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「小記事の備忘録」オーディオの話題

ハイファイというよりローファイが好きです。「深夜食堂」的オーディオをめざしているのかもしれません(改造は自己責任でお願いします)。

2022.10.2 お借りした画像はキーワード「オーディオ」でご縁がありました。わが家で初めて鳴ったのも、この画のような電蓄です。これで真夏の暑い日にハワイアンを聴きました。中音域がしっかりとした良い音です。少し上下しました。ありがとうございました。

今週までのパレット 小記事の備忘録


五味 康祐さんのオーディオと音楽は宗教的な行為だったのかも


2022.12.15

五味 康祐さんのオーディオ本は何冊も買いましたが、一番心に沁みるのは「五味康祐音楽巡礼」と「オーディオ巡礼」です。

新居に引っ越したら本やCDを置く場所が無く、3年たっても持ってきたものは押し入れのダンボールのままなので、本を手に取れません。だから、どちらに書いてあったのか忘れましたが、こんな話があります。

その本によると、五味さんは交通事故で人を死なせているのです。そして別件では、親しかった女性が自殺もしており、それらの事について、五味さんは後々まで罪の意識から逃れられず、一人苦しみ続けたようです。

五味さんにとってのクラシック音楽とは、ある意味、救いを求める宗教的行為のようなものだったと思います。そして、その音楽を聴くためのオーディオ装置、特にスピーカーは、祭壇のような存在だったのでしょう。だから、できるかぎりのお金を投入し、最高の装置で、最高の音楽に触れることが、無くなった人に対する供養であり、自分に対する救済でもあったのだと思います。

だから、そこに偽りが一滴でも入ることを許さなかった。

オーディオにおける、コストパフォーマンスという思想を嫌っていたのは、そこに相手と自分に対する一滴の不誠実を感じ取ったからでしょう。これらの本が、並みのオーディオ評論、音楽評論とは一線を画しているのは、話の中に、(商売ではなく)五味さんの涙、心の傷が隠れているからだと思いました。

私はかねがね「オーディオとは愛の代償行動だ」と言っていますが、そういう視点から見ても違和感が無く、五味さんの心中はお察しできそうな気がします。

映画「冬の華」の名曲喫茶にはオートグラフらしき影が…


2022.12.14

映画「冬の華」がTVで再放送されていたので録画して観ています。健さんが名曲喫茶に初めて出かけるシーンが出て来ました。

ぎこちない健さんは入り口近くの席に座るのですが、奥の方にお店の看板スピーカーなのでしょう。タンスのように大きな、タンノイ・オートグラフのようなものがチラリと見えます。これは作家でオーディオマニアでもあった五味 康祐さんが溺愛したスピーカーで、「西方の音」や「オーディオ巡礼」などの著書でも紹介され、多くの読者も虜にしたものです。私には「五味康祐 音楽巡礼」は沁みます。

かつての私も影響を受け、タンノイの入門クラスであるスターリングを、10年間ぐらい使ったことがありました。これも一生物のオーディオとして買ったのです。若い頃に、おじさんになった自分をイメージして、その時クラシック音楽を聴くなら、見栄を張って、タンノイと、当時20万円弱したサンスイのトランジスタアンプが欲しいと思っていました。

両方とも手放したのは、スターリングが大きすぎたこともありましたが、総合的には、私には音が上品過ぎたからです。思えば、五味 康祐さんは音の品格について、とてもこだわっておられたように感じました。

私は3年前に都会の小さな部屋に引っ越しましたが、もし、田舎の、隣家が遠くにある、大きな一軒家に引っ越したのであれば、タンノイのアーデンなどを買って、オーディオルームを作ったでしょう。一度は手放したタンノイでしたが、まだ、しゃぶりつくしたとは言えず、もう一度挑戦したい気持ちもあります。今度は真空管アンプも使って。

6L6系 中華真空管アンプの導入記 ②


2022.12.7

6L6系中華真空管アンプですが、真空管4本すべて交換しました。(エージングで音が変わって行くのかもしれませんが)最初に付属の真空管では音が濁りがちだったからです。

まず、交換対象の定番である出力管を①gazechimp 真空管 6L6WGBにしました。②PM 6L6GC Premium /MPとあらためて比較試聴しましたが、②にはFM放送のようなフラットな周波数特性を感じましたが、①は中音域にエネルギーを感じ、AM放送を連想しましたので、①が私の好みにあいました。買ってきて最初に試聴した時とは、印象が違います。印象はその時の状況によって左右されるのだと、あらためて思いました。

しばらくの後、プリ管をJJの6SL7にしました。付属のものよりも、ふんわりとした感じがして、その、ふんわり感に惚れてしまいました。思えば、私が中学生ぐらいの頃、お年玉をためて買いたかった(けど、1.5倍ぐらい高くて買えなかった)ステレオが、このような、ふんわりとした音を出していました。

音が濁りがちだったのは、(失礼ながら)安価なアンプの設計に問題があるのではとも思っていましたが、真空管を3本交換して、濁りが減って行ったので、そうではなかったようです。

しかし、まだ少し濁りは残っています。

その、溶けない泡のような、溶けない天かすのような姿が見えるようで、口の中がさっぱりしません。

もともと、このローコストのアンプは、真空管アンプの先遣隊として購入したものなので、そろそろ本格的なものを買っても良かったのです。その為に、300Bの真空管を選ぶガイドブックも買ってしまいました。

しかし、ネットで見たところ、「整流管を変えたら、まるで三極管のように澄んだ音になったと」のレボートがありましたので、私も交換してみました。若い頃と違い、人生の残り時間も少なくなってきましたので、美味しいものは最初に食べておかないといけないのです。それでJJのGZ34に交換してみました。

そうしたら、濁り感が減りました。

このレベルなら、このアンプは使い続けられるような気がします。

整流管による音の違いの存在は知識としては知っていましたが、電源回路が音色まで変えるということは、体験してみないと、容易に理解しがたい事でしょう。

まあ、まあの、合格点の音になってしまいましたから、今後買うとしたら、買い替えではなく、買い増しになるように思います。個性が違うアンプを買い増して、気分によって、組み合わせるスピーカーによって使い分けるのです。今後のことは、ゆっくりと考えます。

( 真空管の交換は、メーカー指定の方法で行わないと、故障時に保証が得られなかったり、出火したりすることもあると思います。自己責任でおねがいします。)

「CDをLPのカートリッジで鳴らす」みたいな…


2022.12.6

CDが誕生した当時から、CDの音は面白くないという人はいました。私もその歴史を生きてきた一人として、気持ちは分かります。

だから、デジタルライントランスや真空管アンプを使うのです。

近年では、コンピューターで真空管の音をシミュレーションする人もいるようです。そのような変換器を、「ギターの音の変換機」のように売り出して欲しいものです。スイッチ一つで300Bでも6L6でも、シングルでもプッシュプルでも音が作れるなら、グライコの親戚感覚で使ってみたいです。

そんな今、オーディオ雑誌を見たら、「CDをLPのカートリッジで鳴らす」みたいな、「?」な記事がありました。

本屋さんの立ち読みだったので、現物写真を見ても、回路図のようなものを見ても、イマイチぴんときませんでしたが、しばらく眺めていたら、なんとなく理論的な事が分かってきたような気がしました。

私の誤解でなければ、LPカートリッジで音を拾うのではなく、音声信号の途中にLPカートリッジを挟む(つまり、信号をカートリッジ経由で使う)ことで味付けし、「ギターの音の変換機」のような効果を狙っているようなのです。

この方法なら、カートリッジを交換すれば音色も変わるでしょう。同じカートリッジでもヘッドシェルによって音色が変わるはずです。複雑に共振しているはずだからです。

ただ、現状では、まだ音色に改良すべき点もあるようでした。しかし、そのアイディアは、常識をひっくりかえすものであり、半世紀もオーディオ雑誌を読んでいる私にも、見聞きしたことのないものでした。

もし、このようなアダプターが商品化され、そして高評価、低価格なら、私なら、その為にだけにカートリッジを追加で買う可能性も否定できないと思いました。

LPによるハイレゾにふれた若い日

2022.10.27

私はLPによるハイレゾを楽しんだことがあります。

小学生の頃、TVから出る「キーン」という超高音に、頭が割れる思いをしたことがあります。しかし、周囲の大人は平気な顔をしているので、我慢するしかありませんでした。あの「キーン」は若者の耳にしか聴こえないのですね。おじさんになると、だんだん聴こえなくなるのです。

私が20代の頃、わが家にはダイヤトーンのDS-251Ⅱというスピーカーの、スーパーツイーターの音を止め(当時の自分には音色が好みでは無く、微妙な音量調整も出来なかったので)、替りに、ボリュームを付けたコーラルのHD-60というスーパーツイーターを上に乗せた、改造スピーカーがありました。高音の質と伸長がよりUPしました。これはJBL-LE8THに目覚める前の話です。

