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#ネタバレ 映画「スウィングガールズ」

「スウィングガールズ」
2004年作品
アイム・ハングリー
2004/9/23 10:22 by 未登録ユーザ さくらんぼ


( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。 )

のどかな田舎の風景の中、これもまた、のどかな夏休みの補習授業が出てきました。大あくびをする主人公たち。勉強は「押し付けられてする」ものではありません。飽食状態では、勉強も、その有り難味が分からないのでした。

ですから、忘れたお弁当を届けるエピソードはその逆の世界を描いている様に思いました。「追いかける事」は大変だけれども楽しくもあるのです。

最初は補習授業をサボるのが目的のバンド結成でしたが、「なんか、良くない! 良くない!!」と面白さが分かりかけてきた頃を見計らったように、「バンドから追放」されてヤル気に火が点くのでした。いまや彼女たちは「追いかける人」に変身したのです。

楽器が無い。修理も出来ない。買うお金も無い。練習場も無い。なんと先生さえもいない。さらにテープを送るの忘れた。電車が立ち往生したなど、彼女たちに降りかかってくる問題は飽食ではありません。(「不足」はこの映画のモチーフの様に見えます)でも、彼女たちはバンドを辞める口実にしようとは思わないのでした。追いかける事は意外に面白いのです。

さらに自分たちを追放したブラスバンドクラブの先生に、自分たちのしている事を企業秘密だといって内緒にした気持ちの中には、意地も有ったのだと思います。

この映画を観ている間、ずっと私は涙が止まりませんでした。

それはそんな彼女たちの「追いかける」姿に感動していたのかもしれません。あるいは自ら経験ある他の習い事の喜怒哀楽が思い出されていたのかもしれません。さらにオジサンの世界の趣味と言われたジャズを、若者が理解しようと努めてくれた事にも感激したのかもしれません。いつの間にか映画のラストでは、最後列でタクトを振り、大喜びしている先生の気分になっていたのでした。

追記 ( ガラスの天井 ) 
2015/9/4 6:26 by さくらんぼ

>ですから、忘れたお弁当を届けるエピソードはその逆の世界を描いている様に思いました。「追いかける事」は大変だけれども楽しくもあるのです。

私の夢。

南の島でシュノーケル。→ 叶いました。

河原か湖での、お泊りキャンプ。→ まだです。

無音の空中散歩(ハングライダー)。→ まだです。

先日、お葬式がありました。あのときは、それが引き金になり、自分は「うつ」になってしまうのかと、本気で思うほどに、胸が苦しくて、PCなどスイッチも入れられませんでした。天気予報を見るためにやっとスイッチを入れても、映画サイトを見ることなんて、不謹慎すぎて(失礼)出来ませんでした。

当然にTVも楽しめず…

いや、恥ずかしながら、あの時には、AKB48みたいなアイドルだけが、心のファイアーウォールを通過できたのです。音を消し、映像だけでも良かった。

表面づらしか見ない人には「不謹慎だ」と叱られそうですが、たぶん老死と対極にある、彼女たちの若さと生命力にあふれた存在こそが、喪中の私を癒してくれたのでしょう。誤解を恐れずに言えば、あの時の彼女たちは、まさしくマリア様だったのです。

そういう意味でも映画「超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか」の最後にアイドルが出てきたのは正しいことだと確認できました。

それで、アイドル映画の代わりに映画「スウィングガールズ」を録画で観たのです。

その「スウィングガールズ」では、サイドエピソードとして一言だけ語られる話があります。それは、隠れジャズマニアだった数学の小澤先生が、どうやら同僚の女性教師に片想いをしていたと言う話です。

彼はジャズのレコードを一枚ずつ学校へもってきては音楽教室にプレゼントしていました。そして、期が満ちて、彼女をデートに誘えるような状況になってきたころ、自分から逃げてしまうのです。理由は、楽器が演奏できないから、それがプライドの高い、彼の壁でした。

別に楽器が演奏できなくとも良かったのですが、映画の設定上、それを障害にする必要があったのでしょう。

象徴的な壁はもう一つ出てきます。

主人公の女性が、リサイクルショップで中古のサクソフォーンを見つけ、おもわず顔を近づけ「ゴツン」と、ウインドウに額をぶつけるシーンです。

ガラスの壁。

いや、女性ですから、これは、いわゆる「ガラスの天井」なのかもしれません。

そして劇中、クライマックスに、こんな言葉が出てきます。「人は二種類に分けられる。スウィングする者と、しない者だ」。

スウィングガールズたちは、苦労の末,みごとにガラスの天井をやぶり、人生をスウィングしたのでした。

観客と喜びを共有した時の、ステージ上の彼女の顔が印象的なラストでした。自分の歓びが他人の歓びに直結する。なんと幸せな人生の選択だったのでしょう。


(  最後までお読みいただき、ありがとうございました。

更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)


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