グラフィックレコーディングの事前準備チェックリスト #グラレコ研究
今回の内容はグラレコを行っているときに瞬時に判断していることや、グラレコの事前準備で確認しておくべきことをを明文化したものである。
明文化の背景
私がグラレコを始めた当初、教科書と呼ばれるものは清水淳子さんのGraphic Recordingの教科書のみであった。グラレコ以外のグラフィックファシリテーション、ファシリテーショングラフィック、ヴィジュアルコミュニケーションなど、似た概念の言葉はあったものの、それらは成果物を議論の内容で、絵と文字で表現された一枚絵を成果物としているのはグラレコだけであった。現状、グラフィックレポートなどまた新たな概念も生まれている。今回は、議論や対話など音声言語が扱われている場における、リアルタイムの可視化を行う際に、実践者の頭の中ではどんなことがおこなわれているのかを明文化した。明文化する必要性としては、教科書やその手法がまとめてあるものの、グラレコを実践するときの難しさはまだあるためだ。(2017,清水)明文化された内容を事前準備としてシュミレーションできるようになれば、グラレコに難しさを感じている実践者がより良い実践ができるようになるのではないか。
グラレコ実践に難しさのある原因
グラレコができる人は、なぜできるのかと実践したい人に聞くと「センスがあるから」と答える人が多い。また、100以上の場で実践をしている人にやり方を聞くと「なんとなくできるようになった」「グラレコのやり方は属人的で言葉にできない」と答える人がいた。では、センスとは何かを考えてみる。「センスは運動能力など身体的なものと、ファッションや生き方のように知識として自分で蓄積してきたものの二つにわけられると思います。後者に関しては、これまでの経験から培われるもので先天的な才能ではないと考えています。(水野)」今回のグラレコのためのスキルは後天的なものだと考えている。先の清水さんの研究で、視覚言語を習得するとグラレコができるようになったというデータがあるためだ。では、何が難しいのかと言われると仮説だが、事前準備がうまくできていないことが原因だと考える。
グラレコができる人は、なぜできるのか
イメージ的に、グラフィックレコーダーは現場に行くとなんでもすぐにかけてしまうと思っているかもしれないが、グラレコ実践者としてそれは誤ったイメージであると言える。グラレコを描く際には事前にわかっていることを全て明らかにし、追加で得られる情報もできるだけ明らかにするように努め、事前にトライできることにはトライしておいた状態で臨んでいる。実践の経験が増えれば増えるほど、その引き出しが増え、結果的にその場に行ってすぐにグラレコできる実践者になる可能性があるものの、事前に用意せずなんの経験もなく実践することはかなり難易度が高い。
では実際に、事前にわかっていることを明らかにする、というのは何を明らかにしたら良いのか。追加で得られる情報をできるだけ明らかにするにはどうすればいいのか、事前にトライできることとは何か。これらについて、明らかにしていく。そのためにグラレコが実施される場が生まれる前にどんなことが決められ、どんな流れで実際に行われるようになるのか、私が参加して中での主な流れを以下に示す。
グラレコが行われる前に決定されていることが以下の4つだ。
グラレコする場面が決定する。自ら決定する場合と、依頼されて決まる場合がある。どんな場でグラレコをするのか決定する。それが決まったら、2の目的の決定へ進むが、先に目的の決定があった後に、グラレコする場面が決まることもある。
グラレコの目的を決める。
アウトプットイメージを決める。
4.グラレコイメージを仮決めする。
グラレコを誰かから依頼される場合はそれぞれのプロセス、特に目的の確認と、アウトプットイメージのすり合わせを先方と行う。自身が自らグラレコを行う際にも、以上の4点を事前に理解している場合と、していない場合では当日の実際にグラレコを描く時間の余裕と、アウトプットの完成度が違う。
1. グラレコする場面の決定方法
グラレコする場面ので確認すべきこと
時間
- 何分間の発表か
- 何回行われるのか
- いつまでに仕上げてほしいか
- 終了と同時
- 終了後でもOK内容
- どんな内容を誰に向けて話すのか
- 実際にグラレコしてほしいのはどの部分か
- 事前に話す内容は決まっているか
- スライドを事前にもらうことができるかスピーカーの人数
- 何人が、何グループになって話すのか
- 同時に話すのかその場の話・議論の行われ方
- 講演形式
-会議
-1on1
-コーチング
- パネルディスカッション
- グループワーク
- ワールドカフェ形式
- 哲学対話など
それ以外どの形式か
を確認する。
目的を先に決定する場合もある。
2. グラレコの目的を確認する
目的を決定してから、話・議論の行われ方が決定する場合もある。
グラレコを行う目的を確認する際のチェック項目
話・議論の場自体がある経緯
- なぜこの場があるのか
- いつから始まったのか
- どれくらい続いているのか
- 何回目なのか話・議論の場の目的
- 運営側(依頼者)が達成したいことは何か場に参加する人の目的
- 参加側の目的は何か
- 参加者は何を期待してこの場に来るのか参加者の状態
- 参加経験
-何回参加したことがあるのか
- 参加者の属性
- テンション・雰囲気グラレコが導入される経緯
- なぜグラレコが必要だと思ったのか
- どこでグラレコを知ったのか
- 導入経験はあるかグラレコに期待すること
- グラレコをどのように活用したいか
- リアルタイムで見えるようにするか
- グラレコで場にどんな影響があると考えているか
3. アウトプットイメージを決める。
成果物は何か?
- 出来上がったグラレコはどんなイメージか
- 紙 or デジタル or タイムラプス動画
- 一枚に収まっているか複数枚かアップロードしたい媒体は何か
- SNS
-それぞれのSNSごとに用意する画像のサイズが変わる
- Webページ
-サイズ
-画像形式
-jpeg,png,PDF
- 紙媒体
-デジタルなら色はRGBではなくCMYK色使い
- どの色を使うか
- 団体のカラー
- ロゴのカラー
- トーン&マナー絵のタッチ・雰囲気
- ポップ
- クール
- 畏まった言語
-日本語
-英語
4.グラレコイメージを仮決めする。
目的と内容を照らしてパターンからレイアウトを決める
登壇者の似顔絵
- 顔写真を検索
- 喜怒哀楽を表現してみる団体ロゴやモチーフ
- ダウンロード
- トレースしておくよく使いそうなアイコン
- 詳細に描く
- デフォルメしてかく
- 保存しておく似顔絵、タイトル、ロゴ、日付など事前に配置できるものの配置を決める
#グラレコ本番を迎える
事前準備を行わなければ、当日にこれだけのことを考えながら処理し、それと同時に聴き、描くことになる。あらかじめ聞いておいて、わかることは整理しておく。そうすることで処理速度が上がる。
実践している最中にできることを増やすよりも、実践しているときに考えなくてもいいことを増やす。
参考文献
グラフィックレコーディング習得のために必要な視覚文法,清水淳子,2017,
川部大輔,2022,グラフィックデザイン分野における外来語 「センス」の意味についてhttps://hokusei.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=2581&item_no=1&page_id=13&block_id=21
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事前練習に関してはこちらの記事がとてもわかりやすかったです!
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