hazamaはどうやってソーシャルで売上を伸ばしたのか?
こちらのnoteではファッション業界の最新ニュースを1週間に5本程度解説し、その先に起こり得る事や豆知識を盛り込んでご提供いたします。
先週のピックアップニュースは下記の通りです。
・hazamaはどうやってソーシャルで売上を伸ばしたのか?
・高原価率を推す企業の粗利率がやけに高い件について
・オーダーサービスはブランドと絡めた方が効果的な理由
・「コモディティ化」の対策は「ブランド化」しかない
・減り続けるファッション専門学生
hazamaはどうやってソーシャルで売上を伸ばしたのか?
華麗なるランウェイとその舞台裏の狭間で【 ha | za | ma ファッションショーレポート】
2018年6月8日。アパレルブランド 「 ha | za | ma (ハザマ)」の初となるファッションショー「 ha | za | ma 2018 A/W TOKYO COLLECTION "NOT BAD NIGHTMARE(悪くない悪夢)"」が開催された。 その反響は既にSNSを通してご存知かもしれない。入場無料とはいえ、恵比寿ガーデンホール420席を2公演とも満席にし、それぞれ立ち見客を150人以上集める大盛況となった。
ソーシャル上で影響力を伸ばし、なんと売上1億円にまで到達しているというファッションブランド「hazama」。先日、ファッションショーを開催した事でfashionsnap.comなどにも取り上げられ話題になっております。僕も先日のnoteで少し触れておりますが、
ファッション専門講師が独断で選ぶ、webで「バズる」「刺さる」ブランド特集
専門学校の講師をしていると、大体の学生がこのブランドを知っているのです。最初は「専門生が好きな東コレ系かな?」と思っていたのですが、web以外で目にする事もなかったので、
「まさか本当にソーシャルのみで拡販してたんだ…。しかも売上1億円って!!」
と度肝を抜かれた次第です。僕の教え子にはブランドスタート直後からのファンがいましたので、一体どうやって今の顧客にリーチし、そして拡大していったのかを聞いてみました!(以下、教え子とのQ&Aです。そしてその子から展示会がちょうど今開催されているという情報を聞きつけたので行ってみました。)
Q.ブランドをどこで知りましたか?
A.ブランドを知ったのはTwitterです!同じ学校の子がリツイートしてて知りました。そこで大阪の展示会場を私が以前から知っていたので友達といってみたのがキッカケです!
Q.どうやって購入しているのですか?
A.年に2回あるSSとAWの展示会で受注してます。あとは期間限定ですがウェブでも購入可能です。ただハザマは基本的にこの2回でしか購入できないですし、定番のアイテム以外はそのシーズン後にほぼ買えないです。展示会で注文をした方のみ、
①そのシーズンのポストカードをもらえる
②商品の送料が無料
というサービスがついています。ただ、そこよりもデザイナーの松井さんとお話が出来ることや試着ができること(買わない前提でもいくつでも試着可能)だったり、あとは展示会でハザマ好きな人と仲良くなれる点が一番のメリットです。
Q.どういうお客さんが多いですか?
A.レデイース7〜8メンズ3〜2くらいの割合かなと思います。基本的に高校生くらいから社会人くらいの年齢の方が来店されてますが、購入してるのは大学生、専門学生が多いイメージです!顧客のTwitterのRTでハザマに興味を持ち、そこから口コミで一緒に展示会に来る方もいるはずです。
Q.デザイナーの松井さんはどういう方ですか?
