「トップ販売員の接客術」を読んで 忘れられない販売員はかつての上司ブティックのマダム
パーソナルコーチのあぷりこっとです。
週末、こちらの本を読みました。
以前から気になっていたのですが、なかなか読む機会がなくて。
元同業として共感できるところがたくさんある、素敵な一冊でした。
この本を読んで思い出す女性がいます。
わたしは昨年まで外資系ブランドの店長をしていました。新入社員として入社したのではなく、中途入社です。
3年間の金融業界を経て、もともと接客業に興味をもっていたので地元の老舗ブティックで働き始めました。
オーナーがパリやミラノ、そして国内の商社から買い付けたものを店舗で販売するというスタイルです。ヴァレンティノ ガラヴァーニやドルチェ&ガッバーナなど、主にイタリア・フランスのブランド品を取り扱っていました。
そこはオーナーとは別のマダムがいて。
お客様との向き合い方、会話の仕方、行儀作法、お修理の受け方などを習い、今思うと販売員のスタートがここでよかったと思っています。
当時はメールやLINEもなく、コンタクトツールはお電話かお手紙でした。
マダムはいつも綺麗な便箋にご自分で季節の花を描いて、一枚一枚丁寧に書かれていました。達筆で気持ちが込められている素敵なお手紙だったのです。
新入社員のわたしは、もう驚きの一言です。
こんな人いるんだって。
サロンなので基本はアポをとってお迎えするスタイルです。
突然のご来店もお受けしていましたが、百貨店ではなくゆったりとお買物をされたい方はアポをとってパーソナルな空間も楽しまれていました。
皆様、お茶を飲みながら2〜3時間、メンズもありましたのでお連れ様と別々に楽しむこともできて。週末はご夫婦でご来店されることも多かったです。
マダムの顧客様への対応はいつも素晴らしいものでした。
まずはお話しを聴く、みんなマダムにお話しを聴いて欲しいのです。家族でも友人でも仕事仲間でもなく、全然知らないところで気持ちを緩めに来られるのです。(お財布もですね…笑)
なので、わたしたち従業員は店内のことは外に漏らさないようにと厳しく教育されました。マダムは所々盛り上げますが、基本聴くスタイルです。
わたしたちはその場の空気を読んで行動することを求められます。必要なものを用意したり、お連れ様やお子様のお相手をしたり…目での合図もありました。
鈍臭いことしたら叱られます。
少人数ですが一つのチームとして動いていました。その間にコーディネートを勉強したり、お客様のバックグラウンドを把握したり(時々お話しを振られるので)、会話の仕方も学びました。
トンチンカンなことを言ったら大変です。
ここで、おもてなしの基礎を徹底的にたたき込まれました。
お店をクローズするタイミングあたりで卒業して、ラグジュアリーブランドの世界に足を踏み入れたのです。
地元から大阪のマナーに厳しい有名な百貨店でスタートして、人の多さと社会で揉まれることを始めて知りました。競争するということも(笑)
2002年頃、当時は飛ぶように売れていましたので、日々トラブルはありましたが販売は楽しくさせていただきました。
販売員からマネージメント側に変わりましたが、わたしの考え方のベースはマダムから教えていただいたことです。
お客様に楽しんでお買物をしていただく。
お客様をお見送りする時は、必ず笑顔になってもらう。
マダムには絶対的な自信があったのです。
必ずわたしのところに戻ってくる。
それだけちゃんと心を通わせていたのです。
厳しくてカッコいい女性でした。
この本を読んで一番にマダムのことを思い出しました。わたしが最も尊敬する販売員、大阪に出てきたのでもう何年も会っていません。
著者はわたしとほぼ同じ時代にラグジュアリーブランドで勤務した方なので、共感できるところがたくさんありました。
時代の流れ、規模の大きさは違いますが、基本の考え方は同じと思える一冊。この業界の書籍として、久しぶりにいいものに出会いました。この方が努力されたことも、凄くわかります。
あの販売員さんにまた会いたい。
それは販売員として、最高の褒め言葉です。
イベントの朝礼時に、必ず伝えていた言葉があります。
「今日もお客様に楽しんでいただきましょう」
忙しくてもトラブルがあっても、絶対にこの気持ちを忘れないように。
誰よりも自分に言い聞かせていたのかもしれない。
あぷりこっと
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