情けねぇ


「俺、チョコレート苦手だから…バレンタインって少し困るイベントなんだよなぁ」


これは、まぎれもない事実である。

たぶん日本のデブの中で唯一、いや、世界中のファットボーイスリムの中で、僕だけが、チョコレートが好きではない。

「好きではない」。

「食べられない」わけではない。

なので、差し入れとかで個人的にいただいた物とかは食べているのでご安心くださいね。

熱心なアッパラーのみんなはご存知だろうが、僕はミルクチョコレートやホワイトチョコレートの類なら食べられる。

言い方はあれだが、いわゆる『安いチョコ』は食べられる。

昔から『良いチョコレート』が苦手で、「濃厚○○」みたいなふれこみの野郎は吐き気すらおぼえるし、いや、この吐き気ってのは本当に吐きそうになるやつで、

「カカオ○%」みたいなやつは絶対無理。カレーの隠し味に使ってなんとか成仏していただく。アメリカやアフリカで生まれたカカオが、インド料理で終わりを迎えるとは少し申し訳ない話だ。


で、

僕の周りの人は基本的に昔から僕のこの習性を知っているので、

過去の、お付き合いしていた人達や、周りの女友達も、基本的にはチョコレートをくれない。

チョコレート「を」、くれない。

例えば今の妻はバレンタインには毎年チョコレートを使っていないケーキを買ってきてくれるし、

いや、今の妻て。ゴリゴリの初婚ですが。

中には、周りの人には手作りのチョコレートを配っているのに、わざわざチョコレートが苦手な僕のために手作りのミートパイを別で作って持ってきてくれたありがたい子もいた。

女友達からもらったのが一番多かったのは、義理うまい棒かなぁ。

値段もこちらもそこまで気を使わないからありがたい。

まぁホワイトデーで使う金額が割に合わなさすぎでしたが。

あとは、チョコレートが苦手であることに反して、ポテトチップスはアホほど好きなので、

義理プリングルスも多かった気がする。

昔、

「はい、義理ングルス!」

という言葉とともに渡されたことがあって、「うーわ、おもんな」と思って本人の前では上手く苦笑いしていたが、

よくよく考えたらここにきて一周してちょっと面白いんじゃないかと思えてきて、

先日掛け布団の中でクスッとしてしまい、わざわざこんなところに書き記す程のポジションまで長友ばりのオーバーラップを見せたわけだ。


で、

よくあるのが、

「天晴さん(もしくは本名の猪俣さん)はチョコレート苦手ですもんね!」

という理由で、チョコをもらえないパターン。

別にチョコレートや、それに代わるものをもらえないこと自体はかまわないのだが、

なんだか最近、にしてももらえる個数が少なくなり、

今年、おそらく十数年ぶりに、今の妻からのケーキ1個でフィニッシュを迎えた。

いや今の妻て。ゴリゴリの初婚ですが。


言っても、母親含めて2個の時代が多かったですが。

……あれ?

僕、役者としてはあれですが、一般人としてはそこそこ人気者だと思ってましたけど?

そもそも、結婚したら安心感がにじみ出てきて男はモテ出すって聞いてますけど?


そこで、僕の中の岡田あーみん先生が目を覚ます。

「天晴さんは心配性」、再販決定。


もしかしたら俺、

チョコレート人望のない、悲しきおじさんモンスターだと思われてないかなと。

「あの人、実は『チョコレートが苦手』なんじゃなくて、『チョコレート貰えない自分を慰める為の言い訳』として、『チョコレート食べられないんだよね〜』って言ってるんじゃない(笑)?」

と、職場の女の子達は陰でコソコソ笑ってるんじゃないか。

職場の全体LINEの他に、女性陣が僕をあざけ笑うためのLINEグループがあるんじゃないか。

僕の職場を盛り上げるために話すギャグに、採点をつけてほくそ笑んでるんじゃなかろうか。

「義理ングルス」がおもしろいと思えてしまっている今の僕には、それはあまりにも不利すぎる。

不利ングルスである。

そういえば『ミートパイ』て。「こいつには肉と炭水化物あげときゃいいだろ」って思われてたんだろうか。


まぁわーわー言ってますけど、

「『人に物を渡す』ということがコロナの影響もあって今は必要ないんじゃないか」

という世の中になっていて、

「今年ほチョコレート自体の全体の売り上げも落ちているようです」

という記事を見た時、だいぶ安心してしまいました。

情けねぇ。



ちなみに僕はかねてから、

「バレンタイン交代制」を導入してほしいと思っている。


女性の中には、「なんで私達がチョコレートを配らなきゃいけないのさ」と思う人がいるかもしれませんが、

僕は、ちょっとだけそのシステムがうらやましい。


人前に出る仕事をしている身でありながら、僕は根は恥ずかしがり屋さんであり、「告白」というものをそこまでして来なかった。

でも恋は、人並みにしていたと思う。

好きな人と付き合いたいと思ったり、
あんなことやこんなことしたいなぁと思ったり、

でも、「告白をする」って、なんだかすごくハードルの高い話だった。

血圧の高い家系だからだろうか。

ドキドキすると死がよぎるのかもしれない。


だから、「バレンタイン」という、『イベント』として、好きな人に気持ちを伝えやすいものが女性にあることが少しうらやましかった。


たぶん、そんな僕みたいな男性もいると思うので、

2021年のバレンタインは、女性が男性にチョコレートをあげる年、

2022年のバレンタインは、男性が女性にチョコレートをあげる年、

2023年のバレンタインは、女性が男性にチョコレートを、

2024年には男性が女性にチョコレートを…

と、年ごとに交互にしてくれないかなと思うわけですよ。

男性にも、告白するチャンスをくれと。

公的に思いを伝えやすい日が欲しいんだゾ!と。


まぁ、こんな端っこで売れずに役者やってるやつの発信力じゃ、そんな大々的なイベントの内容ひっくり返すのなんて到底無理でしょうね。

無理ングルスでしょうね。


情けねぇ/とんねるず

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