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#ネタバレ 映画「春の日は過ぎゆく」

「春の日は過ぎゆく」
https://eiga.com/movie/51587/photo/
2001年作品 韓国
静寂
2002/8/18 8:02 by 未登録ユーザ さくらんぼ (修正あり)


( 引用している他の作品も含め、私の映画レビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。)

この映画には静寂がある。

私が家にいるときは、最近はインターネットラジオを聞いているか、ステレオを聞いているか、テレビをつけている。だから音にまみれている。でも、本来私は静寂が好きだったはずだ。それをふと思い出させてくれた。

ところで、映画で少しだけ気づいた事もあるので、忘れないうちに、それを追加でお話しようと思う。

まず、なぜウンスはサンウに惹かれたか・・・私は女心は分からないので、そちらからの分析は出来ないが、ウンスの部屋に沢山の酒ビンが有った事に注目する。あれは過去の男性遍歴の暗喩である。ビンの数ほど男がいた。男を変えるたび、新しい男の好きな酒をそろえた。それでビンだけが残ったのだと思う。

また、ビンは男性のシンボルの暗喩である。他に例を上げると映画「メッセージ・イン・ア・ボトル」では、男が海に流した手紙入りのボトルが、砂浜に突き刺さっていた。見知らぬ女がそれをつまむ。ビーチは海(女)陸(男)の出会う場所。絵に描いたような出だしであった。

話しを又元にもどす。だからウンスは恥じらい多き乙女の様に、やっとの思いでサンウを受け入れた訳ではないと思われる。やがて本当の愛に変わったとしても、最初は経験豊かな者が持つ手馴れた行動を感じる。これはウンスを「尻軽」と軽蔑する表現ではない。「悲しい運命(さだめ)」を描くための表現である。

それから「消火器」の話しだ。話しの前後の状況、そして「消火器」の持つ暗示性を加味して判断すると、これは相当セクシャルな誘い言葉になる。まるで映画「007」に出てきそうなピンキーなセリフだ。そこから先は察してもらいたい。

次にサングラスの男の話しをする。なぜウンスは彼に惹かれたか。サングラスの男が二重まぶたの整形手術をした事に注目したい。韓国の人たちは本来、一重まぶたが多いと聞く。しかし、だんだん整形で二重まぶたにする人が多くなってきたそうだ。でも、映画「風の丘をこえて」が大ヒットした当時、韓国の人の中に、今までよりもいっそう大きな民族意識が芽生え、逆に一重まぶたに戻す現象が起きたという。

それを踏まえてこの「春の日は過ぎゆく」を観ると、サングラスの男が二重まぶたにしたのは、彼が韓国の伝統習慣など、ウンスを苦しめる材料から離れた存在だとの表現である事が分かる。それにお金持ちらしい事も重要なポイントだ。「愛人」契約の可能性もあるから。これもウンスを軽蔑して言っているわけではない。それだけ彼女にとって生きる道の選択肢が狭いという哀しさの表現である。

それにしても静寂な「雪の降る音」の、なんと素晴らしい描写なのだろうか。

追記 ( 3次元恋愛とケータイ ) 
2015/4/10 14:06 by さくらんぼ

「 本当のことは、誰にもわからないし、私にもわかる必要はないの。

余白を残した心を見つめて、一日の長さ想い出ではかり、

時には愛を、愛を、想ってもみたい 」

( 歌:やまがたすみこ )

若いころ、この不思議な歌詞の歌を好んで聴いていました(でもCDからLPに代わった時代に、持っていたすべてのLPを売ってしまったので、今はもう聴くことも、タイトルすらも分かりません。とても後悔しています。だから歌詞も、細部は違っているかもしれません。

若いころは意味不明の歌詞でしたが、中年になり、ふと「彼に別れを告げて帰り、一人ぼっちになった日の、たそがれ時の心境を吐露した女子の歌」ではなかったのかと思い始めました。

彼女は、彼との別れを決断しても、その理由をきっと彼に理解できるようには説明していません。それどころか、自分自身でも、言語化できるまでには分析していないのかもしれない。

また、こんな歌詞も心にひっかかっています。

「 あのとき目の前で 思い切り泣けたら 今頃二人 ここで海を見ていたはず 」

( 「海を見ていた午後」の2番より抜粋、歌:荒井由実 )

これは、たぶん、逆に「彼から別れ話を切り出されて、本当は別れたくなかったのに、女のプライドなのか『いいわよ』って、甘受してしまった女心の歌」ですね。

ボロボロになっても良いから、あそこで思いっきり泣いてすがれば、やさしい彼だから、別れずに済んだのかもしれない…そんな気持ちがいつまでも残っているのですね。

でも、ボロボロになっても相手にすがるのは、ある意味土下座と同じ。土下座してまで引き止めた相手を、はたして愛し続けることはできるのか…

こんなのもあります。

「 彼に出会ったばかりの頃、私は大事な話しをしました。でも、彼はまったく動じませんでした。その時、なんて心の大きな人なんだろうって思ったんです。

でもやがて・・・そう見えたのは、彼が私の話しの本当の意味を、理解していなかったからだという事に気づいたんです。だから私と彼は今でも別々の世界に生きています。

二人で過ごす時間は暖かい。でも・・とても寒い。 」

( 架空のモノローグbyヒロイン )

