開拓者たち(2012年)

画像1 開拓者たちはNHKのドラマ10で放送された、日中国交正常化40年記念ドキュメンタリードラマ。開拓移民として満洲に渡った女性の視点で描かれ、全6回で完結する。
画像2 同じ船で満州に渡ったハツ(満島ひかり)、チエ(徳永えり)、梅子(芦名星)、鶴子(前田愛)の4人はそれぞれ集団見合いのような形で、伴侶となった男性たちと縁もゆかりもない土地で家族を作り、同じ時期にやって来た大勢の他の家族と共に集団生活を送っていた。
画像3 主人公のハツは満州で夫になる浅野速男(新井浩文)と初めて顔を合わせる。朴訥でぶっきらぼうな速男の口癖は「まあ、いい」。いくらなんでももう少しロマンチックな出会いを期待していたハツだったが、何のトキメキも抱けぬまま2人の夫婦生活はスタートした。
画像4 ハツたちは千振(ちふり)という開拓地区に居住することが決まる。現地中国の小作人たちのコミュニティに少しずつ溶け込みながら、同じように移住してきた開拓仲間たちとともに、肥沃な土壌で農作物を一生懸命育てるハツ。過酷な状況でも元気に働き、健気に夫を支え続けるハツの力強さに速男は感謝した。そして、貧しく生活に困窮する兄弟たちを千振に呼び寄せたいというハツの願いを快く承諾した。
画像5 兄弟である金次、富江、史郎たちを千振に呼び寄せたハツ。剛くんは長弟の金次を演じています。面倒見が良く、歳の離れた妹と弟を優しく見守る穏やかな性格。開拓民を守る関東軍に憧れ、のちに志願して入隊します。
画像6 次弟の史郎は虐められっ子で泣き虫な男の子でしたが、小作の息子である王春岐(おうしゅんき)にいじめっ子たちから助けられたのをきっかけに、2人は無二の親友になる。春岐という強い味方ができた史郎は千振での生活が一気に楽しくなりました。夕暮れに2人が馬に乗るシーン、めちゃくちゃ良い。
画像7 ハツは忙しい農作業の合間に勉強時間を捻出し、産婆(助産師)の資格を取ります。そして、千振で子供を授かった多くの家族の出産で腕を振るい、活躍します。ほどなくしてハツと速男の間にも子供が産まれ、ハツの兄弟たちを合わせると総勢7名という大所帯で、賑やかな家庭を築いていました。
画像8 関東軍に入隊し、憲兵隊に配属された金次は、開拓民や現地の治安を守ってくれるはずの関東軍の裏の顔を知るだけでなく、抗日ゲリラとして捕らえた中国人への拷問や暴行などに加担することを余儀なくされる。そんな自己矛盾に辟易し、やり切れない気持ちでいた。義兄である速男に「銃を持つと人は変わる」と忠告されていたが、自分は絶対大丈夫だという信念を貫くはずが、理想と現実のギャップに悩み苦しむことになる。
画像9 子供の頃仲良しだった史郎と春岐は、互いの立場から以前のような関係を保てなくなっていた。「ここはもともと私たちの土地だ」という春岐を、日本は今追い出す立場であることに史郎は心を痛めます。
画像10 当初、開拓民は徴兵の対象外とされていたはずが、男たちは強制的に戦場に駆り出されていった。速男は他の千振の開拓民たちと共にソビエト戦に参戦して抑留されてしまい、千振に帰って来れなくなる。
画像11 ソ連軍の侵攻とともに、開拓民たちにも危険が迫ってくる。千振から列車で脱出することになった開拓団一行だが、列の後方で遅れを取っていたハツや仲間のたちは無情にも置き去りにされてしまう。
画像12 何とか自力で脱出することを決め、長い道のりを必死に歩く一行。皆が無事安全に逃げられるよう、史郎が一行を指揮して引率していたが、ストックの食べ物もなくなり、女子供とお年寄りは栄養失調で力尽きて亡くなる者も少なくなかった。史郎たちは逃亡中に偶然春岐と出くわす。その場で史郎たちを捕らえることも、銃で殺すこともできたが、春岐は親友である史郎を見逃した。そして、「あと1ヶ月もすれば厳しい冬が来る。方正(ほうまさ)という街に行けば日本人の避難所があるからそこへ行け。」と教えてくれたのだった。