アンプはオンキョーのインテグラA-755、レコードプレーヤーはあの「一生もの」で、カートリッジにはテクニクスの205CⅡを使っていました。

それで、ある日、人気フォークグループ「かぐや姫」の、タイトルは正確に思い出せませんが(ライブ盤だったような気も)、借り物のLPをかけたのです。

その時の光景は良くおぼえています。電気を点けたように部屋の空気感が一変したのです。

スピーカーからライトの光が、私に向かって飛んできて、部屋中を満たしました。

ハイレゾとは矛盾するようですが、無機的なトランジスタアンプから、有機的な真空管アンプに変えたような味わいでもありました。

本当は光ではありません。超高音なのですが、シンバルの打撃音のような、分かりやすい高音では無いのです(シンバルの基音はわりと中音域に近い)。もっと、はるかに高い周波数なので、音というより、光、あるいは、空気感、気配に近いのです。

もちろん「キーン」などとは聞こえません。光のように無音です。しかし、あきらかに、気配はその他たくさんのLPの音とは一線を画していました。

オーディオの知識が無ければ、自覚できなかったかもしれないでしょうし、自覚できても説明がつかなかったでしょう。そんな、稀有な体験です。

今思えば、あれはハイレゾの音だったのだと思います。

残念ながら、おじさんになった今の私に、あのような超高音は聴こえませんので、あの現場にタイムスリップ出来ても感知できないでしょう。超高音になると耳だけでなく皮膚でも感知できるとの話も読んだことがありますから、まったくということは無いかもしれませんが、若いということは素晴らしいことです。

(追記) あの体験でハイレゾの威力を身をもって知りましたが、ライブ感と癒し感は、少なくとも私の中では背反するファクターだと感じたので、癒しを求める私は、ハイレゾよりもAMラジオ的な音が好みだと思いました。

JBL・LE8T-Hを語ってみる

2022.10.25

SANSUI SP-LE8TmkIIは若い頃から知っていました。試聴もしたことがありますが、若者には、少なくとも20代の私には、他のスピーカに比べてほの暗い音に感じ、デザインも少々重く(今は惚れてます)、買うまでの決心はつきませんでした。

それでも、自作用に数あるフルレンジスピーカーの中からLE8T-Hを選んだのは、JBLという(ジャズ向きの音の)ブランドと、LE8T-Hのデザインに惚れたからです。

私は、あのスピーカーなら見ているだけで酒が飲めます。若い頃からずっとLE8T-Hに恋していると言っても良いかもしれません(「オーディオは恋愛の代償行動」だと思います)。いつだったか、雨上がりの道端に捨てられたどんぶりがあり、底に少し雨水がたまって、キラキラ光っていたのを見て、「あっ、LE8T-H!」と思った事さえあります。

LE8T-Hを買ってきたばかりの事です。まだ家には箱がありませんので、座布団の上に置き、周囲をLPレコードのジャケットで囲って平面バップルのようにして、小さな音で鳴らしたことがあります。

恐る恐る聴いたこの音に降参しました。

ジュラルミンのセンタードームから、張りと艶のある鮮明な女性ボーカルが聴こえてきました。同時に、滲んだような吐息感も聞こえるのです。熱い2段攻撃です。

その吐息には、ある種の香水というか、牛乳のような、白粉のような女性の匂い、5月の花壇に漂う花粉の香り、そして体温を感じるのです。

花の香りには、香水のような線の細いものと、動物的な線の太いものが、混じり合っていますね。あれを音にしたものをLE8T-Hで初体験したのです。

美女から耳元でささやかれているようなボイスが聴こえてきて、あれは異次元体験でした。もしかしたら、どこかに共感覚も混じっていたのかもしれませんが。

こうなると一刻も早く箱に入れたいと思うものです。

しかし、期待に反し、箱に入れたら、なぜかLE8T-H初体験の感動は薄れてしまいました。あの音が無くなったとは言いませんが、初体験の感動が一番強烈でした。

「スピーカーを裸で鳴らしたら良い音がした。しかし、箱に入れたら・・・」という話は、別のスピーカーでの体験記をどこかで読んだことがありますから、そんなに珍しい話では無いのでしょう。

LE8T-Hにツイーターを付けて2ウエイで鳴らす方法もあります。完全なネットワークを使うよりも、名機LE8T-Hはフルレンジとして個性を生かして鳴らし、コンデンサーでツイーターだけを加えるシンプルな手法が良いようです。

オーディオは嗜好品ですから、どのような音で鳴らしても自由です。その上で、私の嗜好を言わせていただければ、経験では、ツイーターを鳴らしてハイファイになった分だけ、独特の色気は、さらに減少するように感じました。

(追記)

JBL・LE8T-Hの音の特徴には、これも挙げられます。

ボーカルなどの輪郭は鮮明なのに、リズム系など、叩く音が少し引っ込んでしまいます。

ジャズのJBLというイメージには反すると思います。他のJBLスピーカーのほとんどからは、リズムの立った歯切れの良い音が聴こえて来るのに、LE8T-Hは意外なほど大人しい音なのです。

刺激が欲しい若者だった(20代の)私は欲求不満になりました。

恋する者は恋人に対してより多くを求めるものでしょう。ですから、欲求不満は、惚れた話と必ずしも矛盾はしないと思います。

では、なぜ、このような音なのか。

JBLぐらいの超一流メーカーなら、どのような音作りも出来るはず。だから、これはメーカーが意図した音だと思います。

ここから先は、エンジニアの心に迫らなくてはなりません。

しかし、20代の私には宿題になりました。分からなかったのです。

そして60歳ぐらいになって、ようやく、「もしかしたら…」と、分かるような気持になったのです。

「究極のフルレンジ」、「終わりのフナ」であるJBL・LE8T-Hは、顧客層として、オーディオに疲れたおじさんたちを想定していたのではないでしょうか。20代の若者ではなく。だから、私もおじさんになって初めて分かったような気がしたのです。

刺激をくぐり抜けてきたおじさんたちに(もちろん女性にも)、「おかえりなさい」と優しく迎えてくれる酒場のママ的な存在が、エンジニアがJBL・LE8T-Hに込めた設計思想なのかもしれません。

JBL・LE8T-Hで一生もの・スピーカーに挑んだ日々

2022.10.24

一生もののオーディオ、次は「一生もの・スピーカー」です。

「釣りはフナに始まりフナに終わる」と言いますが、「オーディオはロクハンに始まりロクハンに終わる」と言います。

ロクハンとは、6.5インチの事で、口径が16センチのフルレンジスピーカーのことを言います。厳密に16センチでなくともかまいません。その前後で良いのです。20代の私は、20センチの中から、名機と呼ばれるJBL・LE8T-Hを選びました。

①新品のユニットを買いました。しかし箱がありませんので、実験的に16センチ用のバスレフ箱に付けたら、縮こまった音がしました。

②20ミリ厚のサブロク合板を半分に切った平面バップルに付けたら、カラリと伸び伸びとした音が出ました。これで聴く吉田拓郎さんの声は別格でした。しかし、狭い部屋では板に威圧感があり実用に適しません。

③120リットルの38センチでも使えそうな米松合板のバスレフ大箱に入れました。そうしたら、平面バップルの音に低音を加えたような音でした。自然感はありますが、やはり、箱が大きすぎるのでやめました。

それに、スピーカーシステムの設計のコツでは、大きすぎる箱よりも、適度な大きさの箱の方が、聴感上の低音が増える事もあると、後にどこかで読み、経験からも、なんとなく分かるような気もしました。

ちなみに、120リットルの音は、JBLだからロックが良いのはあたりまえですが、色気たっぷりの女性ボーカルは絶品です。ショップで38センチのタンノイと比較試聴しましたが、両者は語り口が違うだけで、同格の音がしました。そして、意外なのはシンフォニーに聞き惚れてしまう事です。驚くぐらいクラシックが良いのです。

しかしJBL・LE8T-Hは、JBLと言ってもリズム系が引っ込んだ音がします。この辺りは後ほど書きたいと思います(別項にあり)。

120リットル箱も手放してしまったので、小型の他のスピーカーに浮気し、何年か中断することになりましたが、やがて、知人から(前面の組格子が芸術的な)SANSUI SP-LE8TmkIIの箱だけを譲ってもらえる事になり、そこに装着して、やっと一生もののスピーカーが完成することになりました。

(追記)

ちなみに…

①に書いた縮こまった音ですが、センタードームの、本来裸電球を思わせる、つるりとして丸い美音が、銀紙を丸めたような音になったことです。

②センタードームの、本来裸電球を思わせる、つるりとして丸い美音が、理想形で出てきたのです。吉田拓郎さんの美声が、のびやかに迫ってきて、私の部屋で歌ってくれているようにさえ感じました。

③一般にスピーカーボックスを自作する時は、ラワン合板が多いのですが、初めて米松合板の音を聴きました。ラワンの響きが「もっさりとしたキメの粗い音」なら、米松は「キメの細かい透明感のある音」がしました。

同時に、一般的にラワンのスピーカーは、「もっさり」感が「低音の線の太さ」感を演出しており、ちょうど良いピラミッドバランスになっていたのに、米松にすることで腰高の音になってしまいがちな恨みを感じました。だから、私はラワンの音を否定はしません。

