世界自殺者数

自殺について

私は自殺について何も知らないので、以下、少し調べました。
警視庁のWebサイト に載っている昨年(2018年)の日本の自殺者数は、20,598人で、内、男性が14,125人、女性が6,473人でした。
男性は女性の倍以上です。統計が載っている1978年以降、過去40年間ずっと男性が上回っています。

職業は無職、原因は健康問題、年齢は50台が一番多いです。

この統計からは、自殺者は社会のしんどい部分を背負っているという想像をかきたてます。

例えば、自殺者の職業別グラフ2016年の無職者は、12,874人でした。2016年の全体数は、21,897人なので、自殺者の58%は無職者だということになります。
無職ということが自殺の原因になるなんて異常だと思いますが、社会的な圧力を考えると納得です。

他の国はどうなのかしらと、ドイツを見てみました。
ドイツ連邦統計局 のホームページによると、2016年の自殺者数は、9838人。内、男性75 %、 女性25 %でした。

ドレスデン工科大学医学部精神科医Werner Felber先生の「自殺に関する統計ードイツと東ヨーロッパにおける統計学的・疫学的データとコメントー」(Deutsche Gesellschaft für Suizidprävention)によると、自殺傾向の原因構造には、3つに大きく分けられるようです。


1.基本の自殺傾向
内面的要因;相対的に長期にわたる、医学的な影響が可能:
・精神的な病気(中毒を含む)
・加齢
・性別によるもの
= 「遺伝的な可能性」

2.個人的自殺傾向
混合的要因;短期的に変化の可能性がある、医学的な影響が条件付きで可能:
・生存危機の経験
・身体的な病気
・性格、キャラクター(障害)
・ヴェルタ―影響(模倣自殺)
= 「反応的な可能性」

3.付帯現象的自殺傾向
外的要因;相対的に長期にわたる、医学的な影響が不可能:
・社会的構造
・宗教的伝統
・自殺手段へのアクセスが可能である
= 「伝統的な可能性」

下の図は、そこにあげられているドイツの1990年からの自殺者数データです。

この図に対するWerner博士のコメント:
ー それぞれ(男性、女性、総数)の自殺率を自殺者数としてあげている(自殺者数/100.000人/1年)。
ー 男性の自殺者は女性より常に多い。
- 戦争時(1914-1918、1939-1945)は男性の自殺率が下がっている。
- 1920年代終わりと1930年度に男性の自殺率は高くなっている。
- 女性の自殺率は、1970年代以来下がっている、男性が1980年代半ばから上がっているのに対して。
- 現代は100年前以来自殺率が最も低い。

Werner博士のコメント:
ー 左の基準(青)=自殺者数、右の基準(緑)=失業者数
- 1920年代終わりと1930年代の男性の自殺者数は高い。
- それは高い失業者の数と並行推移している。
- 当時は社会的な(経済的な)保障はほぼなかった。
- 80年代から失業者の数は自殺者の数に影響していない
- 明らかにこれは社会的(経済的な)保障に帰因する。 


現在ドイツでは、失業者に対する社会(経済的)保障、家賃・水道光熱費などと食費、人間らしい生活ができる最低限のお金が無期限で支給されます。

戦争時に男性の自殺率が大幅に下がることも面白い結果です。戦争によって、男性は自分の存在意義を感じたのだろうと思います。

他の国はどうかなと、WHOのホームページの、2015年度自殺率データをもとに、グラフを作成しました。左から自殺率が高い順です。

日本は183カ国中14位、お隣の国、韓国は4位でした。
韓国人の友人から、いい大学に入るため、夜22時まで学校で勉強することや、サラリーマンの飲み会が大変だという話を聞いたことがあります。日本も進学や就職、給料、美しさや若さ、子供の進学先などが上手くいっていることが良いことだという社会的価値観があります。無職の人は無価値かのような気にもなります。Werner博士のいう、外的要因、社会的構造にあたるところは、日本も韓国も強いのかなと思います。

自殺の要因は多岐にわたって絡み合っていて、単純には言えませんが、同じ状況でも、日本では自殺しても、ドイツだったらしなかった、ということもあるでしょう。ちなみにドイツは37位でした。183か国中37位なので、そんなに良いわけではないですが。

WHOの自殺予防の為のパンフレット(日本語版)によると、「自殺の危険から人々を守るもの」の一つとして、強い個人の人間関係をあげています。


自殺関連行動の危険は、人間関係の葛藤、喪失または不和で苦 しむ場合に高まる。逆に健康的で親密な人間関係を育み、維持 することは、個人のレジリエンスを高め、自殺の危険に対する保 護因子として作用する。個人の最も近い社会圏(social circle) (パートナー、家族、仲間、友人、そして重要な他者)は、危機の際 に、最もインパクトをもち、支えとなる。友人や家族は、社会的、 情緒的、そして経済的支援の重要な資源となり、外部ストレッサー からの影響を和らげることができる。特に、こうした支えにより強 化されるレジリエンスは、幼少期のトラウマと関連している自殺の 危険を軽減する。依存的な思春期の若者や高齢者にとっ て、人間関係はとりわけ保護的となる。

下のグラフは反対に、183カ国中、右から自殺率が最も低い国です。

自殺を認めている国についてもみてみました。

ホームページLebensschutz in Rheinland-Pfalz(直訳:ラインラント=プファルツ州の命の保護)に、ヨーロッパの自殺幇助の法律一覧があげられています(2015年11月時点)。

ベルギー、ルクセンブルク、オランダ以外は積極的な死(自殺)幇助は犯罪となっています。積極的な死(自殺)幇助とは、本人の要望のもと、薬を飲ませたり、体内に薬をいれたりして、安楽死させることを意味します。

これに対して、スイス、スェーデン、ドイツでは、自分で薬を飲む、自分で体内に入れるなど、本人の力で自殺をする自殺幇助のみ、条件付きで合法となっています。その為、薬を飲む体力が残っていない場合は安楽死ができません。


一番右「消極的な死(自殺)幇助(延命治療をしない)」は、延命治療をしなければ死ぬ人を、死なせるということです。例えば酸素マスクの酸素を切るなど。上の表によると、ほとんどが合法か、これにあたる表記がない、となっています。違法としているのは、ポーランドのみです。

他に、Berliner Morgenpost(2015.10)によると、アメリカでは、6州(カリフォルニア州、オレゴン州、ワシントン州、モンタナ州、ニューメキシコ州、バーモント州)が自殺幇助を認めているそうです。

日本では、自殺幇助は犯罪とみなされるようです。


刑法第202条
人を教唆し若しくは幇助して自殺させ、又は人をその嘱託を受け若しくはその承諾を得て殺した者は、6月以上7年以下の懲役又は禁錮に処する。


延命治療をやめることはこの範囲ではないと思いますので、上の表でいくと、日本の場合は、左二つは違法、一番右は合法でしょうか?右から2番目は、例えば強すぎる麻薬など劇薬となるものを、苦しみを緩和するという目的から処方し、その結果死を早めるというものです。これも日本では違法ではない気がするのですが、どうでしょう?

いろいろ見て、なんとなく知識は増えましたが、意見を言うにはまだまだ全然足りずまとまりません。ひとまず終わります。

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