フランスのピアノ曲名曲紹介〜①J.クラ

皆さまこんにちは。
今月はフランス近代音楽における隠れた名曲として、クラ(クラーズと表記・発音される場合もあります。Jean Cras, 1879-1932)のピアノ曲を紹介します。
同時代のフランスには沢山の有名な作曲家がいる中で、彼の作品は演奏頻度が低いので、本記事を通じて魅力が広まり演奏頻度が上がることを願っています。

クラは作曲家であると同時にフランスの海軍士官で、発明した作図装置が海軍で使用されるなど多才な人物でした。
ピアノ曲のほかに声楽曲、室内楽曲、オペラなども作曲しましたが、同時代の作曲家たちの斬新な楽曲の影に隠れて、クラの楽曲は死後演奏される機会が減ってしまいました。
クラの作風は、当時のフランス音楽に求められたような目新しさを感じさせるものではなかったかもしれませんが、洗練された多彩な響きと陰りのある曲調が特徴で、故郷であるブルターニュを題材とした作品も残しています。
以下、筆者のお気に入りの作品紹介です。
※曲名の訳を、筆者の趣向(独断?)で通例と変えたところが多々あります。

・二つの風景 : Deux Paysages
https://youtu.be/Ual-_sd3TCY
この曲は「海辺の風景」「田園の風景」の2曲から成ります。
絶え間なく続くパッセージが、波やそれに反射する陽の光といったさまざまな情景を連想させる1曲目と、ところどころ古風でおどけた曲調の2曲目が対比が特徴です。

・子供の心(6手連弾): Âmes d’enfants 
https://youtu.be/0lFHfIQ6m0k
この曲は「純粋な心」「素直な心」「神秘的な心」の3曲から成り、作曲者自身の手によりオーケストラ版と4手連弾にも編曲されています。
クラの楽曲は暗い曲調のものが多いですが、この曲は子供を題材にしているためか軽やかでチャーミングに書かれています。3曲目の最後で、日本でも馴染みのあるとある旋律が登場します。

・「内面的な詩」Poèmes Intimes 
    1.島にて https://youtu.be/75tDYexI31E
 2.小フーガつきの前奏曲 https://youtu.be/OKowil_PNNs
 3.水の流れるままに https://youtu.be/B01QkElSg7k
 4.瞑想 https://youtu.be/YItwPSZPp28
 5.朝の家 https://youtu.be/9D91m2d-Wlo
この組曲は「親密な詩」「くつろいだピアノ曲」などの訳がついているようですが、意味の通りやすさと曲調からこの訳にしてみました。
「島にて」は憂いを感じさせる内省的なメロディが印象的で、続く「小フーガつきの前奏曲」は、古風で神秘的なメロディが次第に盛り上がっていく前奏曲に、前奏曲に似た音型でより快活な小フーガが繋がります。「水の流れるままに」は印象派風の軽やかな作品で、「瞑想」は「島にて」にも通じるような物悲しい曲調です。最後の「朝の歌」は、穏やかそうなタイトルに反して激しく物々しい様相です。
重い雰囲気の曲が多いため、全曲通して聴くには少々労力を要するかもしれませんが、クラの作風の魅力が凝縮された作品といえるのではないでしょうか。

・ピアノ三重奏
1楽章 https://youtu.be/ich284rdZBg
2楽章 https://youtu.be/32--6NHkNwk
3楽章 https://youtu.be/CpSvHhlXkXQ
4楽章 https://youtu.be/FYbOUr9gIGo
クラの作品はピアノ曲含め全体的に響きが豊かですが、室内楽曲は弦楽器の重厚な響きを活かして作曲されており、ピアノソロの曲とは少し違った趣があると筆者は感じています。
フランクやショーソンなどとの共通性も見られるのではないでしょうか。



来月はフランスの別の作曲家を紹介するか、他の国の作曲家を紹介するか、全く関係ない記事にするか決めていませんが、次回の記事もお読みいただけると嬉しいです!

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