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【小説オプチャ・ガチャコン結果発表】

 どうも、Apisです。今回のエントリーは私が所属する「小説家になりたい」というLINEオープンチャットの活動報告の記事になります。

 オプチャの参加者じゃない方も、是非読んで下されば幸いです。

 さてさて、今回オプチャ内の企画でApisが企画の主催をさせていただきました。その企画は、ずばり

運も実力!?数字でお題を引き当てろ!
ショート小説コンテスト!!


 通称・「ガチャコン」です。参加者は数字を選んで、ランダムに出てくる画像が小説のお題になるというコンテストでした。用意した4000近いものの画像から紡がれた作品はどれも良質かつ面白かったです。

 今回は、コンテストで投票数が多かった上位3作品をご紹介させていただきます。

最優秀賞『サヨリの腹』 作:いらいち@藤也

竜造寺さんのお題画像はこちら! 85-192 (1)


「あ、所長、サヨリって何ですか?」

 事務所兼自宅の古びた一軒家、そこで調査会社を経営している俺は、唯一の従業員である助手の声に、あくびを噛み殺しながら答えた。

「サヨリ? 魚だけど、どうした?」
「今日依頼人に言われたんすよ、君はサヨリみたいな腹をしているねって」

 思わず吹き出しそうになるのをこらえた。
 これは、実際に見てみるのが早いだろう。ちょうど旬の時期だ。

「じゃあ、明日は朝ごはん一緒に食べるか。泊まっていくといい」

 不思議そうな顔で頷く助手に、こういうところは素直なんだけどなと思いながら、明日のスケジュールを組み立てていた。


 翌日の朝、俺は助手を叩き起こした。朝食ができたのだ。
 目が半分以上開いてない助手の首元に氷を当ててやると、助手は飛び起きて俺の肩をぶん殴った。

「おい! 仮にも上司!」
「寝起きの人間の首に氷当てる奴を上司なんて呼ばねぇ! うわ、なんだこの氷生臭い!」
「うるさい! 朝食運ぶのくらい手伝え!」

 そう言うと、助手はまだ騒ぎながらも着いてくる。台所にはもうすでに焼き魚の香ばしい香りが充満している。

 目が覚めて、腹が減ってきたのか大人しくなった助手は、俺がグリルから焼き魚を取り出すのを見て、炊飯器の前に立ちご飯をよそい始めた。

「これがサヨリっすか。うまそう。どうしたんですか、これ」
「さっき朝市行って買ってきた」
「え? まじで? なんで?」
「お前がサヨリみたいな腹とか言われてくるからだろ」

 食卓に並べて、手を合わせる。簡単に挨拶をすませると助手はいそいそと箸を持つ。

「サヨリの腹ってここですか。シュッとしてますけど、スマートって言われたんですかね?」
「ちげーよ、ほら、腹割ってみろ」

 俺がそう言いながらサヨリに箸をつける、助手もそれを見て腹に箸を入れた。

「あ、黒い」
「だろ? サヨリは内臓をとっても腹の中が真っ黒なんだ」

 だから、腹黒い人間のことをサヨリの腹って言うんだよ。
 そう続けると、助手は安心したように笑った。

「なんだ! じゃあ俺の返答は合ってたんだ」
「なんて答えたんだ?」

 訊ねると、助手は笑顔をさらに濃くする。

「所長には負けますって!」

 こいつは本当に、サヨリの腹のようなやつだ。

(了)

作者コメント:生魚の写真をこんなに真剣に見たのははじめての経験でした。ランダムに選ばれた写真一枚から話広げるのはとても楽しかったです!
読者コメント:サヨリというお題を見事に使ったオチ。それでいて、すっきりとしているのに読み応えがある作品だった。助手の憎めないキャラクターもよく表現されており、所長と助手の関係性も相まって微笑ましい読後感がある。

作者Twitter:いらいち@藤也
代表作紹介:
 「辻本ミサトの失恋標本~妹は恋愛ドラマの主役の素質があるらしいので姉の私は妹を主人公に小説を書くことにした~」

【あらすじ】
辻本ミサトは小説家である。ミサトの妹、メグミは類まれなる美人、合わせて人から愛される性格だった。まるで恋愛ドラマの主人公にでもなれそうなメグミ。しかし、当の本人は恋愛をする気がまったくないようだ。ミサトは、メグミの周りに巻き起こる恋を題材にした恋愛小説を書いていた。そんななか、また妹の色香にあてられた男がいるようで──


優秀賞『白』 作:竜造寺

竜造寺さんのお題画像はこちら! 85-192 (6)

