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映像制作を通して協働の場をつくる|KINOミーティング

こんにちは。4月からアーツカウンシル東京のプログラムオフィサーとして勤務している、川満ニキアンと言います。

さて、はじめてのnoteの記事は私が担当をしている「多文化共生」のプロジェクト「KINOミーティング」(以下、KINO)の活動についてご紹介しようと思います。

 KINOミーティングについて
海外にルーツを持つ人たちを対象に、都内のさまざまなエリアで映像制作のワークショップを実施するプロジェクトです。各エリアで映像作品をつくりながら、参加者が自身のルーツと、現在生活しているエリアや属しているコミュニティとの関係性を探ることや、ルーツが異なる人々が協働する場をつくることに取り組んでいます。
 
ちなみに、KINOの名称の由来は、「場所(エリア)を移動しながら、映画や映像という媒体を使っていく、そのプロジェクトの過程でさまざまな人々と出会い、対話する」という意味が込められています。
● KINO = 映画、紀(行)
● ミーティング = 出会い、会議(話し合う)

現在の運営スタッフは5名。過去に、人材育成事業であるTokyo Art Research Labで実施した「Cross Way Tokyo」「Multicultural Film Making ルーツが異なる他者と映画をつくる」(以下、MFM)のプログラムを担当していたスタッフが再び集い、今回はアートプロジェクトとしてKINOを始動させました。過去の活動が現在のプロジェクトにつながっています。
▼以下から各事業の詳細と当時の様子をまとめたレポートなどご覧になれます。

キックオフプログラムの開催
KINOが活動をはじめるにあたり、まずはどのようなワークショップを行うのか想像してもらう場として、6月に「キックオフプログラム 映画『ニュー・トーキョー・ツアー』オンライン上映+トーク」を開催しました。
上記でご紹介した、MFMのプロジェクトで制作された映画『ニュー・トーキョー・ツアー』とその制作過程を追ったメイキングムービーを上映。
終了後は、監督や出演者のみなさんが映画制作に関わったきっかけプロジェクトを経ての変化など、多様な背景をもつ他者と映像制作を行うことの難しさや成果をお話ししてもらいました。

オンライン上映会のトークイベントに登壇する監督と出演者のみなさん

トークの最後には、これからはじまるワークショップの参加者募集動画を流して、活動について紹介。
▼ 実際の紹介動画(出演されているのはKINOの運営スタッフであるテイさん)。ワークショップの内容がよくわかるので、ぜひ見てみてください。

#1 ワークショップがスタート
本題のワークショップには7名の方が参加してくれました。日本語が得意な人やそうじゃない人、英語しか話せない人。映像制作に興味があって来た人や他の海外にルーツをもつ人と出会いたいと思い来てくれた人など、多様な言語レベルや目的をもった人々が集まりました。


池袋周辺を舞台に、まちの思い出をもとに映像制作を行うワークショップを4日間に渡ってみっちり開催。
参加者は3人1組のグループとなって、インスタントカメラ、録音機、大型カメラなどの機材を活用し、まちなかから自身のルーツを見出すインタビューのワークと、その内容に合う映像の撮影・編集作業を行います。
参加者がまちを歩きながら「この公園に来るとニューヨークのセントラルパークを思い出す」といったような些細な思い出話を語り、その語りのイメージとなる道端の銅像や自動販売機、規則的に並ぶビル群、ひっそりと佇む韓国物産店などの風景を写真や映像で切り取る。そして、集めた素材から、まちへの視点と語りのテーマを整理して、3人でひとつの映像作品をつくっていきます。

チェキで撮影した風景
映像のタイトルを撮影中
編集作業の様子

文化も言語も異なる7人がはじめて出会った場で、お互いについてインタビューし合い、映像作品をつくる。言語や考え方の違いによって苦戦したり、なかなかスケジュール通りに進まない場面もありましたが、最終日は以下3つの立派な作品が完成し、上映会を行いました。

上映された作品
● 社会的なアイデンティティなどをテーマに日本に来てからの精神的・身体的な変化を表現した『変身』
● 内に秘めていることや日本で安心するものに視点を当てた『ひみつ』
● これまで住んでいた場所と日本で過ごす時間について考えた『JST(日本標準時)』

ワークショップを通して、参加者同士は「海外にルーツをもっている」という共通点によって共感しながらも、だんだんと映像作品をつくる過程でみえてくる「差異」が良い意味で壁や刺激となって、自分のルーツについて見つめ直している様子がとても印象的でした。

上映会後、感想をシェアする参加者のみなさん

ワークショップ参加者の声
● 初めて映画撮影の知識を全般的に了解しました。さらに多文化共生のこと は以前より深く理解しました。スタッフさんはこのプロジェクトを企画して本当にありがとうございました。

● グループの各個人の体験を話しつつもみんなのその体験があった場所や関連するような景色も同時に見る事ができてただ話し合うより深く理解する事ができたと思います。
みんなルーツが違っててそれぞれなにを基準にして考えるのかとか価値観の違いとかで自分とは違った視点について知ることができて良かったです。
他のグループのシネマポートレイトを見る時にも自分にはないような体験を色々聞く事ができてよかったなと思います。全体を通していろんな出身の人と話し合う事ができてより自分の視野が広がったなと思います。

● Experiencing & knowing the city in different perspective is kinda interesting than we ever saw from outer world. This workshop made us opened up our mind & eyes more than before to view this part of world and places in technical way too. And all the respected staffs from KINO Meeting are cherry on Top. My lifetime experience and will join it again if I can in future.
和訳:異なる視点で街を体験し、知ることは、外界から見るよりもちょっと面白かったです。このワークショップは、この世界の一部や場所を技術的な方法で捉えることで、私たちの心や目を、以前よりも開かせてくれました。そして、KINOミーティングの尊敬すべきスタッフの皆さんは、まさにその頂点にいます。私の一生の経験であり、今後も可能であれば参加するつもりです。

感想からもわかる通り、自分とは異なる他者や文化との出会いを通じて、世界をみる目を少し広げてみることを体験した参加者のみなさん。

多文化共生では、海外にルーツをもつ人々に社会参画してもらう機会をどのようにつくるのかが重要だと言われていますが、コミュニケーションの壁(言語の違い)があることで繋がりをつくることが難しい、そもそも孤立している人も多く、知り合う機会がないという課題があります。
今回KINOのワークショップに立ち合い、「アート」を介することで話せることや、関わり合うことができることがあるということ。そして、出会いの場(ミーティング)を創出していくことを、ある程度の時間をかけて丁寧に積み上げていくことが、多文化共生の一歩として大切なことなのかもしれないと実感しました。

11月には2回目となるワークショップの開催を予定していますので、今後のKINOの活動を楽しみにしていただけたら嬉しいです。

*KINO新着情報は公式Facebookからご覧いただけますので、ぜひチェックしてみてください。


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