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#ネタバレ 映画「10ミニッツ・オールダー 人生のメビウス」
「10ミニッツ・オールダー 人生のメビウス」
2002年作品
ラジカセとケータイ
2004/2/5 17:21 by 未登録ユーザ さくらんぼ
( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。 )
女優の彼女は、忙しいロケの合間に、トレーラーの中で10分間の休憩をもらう。でも、彼女はあのトレーラーの中には存在しなかったのである。10分間のほとんどを。
モノクロの映像にとても美しい女性が登場する。彼女はトレーラーの中で一人になる。映画を観る私は何か秘密を覗く様な気分にもなる。彼女は靴を脱ぎ、ラジカセで静かなクラシックのピアノ曲をかける。その瞬間、車内に安らぎに満ちた雰囲気が生まれる。彼女はタバコをうまそうに吸う。
しかし、彼女のささやかなブレイクタイムは、次々と入ってくる映画スタッフによって、無残にも再度ブレイクされてしまう。
そのうちの一人の男性は、マイクのテストと言い、密室の車内で彼女の胸元に手を突っ込む、まったく意に介さない彼女、その途中にも別のスタッフがやってくるが別に騒ぎにもならない。映画の撮影中と同じく、ここでも彼女は普通の人間として扱われてはいない。
でも、彼女は逃げる術を知っていた。偶然かかってきた電話の中へ避難していたのである。彼女の心は彼女の体を離れ、遠く離れた電話の相手の所へ行っていたのである。10分間のほとんどを。
やがて電話が終わり、10分間のブレイクタイムも終わる。彼女はラジカセから流れる音楽をかけたままクルマの出口へと向かう。音楽を切れば安らいだ空気は消え、その瞬間からブレイクタイムの終わりとなる。一秒でも音楽のそばにいたい。彼女は音楽に見送られながら、音楽を振り返りながら、出口へと向かう・・・。
ジム・ジャームッシュ「女優のブレイクタイム」
追記 ( カフェ・オ・レだって薄情する )
2015/9/19 6:37 by さくらんぼ
食パンのふわふわ感が愛ならば、カフェ・オ・レの、とろり感も愛でしょう。
あるチェーン店で出しているカフェ・オ・レが、幸福感を感じさせてくれたので、よく飲んでいました。
それが、最近「水っぽくなったのです」。今まで一度もそんな事は無かったのに、ここのところ、何回もそう。
もう、愛は消えてしまったのですね。
これは、密かに行われた、事実上の値上げなのでしょう。でも、そのために愛が消えたこと、きっと経営者はご存じ無い。
店の選択肢は3つあったはずです。
①値上げする。②量を減らす。③薄める。
このなかで③だけが致命的に愛が消えてしまうのです。
客は、飲むたびに、愛の片辺を探さなくてはなりません。そして毎回、もう、そこには無い事を知るのです
今は背中を向けてしまった元恋人のそばにいることぐらい、傷つくことはありません。
追記Ⅱ ( 映画「パターソン」 )
2017/9/6 10:48 by さくらんぼ
>女優の彼女は、忙しいロケの合間に、トレーラーの中で10分間の休憩をもらう。でも、彼女はあのトレーラーの中には存在しなかったのである。10分間のほとんどを。
映画「パターソン」も、同監督の、どこか似たところのある作品です。ぜひご覧ください。
( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。
更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)
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