つまり、箱の設計を同じにしたままで、単純に材質を変えると、必ずしも成功するとは限らないのです。

回路でも同じで、どこか一つのパーツを変更すれば、音は変わりますが、全体のバランス上はどうなのかという問題は、また別かもしれないのです。

それから、裏蓋を開けて、120リットルの箱の中身を見たら、補強はありませんでした。当時の私の知識では箱鳴りは悪であり、補強は善でした。ましてや、120リットルの大箱で補強が無いというのは理解できませんでした。

それで、さっそく棒で補強したら、低音が出なくなってしまったのです。気配に近いような超低音が出ると思っていたのは、箱鳴りでもあったのです。しかし、米松合板の箱鳴りはラワンとは違って澄んだ音がするので、美音に聴こえていたようです。

あわてて補強した棒を外し、元に戻しました。

門外漢からみれば、「最初からSANSUI SP-LE8TmkIIを買えば遠回りせずに済んだのに…」と思われるでしょうが、それでは経験できないようなことを学んだと思っています。

ちなみに、昔よく行っていたオーディオショップでは、店長が惚れた10センチ2ウエイスピーカーを、色々な箱に移植するという実験をしており、お店に行くたびに違う箱で鳴っていて、箱による、ネットワークによる、音色の違いを勉強させてもらったことがあります。今思えば、あの最終系を譲ってもらえれば良かったと思います。今私のデスクトップで鳴っているのは、あれと似てなくもありませんから。

テクニクスのSL-1700と1万円のレコードプレーヤーで、1万円の実力に驚いた日

2022.1023

時もCDの時代に入り、集めたLPを売り払った私は、箱が崩れてきた一生もの・レコードプレーヤーを分解し、パーツも売ってしまいました。

しかし、LPの中には思い出深いものもあり、青春の記念に買い直したくて、中古レコード店を回るようになったのです。そうやって、何枚か手に入れることが出来ました。

でも、そんなLPを眺めていると聴きたくなるものです。だからミニコンポに付けるような1万円ぐらいのレコードプレーヤを買いました。当時、あるオーディオ評論家が、「その手のレコードプレーヤーの方が音が良い」旨、オーディオ雑誌に書かれていたのも、後押ししました。(私の記憶違いでなければ)ベルトドライブであること、ターンテーブルがプラスチックであること、などを理由に挙げていました。スライダックで電圧を下げるとさらに良いとの事でした。

これらは一般的なオーディオ常識とは反する点もあるようですが、ローファイ好きの私には、一般論は気になりませんでした。そして、記事の製品はデノンだっかかもしれませんが、私が買ったのは、たまたま店にあったソニーです(だから上記の条件を全部満たしたかは分かりません。電圧も下げていませんし、ターンテーブルは金属だったような記憶です)。

買ってみて分かったのですが、音は悪くありません。しかし「一生もの」を使っていた身には、(失礼ながら)趣味の道具としての魅力が乏しいと感じたのです。感覚としてはプラモデルに近く、値段相応に感じたことも確かです。

それで、中古ショップに行き、追加で、たまたまあったテクニクスのSL-1700を買いました。このシリーズには珍しいオートリターンが決め手でした。(商売を抜きにして)店員さんも「趣味の道具の考え方」に対して、私の気持ちと似たものを持っておられるようでした。カートリッジにはLPを売り払った頃にバーゲンで買った(当時の空気は「LPの終末期」)、オーディオテクニカのAT150Eaだったような記憶です。

このような経過で、一時期、わが家には2台のレコードプレーヤーがあったのです。当然聴き比べましたが、大型スピーカーで試聴しなければ、両者にそんなに大きな音の違いは無いように感じました。それどころか、ローファイ好きの私には、ソニーの方が、あまり緊張感を感じない、好みの音だったのです。

SL-1700の方は、カートリッジとヘッドシェルをつなぐリード線を銀線に替えました。カートリッジも違いますし、リード線のせいもあってか鮮明な音がし、シンフォニーがきつく感じました。好みでは、もっと穏やかに鳴って欲しいので、(きっとリード線のせいもあるから)普通のリード線に戻したいと思いました。つまり、倒錯ですが、SL-1700の音を、1万円のソニーの音に近づけようとしたわけです。

しかし、リード線はすでに捨てた後であり、ショップで「普通の、音が余り鮮明でない、普通のリード線ありますか?」と尋ねるのも、なんなので、そのままにしました。ネットでも探しましたが、「音の良い製品」ばかりで、「普通の製品」は見つけるのが困難でした。

( 昔、オーディオショップで「ダイナミックレンジ(音量の大小の幅)が小さなCDプレーヤーはどれですか?」と尋ねて、店員さんから怪訝な顔をされた事を思い出しました。CDの売りは「ダイナミックレンジの大きさ」だからです。

しかし、ダイナミックレンジが大きいと、夜間小さな音でシンフォニーを聴くとき、ピアニシモが聴こえなくなり、音量を上げると、フォルティシモで近所迷惑になるのです。

あるいは、走行音の中で聴くカーステレオなどは、ダイナミックレンジを圧縮して、ピアニシモの音量を上げないと、走行音で聴こえなくなるのです。そして、入門機など、一部のCDプレーヤーは、カタログデータとは違い、聴感上では、ダイナミックレンジの小さな製品も存在するのです。私はそれが欲しい。ちなみに、一旦ノートPCに録音したものを聴くと、ダイナミックレンジが小さくなっているようです。)

若い頃から私はLPをカセットに録音し、カセットばかり聴いていました。手軽だからです。やがて今回もLPは聴かなくなりました。もうわが家にカセットデッキは無いので、CDを聴くことになりました。いや、一番好きなのはラジオですね。今なら9割以上ネットラジオを聴いています。チューナーは大きなアンテナを上げないとノイズが多くて困ります。カーラジオはロッドアンテナでFM放送がきれいに入るのに、家庭用のチューナーは大型アンテナを上げないとノイズに悩まされるのは、謎です。

年月は流れ、やがて、引っ越しの時期になり、オーディオ製品は、全部売ってしまい、手元にはLPだけが残りました。

(追記)2022.10.24

オーディオ製品を全部売ったのは、引っ越し先の環境がオーディオには適さないと思ったからです。

しかし、たまにはLPも聴きたいし、小型オーディオにすれば出来る部分もありそうなので、再び模索を開始しています。性(さが)ですね。

レコードプレーヤーは引っ越し直後にオーディオテクニカ  AT-LP60X RDを確保してあります。でも、3年たってもまだ開封していません。

開封してもいないのに、さらに良いレコードプレーヤーを買おうかとの気持ちも湧いてきました。

いつかのデジャブのようです。

しかし、部屋が狭いので、本箱やCDラックも置くところが無く、8割のCDを押し入れにしまったままなのに、この上、LPとかオーディオ機器とか、増殖したらこまるので、困っています。

一生もの・レコードプレーヤー(私なりの)を作った話

2022.10.20

オーディオにはお金がかかる事を知った私は、20歳ごろに「釣りはフナに始まりフナに終わる」という格言を思い出し、まだ「最初のフナ」を釣ったばかりなのに、途中を飛ばして、いきなり「最終系のフナ」に相当するオーディオを手に入れることで、散財を防ごうと計画しました。

その「終フナ」プラン、最初はレコードプレーヤーです。

ターンテーブルは放送局の血を引くデンオン(現「デノン」)のDP-1000。( もっと上がありますが、とりあえず、このぐらいでと思いました。以下同文。 )

トーンアームはマイクロのMA-202。高性能だけでなく、見ているだけでも酒が飲めるセクシーな逸品です。

カートリッジはテクニクスの205CⅡ。これをグレースのヘッドシェルにネジで取り付け、ヘッドシェルと繋ぐリード線にはPCOCC(銀線だったかも)を使いました。

そして、カートリッジ本体(交換針の部分を除く)の周囲をセメダインコンクリメントで固めて防振し、カートリッジを持ち上げる指当ても振動を恐れて取り外しました。さらにヘッドシェルとトーンアームの接合部分のゴムパッキンも振動防止で取り外しました。これらカートリッジの工作は、当時有名だったNさんというオーディオ評論家の手法を参考にしました。

新品のカートリッジのデフォルトの音を確認する事もなく工作したので、どのように音が変わったのか体験していません、しかし、今までの経験から言えば、あれほど防振すれば、良し悪しは別として、締まる方向に変わらない方がおかしいと思います。確かにクリアーな音がしました。でも、メーカーの意図した音ではないと思います。さらに、今思えば、締まり過ぎた音は、私の好みでも無いのですが。

MA-202に付属の純正ヘッドシェルではなく、他メーカーの、厚さ4ミリぐらいあるぶ厚い金属を、L字に折り曲げただけの武骨なヘッドシェルを使ったのは、純正ヘッドシェルは余りにも美しいから加工できなかったのです。

上記のパーツを装着する箱(ケース)には、これもNさんが使っていたような、「積層合板をくり抜いたものを、何枚も重ねて箱状に厚くしたもの」を作りました。ただの箱よりも重いですが、丈夫なので防振対策が期待出来ます。しかし、本当はべニア板で作るのですが、自宅にパーチクルボード(おがクズを接着剤で固めたもの)があったので、それで代用したら、当初は頑丈でしたが、後年、経年変化で接着剤が劣化し、指でボロボロ崩れるようになってしまいました。