A.松井さんは展示会に来た方全員に名刺を渡して、「試着してね」と声をかける優しい方です。かなり気さくなお方です!Twitterのリプのほとんどに返信する方なのでそういう面が若い子からすると嬉しいのかもしれないですね。デザイナーとしてはこだわりの強い方です!私ももう4年目になりますがここまで来ると少しリアルなお話もしてくださったりします。
Q.hazamaの服の魅力を教えてください。
A.服の魅力ですか、、、私がハザマを好きになったのはTwitterに流れてきた写真に写ってる服にヒトメボレですかね、、見た瞬間に"可愛い""これ欲しい"ってなりました。それで実際に着てみるともっと好きになりました。
という感じですね。僕がこの話を聞いて優れてると感じたポイントを下記にまとめます。
①to Cに向けた展示会形式のセールスで完全受注発注だから在庫リスクゼロ
展示会って本来はto B向けで、専門店を呼び込んでそこでセールスをかけます。相手は企業なので1社でそこそこの発注量があったりするのですが、それを個人に開放すると受注数が読めません。普通、1点あたりのコスト削減とセールスの拡大考えると、個人に対して受注発注というやり方は選択しないのです。余程集客に自信があったのか、ご自身の服を好きな人たちだけに着て欲しいという願いがあったのか。しかしこれが在庫リスクを軽減させていますし、売上がしっかりと取れている今はメリットしかありません。
値段もそんなに安くないんですが、ユーザーにはそれ以上の体験価値があるようです。デザイン性も好まれているでしょうけど、展示会での購買体験が満足度を上げているようにも感じます。
②年2回のセールスと期間限定でのweb販売が希少価値をアップ
実店舗やECがあれば「いつでも買いに行ける」が当たり前ですが、年2回のセールスでしか基本的に購入できる機会の無いhazama。サイト見ても全てソールドアウトなのですが、web販売も期間を絞って販売されているようです。これだけ販売機会を絞るって普通は怖くてできません。しかしそれが希少性を担保し、ブランド価値を向上させる結果となっているのではないでしょうか。
③ソーシャル上でのコミュニケーション
デザイナーの松井さんからファンに対するリプや、hazamaの事をつぶやいた時の光速のファボ。ソーシャル上でのコミュニケーションをまめにこなしているからこそ、これだけソーシャルでの拡散力もあるのでしょう。デザイナーさん本人のTwitterが完全にCRMツールとしても機能しています。
④コミュニティ形成で顧客満足度アップ
展示会で友達ができる。という一文がまさにそうなのですが、hazamaのユーザー同士が展示会を通して、またソーシャルを通してコミュニティが形成されているのです。
実際、展示会場にお邪魔して感じた事ですが、初めて来店して勝手がわからない僕を見かけた他のお客さんが「松井さーん、お客さん来てますよー。」とお声がけしてくれる。そして、商品を一通り見終わっていると思われるお客さんが一向に帰る気配が無い。展示会場の中でも外でも、ユーザー間でコミュニケーションが取られていましたし、時には松井さん本人がそこに入ったり。会話の中で「hazamaオフ会しよう!」という言葉が出てきていた事から、ブランドを通して知り合った方々という事がわかります。とにかく展示会場の人数の多さや熱気がすごかったです。
コミュニティが形成されると、またそこに行く理由が出来る上に満足度も高くなります。そのコミュニティ形成の中心となっている人こそ、デザイナーの松井さん本人。普通にブランドがショップ運営やっていたらこういう場って中々作れないと思うんですが、まさか展示会をコミュニティ形成の場にしてしまうなんて。これ全て計算して作り上げたなら素晴らしい手腕ですね。
上記のように、顧客が商品をアップするとこれだけライクが付きます。松井さん本人がリツイートするとより伸びているようですが、そうじゃなくともライクがこれだけ付くのはhazamaを通して顧客同士が何か繋がりのようなものを感じているのではないかと思います。(僕も「hazama」とつぶやいただけで数人からライクをもらえます(笑))
デザインがソーシャル上で映えやすいというのも、拡散された要因の一つではあるでしょう。しかし、それだけでなくご本人の人柄や手腕によるところが非常に大きいと感じます。実際にお会いしてみると、めっちゃ腰が低くて本当にいい方でした。初めて来た方一人一人に本当に丁寧に接客されます。
何故こういったやり方をされているのか?と質問させてもらいましたが、ブランドをスタートした時から売れなければデザインを継続する事が難しいのはわかっていたので、売り方はしっかりと考えられていたとの事。
これ、当たり前のようで実はすごく難しい。売る事を疎かにしているからこそ、知名度が高くとも売上に苦戦しているブランドは山ほどあります。今の時代、デザイナーもビジネススキルが無ければ売上の拡大は難しいという事を痛感させられますね。「ソーシャルの活用」や「コミュニティ形成」という大手がやろうとしても中々できない手法をhazamaでは実現されているのです。これからブランドを立ち上げたい若い方々や、ソーシャルの活用方法がわからずに苦戦している大手アパレルはhazamaをベンチマークしてもいいのではないでしょうか。
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