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3日でアニメーションを作ったよ。作業したこと振り返りまとめ。SpineとUnityはすごいんだ!! って話。

アニメーションを1つ作りました。Spineでキャラクター素材・モーションを作り、それをUnity上で組み立て再生してグリーンバック素材を作り、After Effects上で合成し、最終編集をPremiere Proで行いました。

今回の制作でほとんどの工数を割くことになったSpineについて主に書いていこうと思います。

※音が出ます。お気をつけて。

構成自体はサカナクションの「新宝島」そのままで、登場しているキャラクターは「月ノ美兎」という方の動画配信関係で出てくる「謎ノ美兎」という名前で認知されているシュールなキャラクターです。

だからこの動画の構成自体に私自身のオリジナリティはそんなにありませんし特に言及することもありません。「謎ノ美兎が新宝島踊ってるの見たいなあ」という思いつきで作った以上も以下もありません。

元ネタの新宝島。

元動画をとりあえず見る。必要なモーションと工数を考え、耐えられるキャラクターモデルを構築する。

新宝島は踊りが控えめだし、どこかシュールでレトロな雰囲気が癖になります。少なくともキャラクターモーションに関してはそこまで難易度は高くなさそうです。

使用するキャラクター構成ツールはSpineです。元々ゲームキャラクターのアニメーション用に作られたツールですが、今回の私の目的には非常に親和性が高いので採用となりました。

シンプルで軽量なエディター、モーションの取り回し、スキン機能などなど、1つの素材を取り回すことに特化しているというのが私的な理解です。

「謎ノ美兎」自体は以前作ってました。急ごしらえで作ってたのの細部を修正、極端なモーションでもある程度耐えられるように、また、様々な動きを簡単にできるようにコントローラボーンなどを前もって考えておきます。

今回はいうなればモーショントレスで、要求されるモーションが把握できてますからね。

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モーションに必要なボーン各種がすぐクリックできるように、場合によっては体外に配置してそこからコントロールすることもあります。手足のような直感的なものはそのままそこを動かします。

あとはモーションを組むだけです。参考動画を元に、地道にやっていきます。

モーションを細かく分け、部位毎に作り込んでいく

一気に長尺のモーションを作るのではなく、細かく分けます。ダンスは特に、同じ動きを繰り返し組み合わせますのでそこを見極めます。

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これは1秒のモーションですが、実際の動画では1分近く使っていると思います。スゴイことだと思いませんか? 私がスゴイって話ではなく、実際の動画では1分近く使われるモーションを1秒の素材として作れちゃうというのがスゴイっていう話です。単純効率計算60倍じゃないっすか。めっちゃすげえ!! これを実際の尺に組み立てるのはUnity上で行います。

あとは個人的な話かもしれませんが、やりやすいモーションの作り方として、体の中心からモーションを組んでいくのが良い感じでした。

リファレンス動画を見ながら腰の全体的なモーションを荒く作る→足のステップ→手の振り→全体ができあがったところで違和感がなくなるようにブラッシュアップ。の手順です。

腰の位置が決まらないと全体的な重心移動がわからなくて結局手足がずれちゃうし、全体を一気に作っちゃうと最終的に違和感が大きくなったときに修正するのがとても大変だと感じ上記のフローに落ち着きました。

部位モーションを分けてバリエーションを出す。

新宝島で地味に大変なのは、チアリーダーの多彩なモーションです。私自身のモチベーションとリリース速度を考えて、ある程度数を絞ることにしました。

Spineの強力な所はモーションをミックスできるところです。これをフルに使い、数パターンしかない踊りのモーションにもっと幅を持たせることにしました。

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上半身のモーションと、

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下半身のモーションで分けます。これらをミックスすることで、無数の踊りのモーションを構築することができます。

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全てのモーションで上半身も下半身もモーションを作っていると、工数が2倍どころではありません。上半身Aのパターンでスキップすることもあるだろうし、足を動かさないこともまたあるかもしれません。別の機会に使えるモーションもまたあるかもしれません。それらは全て資産で、そういう資産の使い回しができるのがSpineの大きな魅力だと私は思います。

このチアのモーションも細かく分けられていて、1つのダンスとして構築するときに2つのパート分けを行い、それぞれのグループがそれぞれのダンスをするようにもしています。

モーションを小分けにすることによって、実質的には2倍にも3倍にも素材を増やし工数を削減でき、さらにはパートを分けて別モーションを作ることもできるのです。うひゃあ。すっげぇぜSpine! 楽しい!!

縮小と色変更で立体感を強める

Spineは基本的に2Dアニメーションツールなので3D的なモーションにコツがいるのですが、今回はシンプルに手先の大きさを変更し、色を変更することで立体感を出してみました。

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手先を細く、色を黒に変化させることで、奥に行ってる感を演出しています。実際の映像ではキャラクターは小さく表示されますので、そこまで違和感はないと判断しました。

スキン機能でモーションを使い回す

サカナクションは複数人のグループなので、もちろんキャラクターもその数必要です。その時全員一緒の見た目はちょっと味気ない。モーションがほぼほぼ一緒なのは仕方がないとして見た目はちょっとどうにかしたいな・・・って事でスキン機能です。

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手や髪、サングラスなどのアイテムをスキン機能で実装し、それらを組み合わせて同じモーションができるようにしました。

これもモーションと同じで、スキンとして手だけ、サングラスだけ、楽器だけ、とそれぞれ別々のスキンとして実装しています。実際にくみ上げるのはUnity上。こうすることでピンポイントでそこだけ変える、ということができるようになります。今回はバリエーションが絞られますが、やろうと思えばアニメキャラクターにこの踊りをさせることもまた可能だし、先ほどのチアリーディングの男性とダンスを共有する、ということもそれを念頭に置いた設計をすれば可能になります。

Spineってスゴイ!!