ダストカバーはデンオンの完成品レコードプレーヤーの補修部品を買いました。

レコードプレーヤーの足には、オーディオテクニカのインシュレーターを買いました。

前述したように、後年、箱はボロボロに崩れ、時もCDの時代に入りましたので、集めたLPを売り払った私は、レコードプレーヤーも分解し、パーツを売ってしまいました。しかし、そうでなければ、改造を加えながら、今でも使っていたと思います。

(追記)

(試聴結果) ①「一生もの・レコードプレーヤー」と、②「CECのBD-3000」の音を比較します。

②では(針先を曲げたせいで)少しギラついていた音が、①では淡白、かつクリアーになりました。そして、サラサラとした感触にもなったのです。淡白、クリアーはカートリッジのせいで、サラサラとした感じはベルトドライブからダイレクトドライブにしたせいだと思っています。

又、ダイレクトドライブにしたことで、例えばバイオリンの音がゆれたとき、それが回転ムラによるものか、演奏者のビブラートなのか、といった心配が無用になった事です。( 普通はベルトドライブでもそんなに大きな回転ムラはありません。私の「CECのBD-3000」もそうです。「ピー」という発信音を録音したテストレコードを使って試聴しましたが、回転ムラは感知できませんでした。)

ところが、近年では「ダイレクトドライブにも特有の回転ムラのあるものがあり、どちらも回転ムラがあるなら、ベルトドライブの方が音が良い」、みたいな考え方もあるようで、ベルトドライブ再評価にもなっています。

ちなみに、安価なレコードプレーヤーの場合は、回転ムラ以前に、回転速度が微妙に合っていないものも散見するようです。音程が変わってきますが、絶対音感を持っているような方でなければ、あまり問題化しないと思いますが。

そして、一番感動したのは、盤を傷つけてしまい、②ではそこで針が飛んで何回も同じ演奏を繰り返し、曲が前に進まなくなってしまったLPが、①では、小さく「ぷつん」と鳴るだけで音楽が継続された事です。使えなくなったレコードが使えるようになったのです。この差は天と地ほど大きいです。これはアームのせいだと思いますが、針先が曲がっていないせいでもあるかもしれません。微妙なところです。

CECのBD-3000・レコードプレーヤーの曲げた針で音楽を楽しんだ日々

(2022.10.19)

やがて、私が手に入れた2代目のレコードプレーヤーは、ベルトドライブのCECのBD-3000で、こちらは新品を買いました。20歳前後の事です。

しかし、買ってきて、セット途中に、誤って針を曲げてしまったのです。

あわてて指で元に戻しましたが、針は「少しシワのよった紙ストロー」みたいになってしまいました。正面から見るとわずかに針も斜めになっていました。

しかたなく、そのままレコードを演奏してみると・・・鳴りました。針を曲げる前の音は知りませんので、比較のしようがありませんが、私のイメージの中では、鳴らすと「フォークギターの、少し錆びたスチール弦」が見えました。歪を錆として認識したのでしょう。今思えば、それは共感覚だったのかもしれません。共感覚は50代になるまで自覚しませんでしたが。

ターンテーブル上のゴムマットの一部も、不良品のように少し膨らんでいました。レコードを載せるとそこだけ数ミリ持ち上がるような気もしました。もしかしたら、アイロンで熱を加えれば治ったのかもしれませんが、私は「山の部分を切り取ろうか、でも、みっともなくなるな」と、いつもそう思って眺めていました。

トーンアームは金属製のカッコ良いもので、免税電蓄に多い合成樹脂製のものとは違って、いかにも本格的なデザインをしており、そこに私は惚れていました。世の中にはトーンアームを眺めて酒が飲める人もいるようです。

(追記)1年間ぐらい使ったところで、このレコードプレーヤーには、又、災難がありました。

母がタンスの上の荷物を取ろうとして、誤って落とし、ダストカバーに長さ30cmほどの割れ目を入れてしまったのです。

しかたありません。あきらめました。

その数年後、このレコードプレーヤーもグレードアップする時期がやってきました(この話はまた後日)。

その時、手放す前にと、付属品だった予備のレコード針で聴いてみました(当時の私は、ごちそうは最後に食べる性格でしたから)。

そうしたら、素直な音がしたのです。曲がった針ではギラついていた音が、品よく、キラキラし始めました。あのギラつきは歪だったようです。

比較して初めて分かった本当の音でした。


免税電蓄を改造し、ゲルマニウムラジオとつなげた少年の日

(2022.10.18)

上部の写真のような、いわゆる免税電蓄が、学校外でのレコード初体験なのかもしれません。叔父さんの家でハワイアンを聴かせてもらいました。

それは暑い夏の日、赤い透明なLPレコードでした(ソノシートではありません)。

あの情景とスチールギターの音色は忘れられません。雰囲気たっぷりの美音でした。後年、ハワイアンのCDを買って聴くこともありましたが、味わいが違うのです。

「夏の日」の1~2年後、叔父さんから電蓄をもらいました。今にして思えば、結婚で引っ越すためでもあったのかもしれません。

当時中学生ぐらいの私は、ベニヤ板で作った箱に、電蓄の内臓を移植しました。そして、持っていたゲルマニウムラジオも内蔵し、切り替えスイッチで、電蓄のアンプにつながるようにしました。ゲルマニウムラジオのアンテナは、内部で電灯線アンテナとしました。少しアンプとラジオの電気的整合の心配はしていましたが、それよりも興味が先立ちました。

そうやって作ったラジオ付きの電蓄は、それなりにラジオの音も鳴ったのです。なにか大発明でもしたような、楽しい時間でした(改造は自己責任でお願いします)。

トランジスタアンプを作って実体配線図に迷った1年間

(2022.10.15)

10代の頃にトランジスタアンプも作ったことがあります。昔は、弱電関係が好きな青少年を「ラジオ少年」と呼んだようですが、私もその一人で、ラジオやオーディオ、アマチュア無線の記事が載った雑誌を、毎月楽しみにしていました。

もちろん真空管アンプの記事もありましたが、トランジスタアンプに比べて部品代が数倍したので、買えなかったのです。その当時の記事に載っていた真空管アンプのデザインや構成が、今、私が持っている6L6系中華真空管アンプに似ているので、懐かしい気分もしています。

脱線しましたが、話しをトランジスタアンプに戻します。

それは5W+5W程度のアンプでした。本当は真空管アンプのように金属シャーシーに組むのですが、加工道具も含めて高いので、無理を承知で、べニア板で作った箱に入れました。

キットではないので部品を一括で買う事は出来ません。部品店に行き、一つ一つ集めました。(失礼ながら)キットで一括で部品が手に入ってもあまり嬉しくないのに、部品店で一つ一つ集めるのは苦にならないどころか、楽しい時間なのはなぜでしょう。

そうやって集めた部品で作りました。

ところが、完成しても音が出ないのです。

配線間違いかと思って、何回も、何回も点検しましたが、間違い箇所が分かりません。

普通は1~2日で見つかるものですが、どうしても分からないのです。疲れ果て、とうとう、あきらめてしまいました。この時の落胆はとても大きいものです。

それから、一年たちました。

すると、似たような製作記事がまた掲載されたのです。古い雑誌と見比べてみましたが、やはり同じ製作記事です。こんな事もあるんだと思って、実体配線図を注意深く見比べてみましたら、一か所配線が変わっていたのです。素人の私は回路図ではなく実体配線図を見て作ります。現代ではほとんどが写真なので誤記は無いはずですが、昔は手書きが多かったので、まれにあったようです(後から気づきました)。

「あっ!」と思って、押し入れから引っ張り出したアンプを修理してみました。

そうしたら、音が出たのです。

この時の喜びを、何と表現したら良いのでしょう。

でも、出版社も間違いが分かった段階で、もっと早く訂正のお知らせを載せなかったのでしょうか。いや、きっとそうしていたのでしょう。私が見落としたに違いありません。毎月立ち読みしても、毎月買うとは限りませんでしたから。同類の本は2~3種類あり、立ち読みして、どれか一冊だけを買っていたのです。

でも、やっと完成したそのアンプを使う期間は、長くありませんでした。

やがて、就職すると、すぐに給料でオーディオを揃え始め、手に入れた一流メーカーの評判の良いトランジスタプリメインアンプと比較試聴して、自作トランジスタアンプは引退することになりました。

そんなに高いものではありません。オンキョーの「インテグラA-755」という、グリーンメタリックのボディが美しい普及品のアンプです。しかし、ラジカセとミニコンポほどに、自作品とは音に違いがありました。自作はゆるい音がしていたのに、インテグラは締まったハイファイで、私にとっては未体験ゾーンでした。今思えばゆるい音には「ゆるい」という長所があるのですが。

真空管アンプの音を聴いてみる

2022.10.13

真空管アンプ 聴き比べ 3極管接続 ウルトラリニア接続 5極管接続 KT88 LE8T-H

キットを作る段階で、回路が好みで変更できるのですね。違いが分かりますでしょうか。どれも良いですが、大人しいけれど一番ハイファイは①で、ハイファイ好みの人はこれを選択するでしょう。元気の良いのが②で、使いやすい一般向けでしょう。線が太くローファイ好みのホッとする音は③だと、私には聴こえます。もちろん③が好きです。スピーカーもアートですね。最高です。