これは、映画「春の日は過ぎゆく」で、私がレビュー板に書いている話です。今回こちらに転記してみました。 彼はとても良い人ですが、お坊ちゃんで、離婚経験(韓国では日本とは比べ物にならないほどの大問題らしい)のある彼女の気持ちを、本当には理解できていないのです。

でも、それを「あなた本当にわかってるの!いま説明してあげるから、私の哀しみを何とかしてよ」とは言わないで、独り苦しんだあげく、黙って去っていくのです。

あとには意味不明だと慌てる彼と、観客が残されました。

ケータイができ、メールとか、ラインとか、ツイッターなどもでき、海外にいても、一日中でも、誰かとつながっていられるほどの時代になりました。でも繋がれるつもりになっても、恋愛はまた別なのですね。

押したり引いたりの、おなじみの恋の騙し合いの上に、恋愛では、言いたいことも言えず、聴きたいことも聴けず、そんなデリケートな状況も多々発生し、それが複合的に絡み合い、さらに、言葉足らずなども加算されると、ケータイどころか、たとえデートしていても繋がっていない事が起こるのです。そんな状況は、今でもやっぱり改善されていないのですね。

追記Ⅱ ( 沈黙と静寂 ) 
2015/5/1 10:29 by さくらんぼ

蒸留水と岩清水では、飲んだ味わいがまったく違うように、静けさにも二種類あります。

ひとつは無響室や遮音の良い部屋での無音、もうひとつは山や港の静寂です。

無響室の無音は閉鎖的で耳を圧するような感じですが、山や港の静寂では、目を閉じていても空間の広がりが感じられ、安らぎがあります。

私が好きなのは岩清水と、山や港の静寂です。

騒音にまみれた工場地帯で、高度成長時代に育った私は、特に、山や港の静寂は得難いものとして評価しています。

そうそう、ゴルフ場内のコテージに泊まった時の、午後の静寂も素晴らしかった。あそこでは、音楽も会話もいりません。

テラスで缶ビールなど飲みながら、ただひたすら微風を感じ、空間の広がりを利(き)いていました。

ところで、映画「春の日は過ぎゆく 」では、彼女は本心を語りません。本心を語らぬまま去っていくのです。

恋愛の終わりにはそんなこともあるでしょう。捨てられる方は別れの理由を知りたいものですが、捨てる方としては、言えない場合もあるのです。理由を言語化できない人もいるでしょうし、出来ても言えない理由もある。

では恋愛初期の、いわゆる告白の段階ではどうしょう。

告白されても「YES」「NO」の返事すら出来ない人も多いようですね。ネット上にはそんな人生相談があふれています。

私はうん十年前、小学生の時に、転校前の同級生の女の子から突然「すき」と言われたことがあります。女の子はおませですから小学生でも告白するんですね。

でも、男子の私はまだ未熟で恋愛感情が確立しておらず、ただ逃げだすことしかできませんでした。でも、今考えると、私も彼女が好きでした(少なくとも相性は悪くなかった)。だから、あの時の返事はYESですよ(遅すぎるか)。

いろんなケース、事情はあるでしょうが、基本的に私は、大人なら、なにかの返事をしてあげるべく、努力すべきだと思います。

通りすがりのナンパならともかく、普通は、おそらく、最低でも数か月、あるいは何年も悩みぬいた末の決断、それも、人生にはそう何度もないほどの勇気をだしての告白でしょう。

だから、それを受けた方は、なんらかの返事をしてあげるのが基本的な礼儀だと思います。

返事の仕方はいろいろです。

映画「私をスキーに連れてって」では、私の記憶が正しければ「ありふれた新年の挨拶がYESのサイン」でした。「今年もよろしく」と言うあれです。

もちろん、返事はいろいろ、と言っても、あまり微妙だと、相手に伝わらないかもしれない。だから、そこは注意が必要です。

返事がもらえないと、告白した側は、長期間悩むことになります。一年間悩んで、勇気をだして、やっと告白したのに、返事がもらえなくて、さらに一年以上、もんもんと悩むこともあるのです。残酷でしょう。

その間、相手が同級生や同僚ならば、いやでも近くにいなければならない。どうしても、相手の一挙手一投足に意味を捜し、一喜一憂して暮らすことになるのです。

エネルギーを消耗した上に、誤解が誤解を生み、予期せぬ関係の悪化にもなりかねません。それではお互いにメリットは無いでしょう。

だから「ごめんなさい」、「少し考える時間をください」、「よろこんで」、などと、せめて1か月後ぐらいまでには返事をしてあげて欲しいと思います。

早めの返事が、たとえNOであっても、誠意の感じられる返事が、傷を浅くする薬にもなるのですから。

追記Ⅲ (  映画「セッション」  ) 
2015/5/3 13:34 by さくらんぼ

>告白されても「YES」「NO」の返事すら出来ない人も多いようですね。ネット上にはそんな人生相談があふれています。

このことについて、続きを映画「セッション」の追記( エネルギー不変の法則)に書きましたので、お読みいただけたら幸いです。

追記Ⅳ 2022.9.25 ( お借りした画像は )

キーワード「静寂」でご縁がありました。夜明けです。言葉を失うような、貴重で贅沢な瞬間ですね。無加工です。ありがとうございました。



( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。 

更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)


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