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二鬼夜行

「あの神社にお参りしたら何でも願いが叶うらしいよ!」
そう誘ってくれたユー子はスピってるにもほどがあると有名な子だった。占いやパワースポットが好きらしく、大学の教室内でよくそういった話をしているのを見かけた。
私はユー子と同じ授業をとっていたが、遊びに行ったことは無いし、話したことも授業の関係で数回あるだけだ。しかしそんな私にも関係なく接してくる、いわゆる陽キャな子だ。
「就活も上手くいくかな、、。」
私は就活でこれまで大型連敗を喫していた。藁にもすがる私の思いを見透かしたような誘いだった。
「もちろん!良い気を纏うと何でも上手くいくんだから!サヤカちゃん疲れてそうだしさ、気分転換にね!行こうよ!」
そんなこんなでユー子との初めてのお出かけは神社になった。

私たちは夜中の1時に神社で合流した。この時間が1番運気が高まるらしい。お世辞にも綺麗とは言えない寂れた神社だった。ユー子は先に来ていた。
「いつもこの時間に来てるの?」
「そうよ、人が少ないこの時間が1番良いとされてるの!」
「、、なのに他の人はいないのね。」
「今日はたまたまそうみたいね。まあ毎日来るところでもないからね、とにかく行こ!作法教えたげる!」
私はユー子に言われるがまま鳥居をくぐった。心なしか背筋が凍るような感覚があった。
そしてその感覚はユー子に渡されたお守りを受け取ってからより強くなった気がした。
「鈴緒の前に行ったらそのお守りをまず額に当てて、それから」
ユー子の指示に従っていくと、次第にお守りが熱くなってきた。
「ねぇ、これ、、」
「いいから続けて!」
ユー子の勢いに押され言われるがままの動作を行った。

私はフッと気を失った。

また1人ゲット、成功だ。
その場にへたり込んだサヤカをみながら思った。
あと少しだ。あと何人かで約束の人数にたどり着く。
私はサヤカに渡したお守りを回収しようとしゃがみ込んだ。サヤカはお守りを固く握りしめていた。
おかしい、今までこんなことは無かった。他の子たちは力なくその場に倒れていた。私は強引にお守りを奪い取ろうと力を込めた。
次の瞬間、サヤカの反対の手が私の首を捉えた。
「ううぅ、な、ぇ、」
私は目の前が真っ暗になりその場に倒れた。


「最近出回ってる都市伝説知ってる?」
「え、お守りがどうとかってやつ?」
「いやなんか霊的なやつ、取り憑かれると毎晩悪夢をみて寝れなくなって、次第にやつれてくんだけど、死ぬことはできなくなっちゃうみたいなやつ。」
「こわ〜」
「そっちのそのお守りがどうとかっていうのは?」
「あたしも詳しくは知らないんだけど、ヤバいお守りがあるらしくて。そのお守りを持って決まった動作をすると悪魔と契約させられちゃうんだって。」
「契約したらどうなっちゃうの?」
「悪魔に魂を食べられちゃうとかなんとかって話だったと思うよ。」
「そんなのとさっき言った霊が二つが同時に起きるとどうなっちゃうんだろ。死ぬのかな、死ねないのかな。」
「なんかどっちでもない世界とかに行かされそう、分かんないけど。」
「まあそんな偶然ないか。そうだ、こういうスピってる話、ユー子詳しくないっけ?最近ユー子みた?」
「いや、全然。仲良かった子も最近会ってないって。それでこれもウワサで聞いたんだけど、ユー子がよく行ってた神社から、あの子の声ともう1人誰かの声が聞こえてくるらしいよ。」
「えーやばいじゃん何それ。」
「助けてっていう声が聞こえるんだってさ。」
「えーこわ!あっ、ちょっと話変わるんだけどさ、最近できたあたしの彼氏も神社が好きらしくて、今度夜中に一緒にいこって誘われてんだー。」
「うわなんかちょっとやらしいねー。」

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