オーディオ視聴動画 真空管アンプ 6L6GC シングルアンプ よくみる真空管アンプ聞いてみた。1

私の6L6系中華真空管アンプはこの方のアンプに似ています。姉妹品かもしれません。癒される良い音ですね。左奥にある真空管が整流管だと思います。ACの交流を直流に直す役目をしていますが、現代の普通の家電製品では半導体のダイオードを使っているので、現代において整流管は非常にマニアックです。比較試聴したことはありませんが、音は整流管の方が良いと言われています。

カートリッジ比較 [DENON DL-103] vs [SHURE M44-7] No.1

余談ですが・・・このようなシビアな比較試聴をすると、放送局用の優等生的だと言われるDL-103と、DJユースの元気な血を引くM44-7が、私には、ほとんど同じ音に聴こえてしまいます。でも、良く聴けば、ごくわずか、DL-103はカラリとした音で、M44-7には粘りがあるように聴こえます。どちらを買っても後悔しなさそうですが。

真空管アンプの音色は、トランジスタアンプと比較試聴すると分かる

2022.10.13

真空管アンプは音がやわらかいとか、鮮明だとか、音の輪郭や感触の話が、良く語られています。それも、もちろん大事ですが、忘れてはならないのは音色です。

20代の頃、オーディオショップでの話です。知らないメーカーの、(多分)6CA7シングルアンプで、JBL・LE8T-Hを鳴らしていました。しばらく聞き惚れていたら、店員さんが一流メーカー製の安価なトランジスタアンプに切り替えたのです。

私は声を上げそうになりました。それぐらい音色が違ったのです。良い悪いではありません。個性の違いです。例えが適当ではないかもしれませんが、真空管がセピアカラーの白黒写真なら、トランジスタは文字通りの冷たい白黒だったのです。音が貧血になったように感じました。

セピアカラーになった理由は、真空管アンプ独得の、心地い良い歪が付加されたからでしょう。一方、トランジスタアンプの一般的な姿として、「低歪=hi-fi」としていますから、セピアカラーにはならないのでしょう。

同様の経験は、コロナ過の前に、友人宅で比較試聴した時にも感じました。やはり、声を上げそうになるほど違ったのです。

そして、セピアカラーの歪み成分は、多極管である6L6・6CA7・6BM8などを使ったシングルアンプの音に、多く含まれているように思います。私が欲しいのもそれなのです。私は真空管をエフェクターだと思っています。

6CA7シングルアンプ「Unison Research Simply Two」に「終の棲家」を思った話

2022.10.13 

完成品の真空管アンプも買ったことがあります。イタリア製・6CA7シングルアンプ・「Unison Research Simply Two」です。この製品は、デザインもアートですが、音色にも輝きがあり、馬力もあって、良く歌うアンプとして有名でした。

今ふり返れば、終の棲家として、もし一台選ぶなら、このアンプになるかもしれません。このアンプと暮らせば幸せになれるかもしれない、そんな気がします。

でも、当時、夜間など、極小音量まで音を絞ると、方チャンネルの音が消える事があったのです。いわゆるギャングエラーという現象です。これは故障ではなく仕様なのでしょう。そんなに珍しい事ではありません。

この対策のために、外付けのボリュームBOXを自作しました。二つのボリュームで絞れば、あまりギャングエラーは起こらないと思います(安価なボリューム付き入力セレクターも市販されています)。あるいは、安価な中華真空管プリアンプを導入しても良いかもしれません。ボリュームが二つになればよいのですから。

現在の私が6L6シングルアンプをいじっているのは、潜在的には、手放してしまった「Unison Research Simply Two」の、幻影を追いかけているのかもしれません。

ウエスギ・6CA7プッシュプルアンプで登山を思った話

2022.10.13

300Bシングルアンプを作った数年後に、ウエスギ・6CA7プッシュプルアンプキットを作りました。管球王国という真空管アンプ専門誌で配布されていた、期間限定キットの中の一種類です。上杉さんというのは、優れたオーディオ評論家であり、真空管アンプ作りの名人です。

部品代だけでも20万円ぐらいしました。完成品なら2倍ぐらいの値段になってもおかしくないでしょう。しかし、丁寧に書いてありましたが、製作方法が本の記事だけなので、どうしても市販キットのような細部の説明が不足しがちなのです。未熟な私は、かなり手こずりました。同じキットでも本の記事版というのは上級者向けらしい事を後に知りました。なので、雑誌を拡大コピーして実体配線図を見やすくし、仕事のない週末を使って、少しずつ作り、1年ぐらいかかりました。

そうやって、やっと音が出たのですが、まるで高級トランジスタアンプのようなハイファイ音でした。ウエスギアンプの特徴として、癖の無さが挙げられているようですが、まさに天然水を思わせるような美音でした。「真空管アンプとトランジスタアンプは、登山に例えると、上るルートが違うだけで、頂上は同じになる」とも言われます。つまり、ハイエンドに近づくと両者の奏でる音は似てくるのです。そんな話を思い出しました。

しかし、その音色を十分肯定したうえで言えば、むしろ私は、登山道の入り口にある真空管くさい音が、ハイファイよりもローファイが好きなので、(失礼ながら)あまり馴染めなかったのです。これは300Bの透明感に馴染めなかったのと似ています。私は真空管を「入り口に留まるためのエフェクター」として使いたいのです。

6BM8シングルアンプで「無人島に一台」を思った話

2022.10.13

2A3シングルアンプを作る1年ぐらい前には、エレキットのCDジャケットサイズ・6BM8シングルアンプキットを作りました。これが私にとっての真空管アンプの先遣隊です。

6BM8はウインナーのように小さな真空管です。確か、アンプのパワーも0.7W+0.7Wしかありませんでしたが、そこは馬力のある真空管、普通のスピーカーを使い、デスクトップで静かに聞く分には問題ありませんでした。

音色も、高音と低音のバランスが取れているので、帯域には違和感は感じませんでしたが、出力トランスが小さいせいか、良く聴けば音はナローレンジでした。しかし、私はワイドレンジよりもナローレンジの音が好きですし(FMよりAMの音が好き)、真空管らしい艶と、歯切れの良さもあって、とても好印象を持ちました。小さくて、片手でも持てる真空管アンプなのに、音も良いので、無人島に一台もっていくなら、この系統のアンプにするかもしれません。

2A3シングルアンプでオーディオの錯覚を思った話

2022.10.13

300Bシングルアンプを作る数年前に、エレキットの2A3シングルアンプキットを作りました。当時は仕事に神経をすり減らしており、寝る前に聴くスモーキーな2A3シングルアンプの音色に癒されていました。

300Bシングルにデジタルアンプのような透明感があるとしたら、2A3シングルには紗のかかった写真のような雰囲気があったのです。私は透明感よりも紗に惚れました。これは嗜好の問題です。優劣の話をしているのではありません。

私はもっと2A3シングルアンプの音を良くしようと、オーディオ本に載っていた改造を試みました。それは、電源回路の電解コンデンサーに、並列してフィルムコンデンサーをかませるというものです。フィルムコンデンサーにより、ノイズが低減されるという話でした(電源回路は特に危険です。改造は自己責任でお願いします)。

早速改造を試みました。そして、音を出して唖然としたのです。紗が消えていました。オーバーに言えば、2A3シングルが、300Bシングルのような透明感のある音を奏でていたのです。確かに音が良くなったといえば、良くなったのでしょう。しかし、紗に惚れていた私には受け入れられません。すぐに改造を個所を元に戻して、ホッとしました。しかし、同時に、私が惚れていた紗とは、電源回路から発生するノイズでもあったのかもしれないと、複雑な心境になってしまったのです。

NFBの帰還量を調整する実験もしました。少なくすると鮮明な音に。多くするとスモーキーになりました。

又、別の実験もしました。当時使っていたアナログ・トランジスタアンプも使い、切り替えスイッチで、比較試聴をしたのです。最初は違いが分かりました。当然だと思いました。

しかし、両アンプの音量をまったく同じにすると(とても大事なこと)、やがて、スイッチを切り替えている私にも、スイッチを見なければ、どちらのアンプが鳴っているのか分からなくなったのです(スピーカーの比較試聴の場合は、アンプのボリューム位置ではなく、能率に差があるスピーカーの音量を同じにした上での、ブラインドテストが大事)。

二つの、まったく違う構造のアンプが、私には同じ(そう聴こえる)音を奏でている。違いがあったとしても私には無視できる許容範囲になる。オーディオの試聴には錯覚的要素もある事は認めていましたが・・・以来、少しオーディオという世界から覚めた感もあります。

その後、何年かの後、紗のかかったような2A3シングルの音にも、高音にだけは発泡スチロールをこすり合わせたようなヒリヒリする硬質感を感じるようになり、私は苦手に感じ始めました。某国の2A3の一部には、そのような音を出すものがあるらしいと、後にオーディオ雑誌で同様な感想を述べている記事を見つけました。逆に言えば、他の2A3に交換すれば、そのような音はしなくなるのでしょう。


