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#ネタバレ 映画「居酒屋兆治」

「居酒屋兆治」
1983年作品

2003/8/15 23:02 by 未登録ユーザ さくらんぼ


( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。)

加藤登紀子さんが歌うテーマ曲「時代おくれの酒場」が忘れられないせいか、それとも彼女のファンだからか、この映画も忘れられない一本だ。

映画館で観た。ずい分古い話なので、例によってディテイルは忘れているが、こんな話だったと思う。

主人公(高倉 健さん)は会社の管理職だったが、上司から部下のリストラを命じられ、それがきっかけで自らも依願退職した。

そして妻と二人で小さな居酒屋を始める。

幸いにも店は成功し、毎日の様に常連客で賑わっていた。

しかし、ある日事件が起きたのである。

客の中にひとり酒癖の悪い男がいて、酔うといつも主人公にカラムのだ。主人公は相手がお客なのでじっと我慢するが、ある日他の客にもカラミ始めたのである。

見かねた主人公は、その男が店を出た後、追いかけて丁寧にお願いする。他の客に迷惑をかけないで欲しいと。しかし、そこで思わぬケンカになってしまい、男を入院させてしまうのだ。主人公は加害者として警察のご厄介になる。

その辺りから一人の女が登場する。

主人公が昔愛した女である。主人公は自分達が貧しかったから、金持ちの男へ嫁ぐようにと、身を引いたのだった。そのため、今はお互いに別の人と結婚しているが、女は主人公が忘れられずに家出を繰り返し、とうとう会いにきた。しかし、すぐ消えた。幽霊の様に恨めしい顔を見せただけで・・・。

主人公は日本の「まっすぐな男」代表、健さんである。

当然、今の妻を守るしか彼に道は無い。

しかし、相手の女が悲劇を迎えるのを観て、当時の私は、主人公には「男の甲斐性」が無いと思った。もちろん私にもそんなものは無いが、もしも大物なら、「女の二人や三人幸せにしてみろ」と言ってやりたかった。だからその結末が消化不良のまま、今まで残っていた。それが、この映画を時々思い出した本当の理由だったのかもしれない。

しかし今、この映画もモチーフから解釈すると理解できるような気もする。冒頭のリストラ退職のエピソードは部下(相手)を思う気持ちから起きた事である。続いて居酒屋のケンカ騒ぎも、カラまれるお客さん(相手)を思っての行為であった。

それならば、昔の恋人が今、悲劇を迎えるのは、モチーフを当てはめれば、彼女が主人公(相手)を思って身を引いたからだったのだ。そして、それはその昔、二人が恋人同士だった頃、健さんが彼女にした事でもあった。

追記 ( 私にとっての居酒屋は ) 
2015/12/7 18:10 by さくらんぼ

映画に出てきたような小さな個人経営のお店ではなく、おもに多人数でガヤガヤと行く大きなチェーン店の居酒屋の話をします。

仲間と飲みに行くと、①居酒屋で酒の肴を選ぶのは、実にたいへんな事でした。メニューを見ると、珍しくもなく、とりたてて食べたい料理があるわけでは無いのに、何品か選択しなければなりませんから。又、その料理の値段も、決して安いとは言い難いので、たまに食べたい料理があっても割り勘で皆に迷惑をかけてはいけないと遠慮したりしますから。

さらに、②運ばれてきた料理は、友人たちと分配する必要があるので、菜箸(さいばし)とか取り皿が必要になりますが、そこまで気の利かない店もあります。

③ゆだんすると、メンバーの中には「俺、親切だろう!」の体で、自分が口を付けた箸を使って取り分ける奉行さんもいます。インフルエンザが流行している時期には、感染リスクが有りますが、自分だけでなく、家族に感染することにも注意する必要があります。家族に受験生がいたりすると困りますし、特に老人がいたりすると生死にかかわることもあります。

また、④酒飲みという人種は、居酒屋で腹を膨らまそうという意識は、あまり無いようなのですね。帰りに河岸を変え、一人でラーメンでも食べるのでしょうか。でも、私も酒飲みですが、朝食抜きですし、昼食は胃がもたれるのでライトにすませますので、夕食は一日に必要な栄養素の半分以上を摂取しなければなりません。

かといって、河岸を変えてまで食べ直すほど胃腸が丈夫ではありません。その微妙なラインを毎晩慎重に歩くのです。体の欲するものを、一日を締めくくるに相応しい満足感と栄養素を摂取できたと確信できるまで、自制しながら、飲み、食べるのです。

そんな私が居酒屋(外飲み)に行くと、たいてい身も心も飢えたままで帰宅することになります。いまさら家で1人食べ直すのも寂しいですし、そのまま寝ます。

⑤そうするとカロリー不足で冬は寒い。体も心も空虚です。そんな翌日のランチは、猛然とカレー専門店にでも行って、肉のゴロリと入った、スパイスの効いたカレーを食べ、甘いソフトドリンクを飲みます。

その後、スパイスでぽかぽかしたお腹で、喫茶店に入り、ちびちびとブラックコーヒーでも飲んでいるときの満足感は最高です。

きのう居酒屋って、いったい何なのだろうと思いながら。

追記

居酒屋をバイキング方式にしたらどうでしょう。いや、いっそバイキングへ行って飲めば良いのか。それとも事前に、かけ蕎麦かサンドイッチなどを食べておく手もありそうですね。パーティーに出るときみたいに。それも、なにやら少しさみしいですが。

追記2 2023.3.13 コロナ過で菜箸(さいばし)と取り皿の重要性は再確認されましたね。

追記Ⅱ ( 「あきらめ癖」 ) 
2020/3/28 10:07 by さくらんぼ

『 兆治こと藤野伝吉(高倉健)は函館の街はずれで、女房の茂子(加藤登紀子)と「兆治」という名の居酒屋を営んでいた。兆治は勤めていた造船所でオイルショックの時、出世と引き換えに同僚社員の首切り役を命じられたことに反発して会社を辞めていた。 』

( ぴあ映画生活 『居酒屋兆治』あらすじ より抜粋 )

私も嫌な仕事からは逃げてばかりいましたから、こんなことを言う資格はありませんが、ある意味、藤野も逃げてきたのかもしれません。「出世と引き換えに」に反発したといえば体は良いですが。

思えば、兆治には若いころ肩を壊して野球をあきらめて以来、無自覚に「あきらめ癖」がついたのではないでしょうか。

しかし、時に世の中には逃げられない状況もあるのです。

それが“さよ”(大原麗子さん)との一件です。

この映画「居酒屋兆治」は、主人公がそれを学ぶお話だったのかもしれません。

原作と映画で主題が違うことは珍しくありません。同じように、最近作られたTV版の主題は、また違うのかもしれませんが。



( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。 

更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)


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