画像13 心身ともに極限状態で方正の日本人避難所にたどり着いた千振開拓団一行。食料の配給と寒さを凌ぐ場所を与えられ、安心と安全を手に入れた矢先、ハツは次女の恵子を病で亡くしてしまう。深い悲しみに暮れながらも、家族と仲間たちを守るために逞しく生きていくハツには本当に勇気づけられます。そんな混乱の中でハツは、家族を失って一人ぼっちで逃げている少女と出会います。彼女の名前は偶然にも、亡くなった次女と同じ恵子でした。この出会いに何か運命的なものを感じたハツは恵子を家族に加え、これから先の生活を共にしていくことを決意します。
画像14 終戦後に日本に帰れることが決まり、開拓団の人々はみんなで船に乗って帰国する。開拓団として労苦を共にした仲間たちは、それぞれの故郷に散り散りになって行った。しかし、彼らを待ち受けていたのはさらに過酷な生活だった。たとえ厳しくとも、仲間たちと満州で築いた温かな人間関係はそこにはなく、着の身着のままの貧しい開拓民の子供たちは、学校でも仲間外れにされてしまう。
画像15 やがて国が払い下げた土地を譲り受け、千振開拓団の仲間たちは再び集結し、その地を開拓する。彼らが最後にたどり着いたのは、今の栃木県那須町。ここを彼らは千振開拓地として生活基盤を固めていく。ハツの夫である速男は戦地で病を患い、帰らぬ人となった。ハツは、戦地に赴く前に速男が遺した手紙を開封する。そこには2人の思い出の花、桔梗の種が同封されていた。穏やかな深い愛に溢れた速男の死を静かに受け止めるハツ。思わずこみあげるシーンです。
画像16 開拓民たちにとって、かつての仲間たちと再び暮らせる喜びは大きかった。しかし、新たに開拓した土地で農業や酪農を営むのは容易ではなかった。順調に作物が育つようになるまでは、長い歳月をかけて試行錯誤を繰り返して改良を重ねる必要があった。
画像17 関東軍に入隊したハツの弟の金次は、戦後新たに築かれた新中国に戦犯として裁かれることになっていた。憲兵隊にいた頃に中国人に対して行った残虐な行為を紙に書かされ、こんな程度ではないだろうと何度も書き直しを命じられた。自らの意思ではないにせよ、金次は罪を認めざるを得なかった。
画像18 金次は、無実と思われる者もいたはずであろう中国人への拷問、暴行、殺害の罪を認めた。この時、中国検察の上申で155人の日本人が起訴され、最高刑は死刑という判決が下された。しかし、周恩来首相がそれを却下し、起訴45人、最高刑は懲役20年に減刑された。実話に基づくストーリーなだけに、剛くんの緊迫した表情と涙の演技は胸に刺さります。
画像19 悲しい結末を迎えた夫婦は他にもいます。速男の友人でハーモニカが得意な木戸浦進作(小林且弥)は、徴用された先で終戦後を知るや否や、1人脱走して千振に戻る。そこで中国人に捕らえられて炭鉱夫として抑留される。のちに炭鉱の爆発事故で脚を負傷して不自由な体になったものの、帰国して妻チエの元に戻る。しかし、チエは兄の勧めで既に再婚して子供を孕っていた。生きて帰れるか分からない夫を待つ妻の気持ちも分かりますが、これはさすがに進作さんが可哀想で、見ているのが辛いシーンでした。
画像20 一方でハッピーエンドを迎えた2人もいます。史郎はなりふり構わず毎日せっせと働く恵子とともに過ごす時間が長くなっていった。そして2人は結婚し、立派な牧場を持つという夢に向かって共に歩んでいく。
画像21 ハツが満州に呼び寄せた妹の富江は看護師になる夢を叶えたが、ソビエト軍の侵攻を経て中国共産党軍に留用され、戦場に行軍していた。共産党軍の徐栄慶という青年と恋に落ち、終戦後は徐と結婚して中国に残っていたが国交が正常化されたのちに一時帰国を果たし、ハツと再会することができた。当時は他にも離れ離れになった多くの家族の、それぞれの結末があったのでしょうね。
画像22 今や農業や酪農で有名な那須という地は、当時の開拓団の方々の血の滲むような努力の結晶なんですね。日本全国各地には、そんな風にして豊かに育まれた土地が他にもたくさんあるのでしょう。地味だけれど、テーマもストーリーも役者の演技も、どれも本当に素晴らしく良いドラマだと思うので、多くの人に観てもらいたいです。

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