りたくない!

愛希 もう死んでるじゃん。

まみ あ、忘れてた。

二人笑い合う。

愛希 じゃあ買ってくるね。待ってて。

まみ うん、待ってる。私の天国行きがかかってるから寄り道しないで帰ってきてよ?

愛希 わかってるって、大丈夫すぐそこだから!いってきまーす!

愛希はスーパーの方へ駆け出す。しかし途中で何かを思い出したかのように立ち止まり、満面の笑みでまみの方を振り返る。

愛希 ねぇ、まみちゃーーーーーん!

まみ んーなーーーーーーにーーーーーーー?

愛希 私思ったんだけどさー。

まみ 何をー?

愛希 今から私がちゃんとプリンを食べたら、この戯曲ぜんっぜんおもしろくないよねー?

(続く)

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