300Bシングルアンプでウエスタンとセトロンの試聴をした話

2022.10.12

私は①ウエスタンの300Bの(確か1958年製)の新品を一組持っていました。30年ぐらい前にオーディオショップで見つけ、真空管アンプに興味を持ち始めたばかりの頃だったので、興味津々で、とりあえず確保しておいたものです。値段はワンペア20万円ぐらいだったと思います。

真空管は今やほとんどが輸入品なので、ひとたび戦争等があると、死活問題になる食料は輸入されても、嗜好品の真空管は入ってこなくなってしまうのでは、という杞憂で、新幹線で東京の真空管専門店まで出かけ、同時期に②セトロンの300Bも何ペアか買いました。値段は忘れましたが、セトロンはウエスタンよりも何割か安かったはずです。

それから5年ぐらいの後、サン・オーディオの300Bシングルアンプキットを買い、作って、300Bの比較試聴をしたことがあります。試聴して意外だったのは、②が陰陽の陽、張りと明るさのある元気な音色なら、①は陰陽の陰で、驚くほどほの暗かったことです。知らない人にブラインドテストをしたら、おそらく多数が②を選んだと思います。③LS3/5aという有名なBBCのモニタースピーカーがあります。あのスピーカーもほの暗い音色です。ブラインドテストをしたら、何分の一かで買えるような国産のスピーカーを選ぶ人が多いと思います。つまり、①と③は同系統の音色だと思いました。

もちろん、①③とも、じんわりと心に沁み込むような魅力があるのでしょう。だから、人気が衰えないのかもしれません。でも、試聴せずに有名だというだけで買ってしまうと、自分の好みとは合致しない事もあるかもしれません。

その後、思うところあって、そのアンプも、その真空管も手放しました(だから冒頭に「確か1958年製」と書いたのです)。これを書きながらふと思ったのですが、本来プロ用であるウエスタン300Bを鳴らすスピーカーは、劇場用のアルティックA7などが想定されていたのだと思います。アルティックがカラリと明るい音色なら、ウエスタン300Bがほの暗くても、ちょうどバランスが取れていたのかもしれないと、夢想しました。

300Bに興味を失ったわけではありませんので、又、トライするかもしれませんが、とりあえず過去の記録として書いておきます。


6L6系 中華真空管アンプの導入記 ①

2022.10.11

これは、何か月にもわたって今週までのパレットに書きためた、6L6系・中華真空管アンプの日記のような導入記録を、抜粋・加筆再掲したものです。文章の再構成まではしてありませんので、話が前後したり、分かりにくい部分もあるかもしれませんが、ご容赦ください(日付の無い部分は、別の日付の可能性もあります)。

(2021.5.12)

懸案だった真空管アンプが、やっと注文できました。

ネット時代は情報が豊富で、悩みだすときりがありません。まるで迷宮です。でも、いつまでも迷っているわけにはいきません。体力を消耗するからです。(真面目な話)本気で悩むと、それこそ病気になりかねませんから。

真空管アンプは、音色の他、値段、修理の容易さ、真空管の入手しやすさ、にも重きを置いて選びました。

聞いたことのないメーカーの輸入品をネットなどで買う場合には、修理を考え、(失礼ながら)最悪使い捨てにしても良い値段を上限としました。

(2021.5.13)

今は半そでのシャツ一枚で座っています。薄着でいることを忘れていました。それぐらい暖かいです。5月なのに、明日は気温が30℃になるとか。

せっかく真空管アンプを注文しても、6月の中頃にしか自宅に届かないし、ほとんど秋10月まで使えそうもありません。夏の間は普通の(アナログ)トランジスタアンプでさえ、暑くて使いたくありませんので。

それで、夏用に、ほとんど発熱しない安価な中華デジタルアンプも買いました。これは届きましたが、まだ開封していません。デザインもユニークで、あちこちで評判も良さそうな製品ですので、ご存じの方も多いと思います。

デジタルアンプをご存じない方もいらっしゃると思ますが、この製品に限らず、嘘のように小さいくせに、高性能であり、大型スピーカーも楽々とドライブし、廉価版でもブラインドテストで高級アナログアンプに勝つことがあります。(誤解を恐れずに言えば)いわゆるハイファイっぽい音というか、オーディオ的爽快感が容易に出せます。

しかし、映画でもデジタルよりもフィルムの方が味わい深いように、真空管と比べると、一般に味わいが淡白のようですし、デジタルノイズ云々という話もあります。

ところで、私が注文した真空管アンプは、数年前に買おうと思った商品の姉妹品です。当時、買おうと決心した時には売り切れになっていました。しかし、現在でもキットと完成品が、引き続き売られているようです。

国産メーカーに比べ、買った人はあまり多くはないかもしれませんが、評判は悪くないようです。現代では非常に個性的なアンプになってしまいましたが、私が小学生頃の真空管ラジオを、後ろから覗いた内部のようなデザインと構成で、私には郷愁を感じさせるものです。

しかし、この種の輸入アンプには、一部の商品に底蓋が無い仕様のものもあるようです。その場合には感電の危険が普通の製品より多いので、一般向けではないと思います(特に子供さんがいる家庭には)。

追記

この種の製品は、昔ながらのゆとりある構造で、値段も安いせいか、使用部品も「?」と思うほど少ないことがあるのです。

ですから、故障時には電気の知識がほとんどない私でも修理できる可能性があります。部品を見て、焼け焦げていたり、膨らんでいたりしたら、たぶん異常であり、それを交換すればよいのです(修理には感電や火災の危険が伴いますので自己責任でお願いします)

緻密で複雑な回路の場合は、技術的に異常個所の発見が困難であり、機械的に部品交換も困難なのです。使い捨てにしても良い値段で、自分でも修理が出来そうな本機は、おじさんのオモチャに丁度良いと言っては、メーカーさんに失礼かもしれませんが。

参考 ( 真空管ラジオ オイカワST管 | 気ままに無線 )

先日、とりあえず注文した安価な輸入真空管アンプ(完成品)、これは今回のミッションの先遣隊(サンダーバード1号)のようなものです。

これで新しい道が開ければ、本隊(サンダーバード2号)である、少し高級な真空管アンプも買うかもしれません。

その場合の現時点での候補をご紹介します。

これ以外は良くないと言っているのではありません。こってりしたものを食べた後は、さっぱりしたものを、さっぱりしたものを食べた後は、こってりしたものを食べたくなるように、これは現時点での私の食欲の傾向であり、後日変化する可能性もありますし、皆さまの好みと一致する保証もありません。

その上でお読みいただきたいのですが…

まず、「  トライオード 真空管プリメインアンプキット TRK-3488  」。(真空管は2種類ありますが「EL-34」仕様の方です。)(半完成の)キットで、ハンダが出来れば素人に近い人でも作れそうですし、万一失敗しても、有料でメーカーが直してくれます。トライオード創立15周年記念の商品であり、それだけメーカー側が思い入れのある商品です。

音色は、ネットで聴いた範囲では、スモーキーでオールドファッションな雰囲気の音です。今となっては(貴重な)、古き良き時代の真空管の音色を、あえて今に伝えた設計かもしれません。私はその傾向の音色が好きなので、輸入品の安価な類似品を注文しましたが、国産の高信頼商品の中から選ぶならこれになるかもしれません。

キットは面倒だという方には、少々高価になりますが、完成品もあるようです。

二つ目は、「 トライオード Luminous84 」。

試聴すると、まれに試聴であることを忘れて「しばし聴き惚れてしまう音」があります。私にとっては、このLuminous84がそうでした。鮮明でありながらも透明な蜜がかかったような美音、トランジスタとは一線を画します。ここには現代の真空管アンプの音の、一つの回答があります。あまりツボにはまりすぎてしまい、冒険が出来ない恨みは、先に注文した安価なアンプで晴らすとして、現時点では、安住の地というか、帰る場所は、Luminous84とTRK-3488であるような気もします。

追記

しかし、トライオードの売れ筋商品はプリメインアンプの RubyとPearlかもしれません。(ネットで見る限り、なぜか消費電力が若干違うようですが)通説では両者は単なる色違いですので、好みのカラーで選べば良いと思います。

ちなみに、Luminous84とRuby・Pearlは同じ6BQ5という出力管を使っています。しかしRubyとPearlは、片チャンネル当たり1本使用のシングルアンプであり、Luminous84は、片チャンネル当たり2本使用のプッシュプルアンプなのです。片チャンネル当たり2本使用の方がパワーにゆとりが出るほか、真空管は一種のエフェクターですから、透明な蜜のような倍音も多く出るのです。ですからLuminous84はクラシック系がより効果的に楽しめそうです。

逆に言えば、RubyとPearlは、ニュートラルと言いますか、少しトランジスタアンプ寄りの音になります。しかし共に、現代・真空管アンプの一つの回答であるのは同じです。


@ 先日どなたかに急かされたような気もしましたので、真夏に鍋料理を食べる覚悟で、届いていた真空管アンプを開封しました。

1時間ぐらい通電して、今、ネットで「NHKラジオ らじる★らじる」の「リトグリのミューズノート」が流れています。

このアンプを一言で言えば「6L6系のシングルアンプ」でしょうか。

失礼ながら写真をお借りしますと、この方のアンプと外見上の基本構成は似ています(回路や使われているパーツは別ものでしょう)。しかし、こんなに豪華ではありません。この方のアンプはとても美しい。まるでアートです。これが松竹梅の松だとしたら、私のものはギリギリまで豪華さをそぎ落とした梅バージョンと言ったところでしょうか。

