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繊維の教科書〜基礎から応用まで

合成繊維の一般知識

ブライトとダル

合成繊維には、艶のあるものと艶のないものがあります。その艶の調整をしているのが酸化チタンです。酸化チタンの微粒粉末を混入して紡糸すると光沢を無くすことができます。
艶消しのないものをブライト、艶消しをしたものをダルといいます。艶消し程度によって、フルダルやセミダルといった繊維があります。

合成繊維の最適加工条件と品質不良の発見方法

合成繊維の最適加工条件と品質不良を発見するためには熱応力を測定することが有効です。熱応力とは、加熱したときに繊維が収縮する力のことです。熱応力を見ることで、糸や生地の製造工程で加えられた温度や張力の履歴を推定できるので、正常な糸との違いなどが発見できます。

ナイロンについて

未記入

ポリエステルについて

ポリエステルの紡糸

20年以上前は、編用・織物用のポリエステル繊維は、紡糸引取速度1000〜1500m/分で引取った未延伸糸をポリエステル繊維のガラス転移点温度Tg(約70〜80℃)以上に加熱しつつ、引き続き2〜3倍の速度で延伸して得られる延伸糸を用いるのが一般的であり、紡糸工程と延伸工程との2工程を別々に行う低紡糸速度別延伸方法(FOY)と、2工程を直結して行う低紡糸速度直接紡糸延伸方法(SDY)の2種類の製糸方法で操業化・生産されていました。

繊維の物性と生地への影響

伸度(EL)
フィラメントの伸度(EL)は、小さいと、製織後の風合が硬く、逆に大きいと、織物とした際の寸法安定性が劣り、引張りに対する腰がなく、風合も柔らかくなります。
また、このELを得る際の荷伸曲線においては、一次降伏応力点を有しないことが好ましい。降伏応力点を有すると、高速でウォータージェットルームで製織した際に緯斑・緯ヒケが発生しやすくなるとともに、製織後の熱セット時に降伏応力部での熱履歴差により筋斑が発生しやすくなるため、品位的に望ましくない。

複屈折率(ΔN):未記入

熱収縮応力特性値(TSCV):
熱収縮応力特性値TSCVは、熱収縮応力曲線において、収縮応力が開始する温度(TST)から収縮応力が最大値を示す温度(TSP)迄の間の変曲点に接線を引いた時の最大傾き
要因:延伸ローラの温度はTSCV,TST,TSPを決める大きな要因であり、この温度は120℃以上が好ましく、120℃以上にすることにより、TSPを挙げることができ、且つTSCVを下げることができる。この温度が120℃未満の場合には、沸水収縮率が大きくなりすぎ、またTSP及びTSTが低温側に移り、且つTSCVも大きくなるため好ましくない。
延伸倍率(延伸速度)は1.4倍以上、好ましくは1.5〜1.7倍とする。1.4倍未満の場合には、分子の配向が不十分なため伸度が高くなったり、乾熱特性値ECVが低くなり易い。一方、1.7倍を越える場合には、TSCV,TSP,ECV等の特性は満足するが工程調子が悪くなり易い。

熱収縮応力開始温度(TST):
TSTは、熱収縮応力が開始する温度
→温度が低いと、熱セット時の収縮が早く始まるために、風合的に硬い印象を与え、また幅入れもし難く、厚みのない織物ができやすくなります。

熱収縮応力ピーク温度(TSP):
TSPは、熱収縮応力のピーク温度
→ポリエステルでは、温度は130℃以上にする必要があり。TSPが130℃未満のものは、紡糸・延伸段階での配向と熱セットが十分でないために、製織後の熱セット(プレセット)あるいは染色工程時に縮みにくくなり、厚み(ふくらみ)のない薄い織物しか得られなくなる。TSTは、好ましくは135〜150℃であることが望ましく、FOYやSDYと同様な張り・腰が得られる。

乾熱特性値(ECV):
乾熱特性値(ECV)は、120℃以上180℃以下の空気雰囲気下で長さ70cmの糸条の端にデニール当り0.2gの荷重をかけた後、20秒間で縮んだ収縮差を元の糸長に対して、百分率で表わしたもので、Tはその時の雰囲気温度
→ECVが小さい場合には、熱セット時の縮みが少なくなるため、FOY・SDYと異なる風合、目張り(透けて見えやすく、膨ら味がない)となり好ましくない。
要因:ECVが小さい繊維は、伸度高めで結晶サイズが非常に大きい構造を持つもの。

沸水収縮率(BWS):
フィラメント糸に1/30g/デニールの荷重をかけ、その長さL0 を測定する。次いで、その荷重を取り除き該フィラメント糸を沸騰水中に30分間浸漬する。その後、フィラメント糸を沸騰水から取外し、冷却後再び1/30g/デニールの荷重をかけてその時の長さL1 を測定する。沸水収縮率は次式より算出される。
BWS={(L0 ―L1 )/L0 }×100(%)
→BWSが小さい場合には幅入れし難くなり、一方大きい場合には縮みすぎて風合の点で好ましくしい。

結晶サイズ(CS):未記入

新しいポリエステルの紡糸設計で注意すべきこと
製織条件を銘柄ごとに切り替える必要があるということは、それ自体市場の合理化体制を崩すことであるので、後加工においては製織条件を従来品と同等にできる必要があります。

オリゴマーって何??

オリゴマーとは、比較的少数の単量体(高分子の構成単位となる比較的小さな分子)が結合した重合体のことです。
ポリエステル繊維には、PETオリゴマーが繊維内部に潜在的に少量存在します。
PETオリゴマーはPET繊維を染色(一般に130℃程度)する際に、PET繊維内部から繊維表面あるいは染浴中に溶出し、冷却工程で繊維表面に付着します。
※110℃以下で凝固
そして、繊維表面に付着したオリゴマーは、糸の状態であれば糸切れを引き起こし、布の状態では染め斑の原因となり製品品質を損ねます。
そのため、オリゴマー除去剤を染色時に添加することが重要です。オリゴマー除去剤は、オリゴマーの溶出の予防と溶出してしまったオリゴマーの分散を促進し、再付着を防ぐことができます。

カチオン可染ポリエステルについて

カチオン可染ポリエステルは、普通のポリエステルに比べてヤング率、強度が低く、耐熱性、耐酸性、耐アルカリ性も少し劣り、加水分解を受けやすいです。

強酸性下での加熱、125℃以上の高温処理は避けたほうがいいです。

半合成繊維の一般知識

アセテート・トリアセテートについて

アセテート・トリアセテートは木材パルプを原料としたセルロースに酢酸を化学的に結合した繊維です。

アセテートやトリアセテートという繊維は「半合成繊維」と言われる植物や動物からとれる原料を使って化学的に処理し合成した繊維に分類されています。

半合成繊維は天然原料の種類の違いにより2種類に大別され、セルロース系(アセテート、トリアセテート)とタンパク質系(プロミックス)があります。
セルロース系は木材パルプといった植物由来の原料で、タンパク質系はミルクといった動物由来の原料です。

その他の知識

高分子の階層構造について
一次構造=化学結合によって決まる構造
二次構造=結合・鎖の回転よって決まる構造
三次構造=複数の分子鎖の集まり方→配列されてるか、ランダムかなど
高次構造=結晶の大きさ、結晶と非晶の並び方など

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