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自分の名前を忘れていた

鏡は毎日見てるし、Amazonは頻繁に使うから自分の名前を見る機会もある。それなのに今、自分が自分を認識していないのに気が付いた。毎日鏡で見るが、もうそれを自分だと思ってもいなかったようだ。

その事に気づいたのは、アニメの「ゆるキャン2期」の中で、主役の一人がバイト先を探しているシーンを見た時だった。
私は学生時代にバイトをした事がなかった。この山梨を舞台にしたアニメで、その主役の子は自分の町にバイト募集が少ないと嘆いていたが、私の町はそんなレベルでないほど求人がなかった。昭和で止まったままの、もう人のいない町だった。
その子がついにバイトを見つけたシーンを見た時。世の学生、世の人はこんなに自然に就労の経験をして、そこから始まる生活の基礎を若い時代に築いているから、すんなりと世の中に入れ、自然と生活をしていけるのだろうか。と、漠然と感じた。

その時に鏡を見てしまった。
毎日見ている、知らないうちに老けていく見慣れた顔。その顔を眺めながら、ふと「学生時代に面接を受けたとしたら」と想像をした。
その瞬間、自分の名前を思い出した。その名前は、人から呼ばれることはあっても、自分の名前だと自分自身で思うことは長い間なかった。
自分の名前を思い起こした時、鏡に映った顔と自分の名前が結びついた。
鏡に映っているのは自分で、かつて学生だった頃の延長にいると気付いた。
久しぶりに現実に戻った気がした。
恐ろしいことに気付いてしまったが、どうしようもない。

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