梅バージョンの感想はほぼ想像通りでした。詳しくは後ほど。

(2021.6.10)

6L6系シングルアンプ、通電すると、少しガムテープのような、薬品臭いにおいがしてきました。刺激臭とまではいきませんが、風下に30分もいると少々気分が悪くなってきます。焦げ臭いにおいではありませんので、故障などのトラブルではないでしょう。

私は今まで何台もの日本製真空管キットを作りました。そして、儀式として、完成すると枕元で一晩通電するのですが(自己責任の安全確認、静寂の中でのノイズ確認、一晩問題無ければ、まあ、安心して使えると判断)、一台も臭いにおいなどしたことはありません。ですから今回の、アジア製の輸入品は、使ってある部品が日本製(又は良品)ではないために、このような臭いがしている可能性があります。

どなたかの類似品のレビューにも、同様の臭いがして、何日か使うまで消えなかった旨の話がありましたので、珍しいことではないのでしょう。明日の日中には、窓を開け、扇風機を回しながら、しばらく通電してみましょうか。

追記

過去の経験で言えば、本当に危険なガスは、(真空管アンプとは関係のない)ブレーキフィールドから出ました。

古くなったスピーカーのエッジ(主にウーハー)は経年変化で硬化してくることがあります。ペンキのような塗布材が塗ってある場合には硬化しやすいのです。すると動きが悪くなり、低音が出なくなるのです。

中古品など、古くなったエッジを軟化させるためには、苦肉の策としてブレーキフィールドをぬって塗布材を溶かすと良いと言われています。そして、塗布材をそぎ落とすと、エッジが柔らかくなり、容易に動くようになるので、低音が出るようになります。ネットに情報があります。

その作業を風通しの良い屋外で15分ぐらいしましたら、(シンナーと違い、ほぼ無臭なのに)頭が割れるように痛くなりました。風邪の時の頭痛とは違います。ガラスの破片でも刺さったかのようなズキズキとした痛みです。作業を止めたら3時間ぐらいで治りましたが、あれは危険だと思います。ネットの作業方法を参考にしましたが、不思議なことに、ネットには頭痛の事は書いてありません。もしかしたら、頭痛には個人差があるのかもしれません。私は蚊などの殺虫剤や、衣料品に使うナフタリンの類、そして消臭スプレーでも気分が悪くなります。

しかし、今回のアンプでは、室内で30分ぐらい鳴らしても、そんな頭痛はしませんので、そこまで危険ではないのでしょう。

今、NHK・FMのバロック音楽を鳴らしています。

ノイズはまったくと言って良いほどありません。

弦楽器が美しい。

アナログ・トランジスタアンプとも、デジタルアンプとも違う、真空管らしい、液体のようにしなやかで、艶やかな中音域です。今日は一日通電したいです。風通しを良くして。

@ 6L6系シングルアンプ、300Bや2A3と、音はどうちがうのか。

主に私の感想ですが、300Bはデジタルアンプが一般的になってきた昨今では、むしろデジタルアンプに似た傾向の音色なのです。

デジタルアンプは鮮明すぎて疲れることがありますし、特有の歪を感じるという人もいます。しかし、300Bはデジタルアンプのような透明感がありながら、デジタルアンプでは得難い真空管独得の艶と滑らかさがあるのです。真空管ハイファイの一つの到達点でしょう。しかし劣等生の私には、優等生はどうも…という気持ちが無くもありません。

300Bと2A3の違いは先日書きましたが、300Bが元気な兄なら、2A3は舞妓さんみたいな妹という感じです。2A3はお化粧をしたような、通好みの優しい音がします。2A3で聴くクラシックは最高でしょうが、たとえばサザンを聴こうとすると、軽快感が足りず欲求不満になるのです。意外にソースを選びますので、2A3を手放しました

では、6L6系はどうかと言いますと、中庸の美と言いますか、300Bほどのハイファイを売りにはしていませんし、2A3ほどの優しさも売りにはしていません。ごく普通の音がします。

しかし、私たちが聴き馴染んだ音というのは、ラジカセみたいに、ごく普通の音が多いですから、6L6系の音は、違和感なくす~っと馴染むのです。

追記

私が買った6L6系シングルアンプ、ネット写真では、真空管4本の内3本がST管で1本がGT管でしたが、届いたのは全部GT管でした。レトロな味わいのST管は人気のようですが、もはや品薄なのかもしれません。さらに、私の物がそうでしたが、真空管の名称も微妙に違うもの(たぶん互換性に問題のない球)が付いてくる事があるようです。

安いから贅沢は言えません。

(交流電源ですが)ACコンセントの極性もあるようで、差し込みを反対にしてみると、周波数特性が、聴感上、A方向はドンシャリ(高音と低音が強調される)、B方向はかまぼこ型(中音が充実する)になりました。好みで選択すればよいですが、私はボーカルがより自然に聴こえたB方向にしました。極性問題はオーディオ製品全般に言えそうなことなので、興味のある方はお試しください。

それから、この真空管メインアンプの特徴は、交流から直流へ整流するのに、一般的な(半導体の)ダイオードではなく、マニアックな、昔ながらの整流管という真空管を使っていることです。目の前で両者を聴き比べたことはありませんが、整流管の方がノイズが少なく音が滑らかなのだとか。

また、アンプにそのままCDプレーヤーをつないでも音楽は聴けますが、アンプのゲインが少し低いようで、軽い貧血気味というか、少しだけ音の勢いが少ないようでした。

なので、別に買ってあった真空管プリアンプをつないだら、貧血は全快し、パワフルで、厚みがある音になりました。5,000円ぐらいの物ですし、やはりプリアンプはあった方が良いです

追記2

以下は、先日ご紹介した、私が良く使う試聴ソフトです。

女性ボーカルが、眼前で血の通った小人が歌っているかのように、理屈を超えてゾクゾクさせてくれるか。

そして、若い頃にギターに親しんでいた私に、青春時代を思い出させてくれるような、リアルな生ギターが聴こえるか。

その辺りが聴きどころです。

まだ、真空管アンプのエージングが済んでいないのでいけませんが、①アナログ・トランジスタアンプ ②デジタルアンプ ③真空管アンプとします。

②と③には真空管プリアンプをつないで試聴しました。

その結果、

ギターが良いのは②>①>③の順です。

デジタルアンプのギターは生々しいです。しかし真空管アンプのギターは、ムードはあってもラジオのようでリアルではありません。

ボーカルが良いのは①>③>②の順になりました。

アナログ・トランジスタアンプは特性が良いうえに、質感がナチュラルです。

反対に、鮮度は高くとも、やはりデジタルアンプに血を通わせるのは難しいようです。

総評をすれば、一台だけなら①でしょう。

しかし、音色が深情けの真空管アンプは捨てがたいですし、真夏に涼しいデジタルアンプも便利です。

「 エイリアンズ / キリンジ / 森恵ギター弾き語り(COVER)〔#011〕 」など。

追記3

今日は窓を開け、朝から12時間ほど通電しました。昼頃に散歩から帰ってきても、部屋が特別臭いとは思えませんでしたので、臭いは大変少なくなったようです。念のため明日も12時間通電しようと思いますが、それでほぼ消えそうです。安心しました。

こんなアンプでも、12時間つけると、オイルヒーターみたいに輻射熱で部屋が暑くなります。ベランダに出ると外気が冷房みたいにヒンヤリ。やはり、夏に真空管アンプは難しい。


(2021.6.12)

@ 「 【 JUNNA 】 I Was Born To Love You / Queen - Drum Cover 」

EL34(6CA7)と6L6系を比べると、前者は理性的で、後者は情熱的、あるいは暴れん坊とも感じました。

追記

あるいはEL34(6CA7)

と6L6系

追記2

オーディオ好きの常識は、そうでない人には通じないかもしれませんので申し添えます。

「EL34(6CA7)の音は良くて、6L6系の音は悪い」、と誤解される方があるかもしれませんが、そうではありません。技術的に何が起こっているのかは分かりませんが、「前者は理性的で、後者は情熱的な表現だ」という意味なのです。もちろん、球だけでなく、回路でも音色が変わるのは承知したうえでの話しです。

他に似たような例を挙げると、マニアは常識で「イタリアのスピーカーはよく歌う」とか申します。技術的解説として「良く歌う」とはどういうことなのか、私は知りませんし、イタリアのスピーカーの神髄を味わったこともありません。

でも、森恵さんの歌を聴いて、ぐっとこみ上げてくるものがあり、思わず涙ぐみそうになったのは、「EV エレクトロボイス S40B」なのです。これはPAスピーカーですから、普通のオーディオマニアからは軽んじられることがありますが。

確かに家庭用のスピーカーからはもっと美音が聴こえてくるかもしれません。しかし、情熱ではなく理性を感じるのです。すると、理性では美を感じても、涙が出るほどこみ上げてくるものは、あまりありませんでした。もしかしたら、アメリカのPA「EV エレクトロボイス S40B」にも、イタリアのスピーカーと似たような血が流れているのかもしれません。