揺れものは全部Unityにおまかせ

髪、ボンボンなど、所謂ゆれものは全てUnity上での物理演算にお任せしました。全てのモーションに対して揺れモーションを打っているとそれだけで制作日数が伸びるのは目に見えています。この点は妥協です。

どこに注力しどこで手を抜くのか、スピード感がある制作ではこれが一番大切だと個人的に思います。

ちょっと話が変わって個人的な話になりますが、例えば制作日数が目算1ヶ月かかる作業があったとして、それのために1ヶ月まるまる使うことってほぼ無いと思うんですよ。他の作業が入ったり、トラブルに巻き込まれたり、新しい技術や表現を見つけちゃったり。結局のリリースは二ヶ月後とか三ヶ月後とかになる(個人の感想です)。これが目算3日とかになると、スケジューリングも簡単だし、モチベーションも維持したまま3日でそのままリリースできる事って多いと思うんです。

別に時間をかけるのが悪いとかじゃなくて、今回はスピード感を大切にして、それを優先した結果揺れものは物理演算に任せたり、ダンスモーションの一部を削除するという判断をした、という「選択」が大切なんじゃないのかなっていう話です。

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ボンボンとして形が崩れたりしているけれど、アニメーションとしての単調さに良いアクセントを加えてくれていると思います。

Unityは最高のアニメーション編集ツールだぞ!!

Unityはゲームエンジン? プラットフォーム? エディター?です。ゲームを作るツールとなっていますから、勿論ゲームを作ることに特化しています。

ただ、私にとって重要なことは、UnityはSpineに対応しており、大量の拡張機能が公式やユーザーから提供されており、先人たちの残していった資料が多くあり、何より無料だということ。

そして、昨今のゲームはムービーシーンがスゴイです。「映画みたいなゲーム」なんてもう当たり前の時代です。そんなゲームを作れるエディターが映像を作れないわけがありません。実際映像関係でも扱われている事は少なくないみたいです。

また、Unityにはムービーシーンを作る機能「タイムライン」が用意されていて、これを使用することで直感的にアニメーションが構築できるのです。根本的な設計思想が映像編集ツールとは違いますから、癖を感じますが、それも慣れかなって思いました。

このタイムライン機能が非常に強力で、特に指示していなくてもクリップとして配置するだけで歩き→走りとシームレスに移行してくれたりするのです!!

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また、Unityはエディタ自体を自分で拡張し、使いやすく改造していくこともできるみたいです。「不満点があるの? じゃあ自分でどうにかすりゃいいじゃん」という感じ。ワクワクしますね。知識はまだ乏しいですがいつか手を出してみたいです。

基本的には手打ちで確認しながらきっかりモーションを組み併せて1つのダンスとして今回はくみ上げましたが、例えば曲のBPMや盛り上がりを計測しつつ、自動でモーションを組み合わせて踊ってくれるチア、というのもやろうと思えばできなくはありません。アイデア次第での無限の可能性を感じずにはいられませんね。

ボタン操作にして曲を流しながら音ゲーみたいにモーションを組むとかも? できなくはないですねぇ!!!

今回はこのタイムライン機能を使い、新宝島のモーションを確認しながらそれぞれのダンスアニメーションを構築してGB素材として保存。最終的にはAfter Effects上で最終構成を行うワークフローでした!

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最終的な映像、例えば暗転したりそれぞれのキャラクターが動いたりといったものはAfter Effects上で行っています。これについては、After Effectsが優れているというよりも、私にUnity経験値が少なく、それよりも多くの経験値や知識や所有プラグインがAfter Effectsの方が多かったからというのが大きな要因です。

Spineゲームオブジェクトの軽さ、Unityによる3D空間を使ってのモーションには可能性を感じていますので、理想的な構成としてはそれぞれのキャラクターの動きまでUnity上でやってしまって、エフェクトなどの画面効果はAfter Effectsが良いのかなあって今は思っています。

感想とまとめ

今回は1日目でキャラクターモデルの再調整とモーション作成。2日目でスキン機能の把握とUnity上での操作やダンスモーションの構成。3日目でAfter Effects上とPremiere Proでの最終的な編集という流れで作業をしました。

1つのビデオをまるまる1つ作って思ったのは、手をつける段階でどれだけのモーションが必要なのかを予測する事と、今の自分が手をつけて完成までいけるのかどうか下調べをすることかなと思いました。

また、行き詰まったとき、トラブルがあった時、最中にもっと良い方法や、やりたい事が見つかった時にどれだけ早く判断して舵を切るのかも大切だなあと感じます。

今回だとSpineはどこまでいっても2Dアニメーションソフトなので極端な横向きができないので、カット割を少し工夫したり、アニメーションを奇抜な方向に変更してごまかしたり、みたいなことをしています。

見た目の差異についても、一人はあえてずっと動かさないとか、楽器を持たせないとかとか・・・。最初の計画にはなくても、最終的な完成度と納期に対してどこまでパワーをかけていくのか判断し続けるのは重要かもしれないなあ。とか。

まあ、そんな感じです!


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