「何この写真」
 少女はそう言って1枚の写真を机に置いた。少年はそれを見て、「あ〜」とだけ返す。
「あ〜、って。いやなにこれ」
「レッツクイズ!」
 何事かと周りにいた友人たちもその写真を覗き見に来る。そして来る人は決まってこう言った。「なにこれ」
 そりゃそうだ。なんせほぼ白一色。僅かに陰影が見えるものの、その程度でしかない。
 少女はうーん、と唸りながら「砂浜?」と言った。友人たちも首を傾げつつ、「砂漠?」と言った。少年は笑いながら、惜しいけど残念、と言う。
「砂糖?」「ざらめ!」「塩っ!」「ただの砂!」「砂っぽいざらめ!」「なんか細かい砂!」
 だんだん適当になっていく友人たちを見ながら、少年は大声を上げて笑った。とても、久し振りに笑ったような気がしていた。
「まぁ、砂っちゃ砂なんだけどさ。これ、鳴き砂なんだ。僕が鳴く音聴きたいって言ったら、先生がでっかい袋に山のように詰めて持ってきてくれてさ」
 皆は、少年の言葉を静かに聞いてくれていた。
「凄いんだ。両手で撫でるだけで音が鳴るんだ。砂を両手で揉むと、イルカみたいな声で笑うんだ。きゅきゅきゅって。まさか自分で出来るなんて思わなかったからさ。嬉しくて、嬉しくて。その時撮った写真なんだ」
少年はその写真を嬉しそうに眺める。
「僕は白が嫌いだったんだ。でもこの鳴き砂のおかげで、好きになれたんだ」
 真っ白な病室。
 沢山の管に繋がれた少年は、満面の笑みで笑う。

(了)

作者コメント:画像見た瞬間思いっきり笑ったけど、すぐに結末まで想像できたからラッキーだったなぁと。
読者コメント:謎すぎるお題画像から、ここまでの物語を発想できたのがすごい。ショートショートとしても切なさが残る良い話になっている。ショートショートの場合、読後感・余韻を残せるかはとても重要。お題画像をしっかりと生かした、今回のコンテストのお手本のような作品だった。

作者Twitter:竜造寺@最近はポタオデ好き


優秀賞『羽化』 作:カエ

竜造寺さんのお題画像はこちら! 85-192 (30)


 明日誕生日だったことを思い出して、コンビニで酒を買って帰路に着く。一人きりのワンルームで過ごす誕生日は、これがはじめてだ。

 2001年、ノストラダムスの予言の後に生まれたぼくは、陰謀論とか言われてもあまりよくわからなかった。ぼくがアニメの主人公なら、きっとエヴァにも乗れたけど、この世界線ではいじめられていた友達のことすら守れなかった。

 あいつ、元気にしてるかな。そう思っても、気軽に会うことはできない。未曾有のウイルスの脅威にもすっかり慣れてしまったけれど、今日もタイムラインには陰謀論が流れてきて、正直うんざりしていた。

 あと少しで、十代最後の夜が終わる。

 ウイルスが蔓延した世界の片隅の、無菌室みたいな小さなワンルームで、ぼくは布団にくるまり、蛹のように眠っている。

 明日にはもう、羽化しているだろう。

(了)

作者コメント:正直マジかい!?と思いながら勢いで書いたらめちゃくちゃ手癖が出てしまいました。
読者コメント:他の作品とは一味違うモノローグ形式の作品。少ない文字数で独特の雰囲気を作ることに成功している。2001からノストラダムスの予言に繋げ、そして現代の問題へと。「羽化」が何を意味するのかは読者に委ねられているが、その一行が読者の胸に針を刺し、作品の印象を深くしている。

作者Twitter:カエ
代表作:「祈りにてただ光待つ」

【あらすじ】
掴めない光を掴もうとしている私は、今日も何かを待っている。これは、私の希望にも似たひとつの祈り……。晴香は「ある事情」で田舎を出て一年が経つ。そんななか、偶然にも幼馴染の克哉と出会ってしまい──


 以上、コンテストの優秀作品・作者の紹介をさせていただきました。今回ご紹介できなかった良作もあり、こちらに書けないのが残念なくらいです。

 なお、所属しているオープンチャットではこのような自主コンテストを定期的に開催しています。参加などは強制ではなく、普段はゆるーく雑談などをしています。匿名でも参加できるので、もし興味がある方がいたら気軽に参加してくださいね。

6/6 100名までの定員が200名にあがったそうです。


 コンテストに協力いただいたオープンチャットの皆様、参加・投稿して下さった方々、投票してくれた方々、本当にありがとうございました!!

 次回コンテストは大臣さん主催の「変則型タイトルコン」です。

 Apisは文芸部門で参加予定です。

 それではまた次の記事でお会いしましょう('ω')



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