同様に、6L6系の球にも、マニアの方がユーチューブで比較論じておられるように、情熱的な魂が宿っているのかもしれません。

追記3

「 6L6 vs EL34; What Sounds More Brutal? *Dual Rectifier* 」

歪ませたエレキではなく、普通の音楽を鳴らしても、総じてこのような(イメージの)音の違いになるようです。

ところで、アンプは二段重ねになっていますね。

このような場合は、下のアンプは重しでダンプされているのに等しいので、ボディの共振が減り、音も贅肉が落ちた、スリムなものになりやすいです。

そんな不利な状況なのに、逆に、下にある6L6の方が、のびのびと太く鳴っているのが聴こえました。

比較サイトは、ここにもありました。

追記4

ちなみにS-40Bのウーハーも、ヤマハNS-B330と同じポリプロピレン系の振動版なので、同系統の音色がします。しかし、その、のびやかさは6L6系にも似ているかもしれません。

熱血の弟がS-40Bで、上品な姉がNS-B330といったところでしょうか。


(2021.8.14)

夏の間は発熱の少ないデジタルアンプに、小さな真空管2本だけのプリアンプを組み合わせて音楽を聴いていました。癖の少ないフラットな音です。

お盆になり、夏もピークを過ぎた感が出てきましたので、冬用の真空管メインアンプに戻る前に、アナログ・トランジスタアンプに灯をともしてみました。

デジタルアンプに比べ、アナログらしい滑らかな音がすると思ったら、このアンプはジャズ・ロック向きに派手目の音作りがしてあるようで、意外にも刺激感がありました。もっと高音の出ないスピーカーなら良かったかもしれませんが、ハイレゾのヤマハとはやはり相性が良くないようです。また当初のフラットなデジタルアンプに戻してしまいました

それにしても、最近のデジタルアンプの音は良くなりました。それに真空管プリを組み合わせれば、軽薄短小安価なうえ、十分実用になる気がします。

追記

①AIYIMA TUBE-A3 6J1 (6K4) プリアンプ胆プリアンプHIFIプリアンプ(高音と低音の調整)トレブルベース調整オーディオプリアンプ DC12V アンプスピーカー用

②2021 Nobsound NS-01G Pro パワーアンプ bluetooth 5.0 100W アンプ スピーカー HiFi オーディオ 電源付き (レッド)

③4系統 アナログ RCA ステレオ オーディオスイッチャー スプリッター + ボリュームコントロールパッシブ プリアンプ

③はボリューム付き入力セレクター(パッシブプリアンプ)なので、これもあると便利。

@ 夏が終わり、やっと涼しくなったので、再び真空管アンプに灯を入れましたが、スピーカーをソフトな音のヤマハから、リズミカルなJBLに変えたせいか、ヤマハでは良い感じに聴こえた真空管Aの濁り音が耳障りになりました。水は澄んでいれば良いというものではなく、澄みすぎると、時に人間は渇きを覚えるものなのです。しかし、濁りも程度もので、耳障りになってもいけません。

それで真空管を別の国のものに変えてみました。ロシア製のBです。数か月前に実験して大体の音色はつかんでいましたが、濁りが少なくなりリズミカルな音になりました。ただし人肌の温もりは残っています。

もう一組持っていまして、イギリスのCです。こちらは周波数レンジが広がり、高域に艶が出て、ハイファイ調になりました。正統派ならこれが一番でしょう。

しかし、ハイファイ過ぎても(今の気分には)眩しいので、とりあえず、落ち着けるBにしてありますが、Cも魅力的です

追記

真空管Aは、格安中華真空管アンプである6P3P(6L6互換)シングルアンプに付属のものです。(おそらくオールドストックの)中国製のようですね。

真空管Bは、ロシア製真空管 6P3S (6L6 6L6GT 5881)で旧ソビエト時代に製造された軍用モデルのオールドストック品のようです(ロシアがウクライナ侵略を始めたので、今の気分は微妙ですが、この当時は「ロシアのすたるじー」な気分だったのです)。

真空管Cは現行品で、イギリスPM社のPM 6L6GC Premium /MP マッチド2本組です。かつて、PMの6CA7を手に入れたことがありましたが、記憶が確かなら、外箱には日本のある一流真空管アンプメーカーの補修パーツのような表示があり、音も柔らで好みだったので、注目しているメーカーです。

上記は出力管ですが、現在、プリ管もロシア製真空管 6N9S (6SL7 1579 6H9C) に交換しました。旧ソビエト時代に製造された軍用モデルのオールドストック品のようです。プリ管も交換することで、わずかですが、さらにクッキリとした音になったようです。

( 私は真空管については素人ですので、真空管の交換については、購入のお店に相談されるか、自己責任でお願いします。又、交換に当たって調整が必要なアンプもありますのでご注意ください。 )

@ 2021.10.20に書いたアンプの真空管交換ですが、色々試したあげく、昨日から出力管もロシア製真空管 6P3S (6L6 6L6GT 5881)にもどしました。イギリスPM社のPM 6L6GC Premium /MPは、良いのですが、やはり私にはハイファイ過ぎて眩しいのでやめました。これでプリ管とともに軍用モデルのロシア・オールドストック品になりました。

出力管は別にgazechimp 真空管 6L6WGB 6P3P 6L6GC用 も買いましたが、これはPM 6L6GC Premium /MPと似たハイファイ調で眩しい音、おそらくブラインドテストでは分かりにくいぐらい良く似た音です。さらに、アンプとのマッチングなのか、理由は不明ですが、gazechimp 真空管 6L6WGB の方が高域の歪感が少なく感じました。これは悪くありません。

@ 2021.10.20に真空管の話を書きましたが、迷ったあげく、プリ管、出力管共に、旧ソビエト時代に製造された軍用モデルのオールドストック品に統一しました。

この組み合わせ、周波数特性がかまぼこ型になるようで、聴感上は高域の伸びがありません。古いジャズには良いのですが、クラシックのシンフォニーを聴くと、少し繊細感、爽快感に欠けるように思います。

それで、出力管だけイギリスPM社の現行品であるPM 6L6GC Premiumにしてみましたら、高域の不満が改善されました。しかし又(渋い)ロシア真空管に戻したい気分になって戻しました。浮気性です。プリ管は、持っているものはオールドばかりですので、現行品も一つ注文しました。

長文お読みいただきありがとうございました。

「6L6系 中華真空管アンプの導入記 ②」に続きます。

デジタル・ライントランス「 DLT-1 」はタイムカプセル

(2022.9.26マランツ社のデジタル・ライントランス「 DLT-1 」。 今は中古でしか手に入りませんが、私も若い頃からこれを使っています。いわゆるCDっぽい(CDくさいとも言う)音が緩和されます。私にはLPレコードっぽい音になったようにも感じます。好き嫌いもあるようですが。

CDが誕生したころ、CDプレーヤーから出てくる音にオーディオマニアの多くは困惑したのです。無機的だと。LPのような有機的、かつ潤いのある音がしないと。それで、押し入れの中にしまってあった、古い真空管アンプを、トランジスタアンプの代わりに繋いでみたり、又、ある者は、デジタルノイズのせいだとして、ノイズカット目的の、ライントランスをかませてみたりしたのです。あの時代のCD再生は去っていったLPの音を目指していたようです。ライントランスであるDLT-1を使うと、デジタルくさい音が緩和され、さらにDLT-1に限って言えば、LPの固有音、塩化ビニールの固有音のような音が付加されるように、私には聴こえます。

DLT-1は、あの時代の空気が設計思想として封印されているタイムカプセルなのです。今の時代のCD再生はLPへの郷愁から離脱し、よりCDらしい美音を極める方向になってきました。そんな現代においては、いっそう貴重な、郷愁にも浸れる、レトロモダンな、時代の証人だと思います。

(追記)

あれを純正組み合わせの妙というのでしょうか。同じ時代背景を持つマランツCD-34との組み合わせは、私の知る限り、黄金の組み合わせの一つです。同じマランツでも、後期のCDプレーヤーとは違う味わいがあり、乾燥気味だった音に潤いと、黄金を思わせる輝きが生まれました。私には奇跡のように聴こえたのです。しかし、客観的に見て、音色の傾向が違ってきた後期のCDプレーヤーには、必ずしも必要ないかもしれません。でも、個人的な嗜好は、また別の話だと思います。

(追記2)

コンピューターがプログラム(理性)の世界だとしたら、オーディオは理性と感性のバランスが大切です。いや、私がたくさん失敗した経験から言えば、感性に道を譲らないとオーディオで満足するのは難しい。オーディオでは、理性が右、感性が左と引っ張り合って、迷う事ばかりなのです。私のような普通の人は、興味のある製品を自宅で試聴する事は出来ません。だから情報が少なく、憔悴するほど悩みます。病気にならないためには、なんらかの決断をするしかありませんが、そんな時は、バカになって感性に従うのが成功への近道だと、私個人は思うようになりました。オーディオとはつまるところその修行であり、散財するのは授業料なのかもしれません。そして、ここで学んだことは、いくらかは人生にも応用が利くように思います。

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