悪夢日記

いつものように愛犬の散歩をしていた。犬への愛情は確かにあるのだが、毎日毎日単純に繰り返される行いを面倒に思うのも無理はないだろう。
「引っ越しか?」
荷物が積み重ねられている場所に犬が頭を突っ込んでいきそうになるのを慌てて止める。
誰かに見られたら少し気まずいので足早にそこを離れた。物音には気づかなかった。

またいつものようにレンタルビデオ屋のバイトに向かう。太った男が後ろをずっと歩いている。
「気持ち悪いな」と思ったが、人を容姿で判断するのは良くない。そう思い気にしないことにした…そんなことは無理だったのだ、男がチラチラと自分がいるレジの方を見てくる。気になって仕方がない。自分が何をしたのだろうか?と悶々としていると目の前に男が立っていた。慄然とした。震える手を誤魔化しながら作業を進める。自分が気づいていることを悟られないように、悟られないように…「無理だ」そう思った瞬間男がカウンターに足をかけこちらに襲いかかってくる。
急いで逃げる。震えて使い物にならない足を無理やり動かし階段を駆け降りる。泣きそうになりながら携帯を取り出し警察に連絡をする。警察が来るまで耐えるだけだ。と思い気が強くなった。
男が追いついてき、「見たんだろう…見たんだろう…見たんだろう…」と呟いてくる。頭がおかしいやつを目の前にするとこんなに恐ろしい気持ちになるのか。男が腕を掴んできた、汗ばんでいて気持ち悪い。何をされるのだろうか、自分は焦りの気持ちでいっぱいだった。目をぎゅっとつぶり必死で抵抗する。その時、腕を掴む手が軽くなった。おそるおそる目を開けると男が階段の下に落ちていた。死んだのだろうか、自分が殺したのだろうか。どっと力が抜けた。
ぼーっとその男を見ていると、店長が騒ぎを聞きつけやってきた。警察にすでに連絡してあることを告げ、スタッフルームで休むように言われる。
その後警察がやってきた。男の話をされ、どうやら男はバラバラにした死体を自宅の前に袋に入れて捨てていたらしい。それを自分に見られたため追いかけてきたようだ。なんなのだ、処理が甘すぎないか?いつか誰かにバレるだろ。と悪態をついていると、店長が戻ってきて
「大丈夫か?大変だったな」と優しく声をかけてくれた。返事を言おうと顔をあげ、店長の顔をみるとどこか違和感があった。こいつは、店長ではない。あの男なのだ。全ては嘘だったのだ。瞬間的にそう悟った。
そうか、そういうことか、そういうことだったんだ。

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