#ネタバレ 映画「ロボジー」

「ロボジー」
2011年作品
恋をするとロボットが生まれる
2012/2/3 11:12 by さくらんぼ

（　引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。　）

定年まで全力で働けば、あとは、食っていけるのなら、もう働きたくない、と思う人が多いのではないでしょうか。でも中には、楽しい仕事ならしてもいい、と思っている人もいるかと思います。

学校で一所懸命勉強し、社会へ出たら、こんどは、いやな仕事でも我慢して一所懸命働き（木村電気の三人の社員ですね）、そうやって社会貢献をしながら、家族を守り、子育てをして、ようやくたどり着いた定年です。これからの時間は人の為ではなく、自分のために使いたい、そう思ってもバチは当たらないでしょう。そう長くはない第二の人生は、自分の好きに使って良いのです。

G（じいちゃん）が頑固なのは、本当の自分に戻るためです。Gなりに自分探しをしているのです。この世に生を受けたのに、会社で、家庭で、長年自分を殺して生きてきて、本当の自分とは、ハテ、どんな人間だったのか、それすら知らずに天国に旅立つことほど哀しいことはないと思います。

そのGがロボットの気ぐるみショーで、意外な楽しさを発見してしまうのですね。さえないGもロボットに変身すれば世界中がちやほやしてくれるのですから、まるで青春時代にタイムスリップしたモテキ状態です。だからGはロボットに恋をしました。

一方、今の若者たちや、学生やオタクたちは、基本的に好きなことを探しています。落研の人もいればロボ研の人もいる。そのときロボ研の人はロボットに恋をしていました。

世間様では、恋をして、愛し合い、結婚すれば、つぎは子供が生まれると予想します。映画「ロボジー」でも、最初は気ぐるみ騒ぎでしたが、最後は、Gには敵わぬとも、どうも、かなりの高性能ロボットが誕生したようです。

つまり、人間である、父（G）と、母（葉子）から生まれた子供が、本当のロボットであるラストの「ニュー潮風」だったのだと思います。あれは二人の愛の邂逅、愛の奇跡がなければ誕生しませんでした。「ロボジー」とは、そんな愛の物語だったようです。

映画のラスト、ニュー潮風のピンチを助けて欲しいとGの家に行った葉子。微笑むG。あれは両親の会話なのでした。映画「スウィングガールズ」では女子高生のジャズへの恋を、映画「ハッピーフライト」では仕事への責任感が引き寄せた恋を、描いていました。これも、その延長線上にあったのです。

さらに、もうひとつ教訓めいたことを読み取るとしたら、それは、いやな仕事でも我慢して一所懸命働いていた木村電気の三人の社員（平均的会社員）に対するものです。

企業秘密を守ることを優先するのか、製品開発を優先するのか、販売利益を優先するのか・・・しかし、世の中には、ひまなGとか、オタクとか、潜在的な協力可能者がいっぱいるようで、彼らの力を借りることで並列駆動コンピュータの様な働きが生まれ、一気に技術革新が加速することもあるのです。

細部の演出、演技に適度な抑制があり、心地よい映画でした。

★★★★

追記 （ されどアンケート用紙 ） 
2016/1/18 17:46 by さくらんぼ

一年ほど前、地元に温泉（スーパー銭湯）ができました。その時は、「嬉しくてすぐに行ってみたけれど、浴室の設計に不満があったり、その他サービスも試行錯誤していた」という話をしました。

先日、久しぶりに、そこへ行ってみたのです。土日に混むことは予想できましたが、日曜日も夕方になれば、さすがに空いてくるだろうと思って。でも誤りでした。たいへん混雑しており、入り口では係員さんが入場制限をしているぐらい。なんでも更衣室ロッカーの空きがないとか。かなり大きなロッカールームなのですが。

でも利用してみて、なぜ、そんなに繁盛していたのか理由が分かりました。出入り口の目立つところに“B5サイズ”のアンケート用紙が“掛けてあり”（普通の店は隅っこ置いてあるもの）、「サービス改善に努めるので不満な点を指摘してほしい」旨のはり紙までしてあったからです。

もちろん、どこの店でも似たような事はしているはずですが、ここの銭湯は本気度が頭一つ抜けている様です。具体的なことを書くのはまたの機会にしますが、その熱意の結果が、じわじわと施設のあちこちから噴出しており（そうなんです。噴出していたのは温泉だけでは無いのです）、施設全体が、その外も内も“佳境に入ったお祭り状態”になっていたのでした。

なのに、客で混雑してもそこは温泉、なかなか刺々しい空気が出てこないメリットがあります。これは人々が発している「気」が喜んでいるせいですね。この「気」もここの財産です。これがある限り、人々は無意識にも引き寄せられてくるはず。ここにパワースポットが人工的に作られたのでした。

（ 　最後までお読みいただき、ありがとうございました。

更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。）

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