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#ネタバレ 映画「女は二度決断する」

「女は二度決断する」
2017年作品
映画「永遠の0」に捧ぐ
2018/4/20 17:46 by さくらんぼ

( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。 )

この映画の深層は、「テロリストに家族を殺された日本の特攻隊員が、敵空母に体当たりする話」だと思います。

今、その映画を作る以上、当然に大ヒット作、映画「永遠の0」を参考にしているはず。

オマージュかどうかまでは、現段階では分かりませんが、特攻を肯定的に描いたこの作品で、少なくとも制作者は、映画「永遠の0」に敬意を持っているのだと感じました。

ちなみに、チラシに載っている黒装束は、ゼロ戦の飛行服の記号でしょう。

今、ラジオから流れてきた、バッハの讃美歌のような曲が、心にしみます。

★★★★

追記 ( 秘められた「日本精神」 ) 
2018/4/21 9:08 by さくらんぼ

映画は結婚式から始まります。そのとき夫が「ちょんまげ」みたいな髪形だったので、「?」と思いましたが、長髪の外国人はそんな髪形をする事があるので、深く追求しませんでした。

しかし、妻が女友だちとサウナみたいなところへ行き、脇腹の「椿三十郎」みたいな入れ墨を見せ、「サムライよ」と、わざわざそんなセリフまで入れているところを見て、「ちょんまげ」「サムライ」の、日本LOVE映画だと分かりました。

ちなみに、入れ墨は、後半にもう一度出てきます。妻が仇討ちを覚悟したころに、白黒だった入れ墨に、赤い色を入れるのです。

色と言えば、サウナに行く前に連れていた彼女の息子。男の子なのに、「七五三」の女の子の衣装みたいに派手な色彩でした。これも日本的ですね。

追記Ⅱ ( もう一人の「サムライ」 ) 
2018/4/21 9:22 by さくらんぼ

そんな彼女の、夫と子どもが、爆弾テロにあってしまうのです。

偶然に犯人とすれ違っていた彼女は、裁判で証言しますが、被告の弁護士にやり込められ、犯人は無罪になってしまうのです。それどころか、逆に裁判で辱めらて…。

そんな中でも、犯人の父(悪いものは悪いと、ハッキリ子供を糾弾する男)とは、心通うものがあったようで、一緒にタバコをふかすシーンは、サムライ精神の見せ場なのでしょうね。

追記Ⅲ ( 海辺のキャンピングカーは空母 ) 
2018/4/21 9:57 by さくらんぼ

裁判に絶望した彼女は、一人、犯人の証拠探しに出かけます。自分で見たから信念があります。

彼女のクルマは「ホンダ」!?、さらに運転する時の彼女は丸くて大きめのメガネをします。実は最初の頃の会話で、わざとらしくメガネが出てきますので、これも意味があるのでしょう。たぶん「ゼロ戦」に乗る時のゴーグル。

そして、いくつかの点が結ばれ、ますます「犯人だ!」という確証は強くなって行きました。こんな時「女の勘」は怖い。

松林の「三保の松原」を連想するような、日本的な美しい浜辺に、犯人はキャンピングカーで潜んでいました。側には自転車も。

海辺のキャンピングカーは空母、自転車は艦載機の記号ですね。さすがに砂浜では自転車は使えないので、犯人はときどきジョギングに出かけていました。

そして、戻ったところを見計らい、彼女も爆弾を抱いて、キャンピングカーに入るのです。

追記Ⅳ ( 「自爆テロ」と「特攻隊」の違い ) 
2018/4/21 10:15 by さくらんぼ

映画「永遠の0」にも描かれていましたが、自爆テロと特攻隊を、海外では同一視することがあるようですね。

しかし、自爆テロが無差別殺人であるのに対し、特攻隊は敵空母や戦艦などの軍事施設がターゲットですから、両者はまったく違うものです。

そして今回、はたして彼女の攻撃はどちらだったのか。それを世に問う事で、彼女が特攻隊の記号であったことが浮かび上がるのです。

追記Ⅴ ( 死にゆく者の苦悩 ) 
2018/4/21 10:31 by さくらんぼ

①裁判のシーンでは、爆死の検視状況が事細かに説明されていました。

②彼女は攻撃する前、色々なことで、ずいぶん悩んでいました。

今思うと、①あの裁判は、②の苦悩への伏線だったのではないのかと。

映画「永遠の0」でも、主人公を含めた特攻隊員たちの苦悩が、じっくりと描かれていましたが、映画「女は二度決断する」は、それを参考にしたのではないか思うのです。

追記Ⅵ ( なぜ無線操作をやめたのか ) 
2018/4/21 15:20 by さくらんぼ

彼女の攻撃は、かつて夫と子どもがされたように、無線操作で行うことが出来ました。でも途中でやめました。

やはり、それでは卑怯な気がしたのでしょう。

一線を越える以上は、自分も死刑になければならない。「でなければ、やめちまえ!」、と。

そして同時に、彼女は夫と子どものところへ行こうと、自殺未遂をしていましたから、その両方なのでしょう。

物語の表層にある自爆理由は。

追記Ⅶ ( 「血が流れると人は変わる」 ) 
2018/4/21 15:45 by さくらんぼ

夫と子どもがテロにあったとき、立ち入り禁止になっていた事件現場に忍び込み、壁についた血しぶきに触れて泣く彼女。

その後、彼女がサムライの入れ墨に赤い色を入れたのは、「流れた血を忘れないため」だったのかもしれません。

それを忘れかけたとき、突然生理が襲ってきたのです。彼女は、それを天の声だと聴いたのかもしれません。

股間をまさぐり、血を見る彼女。私は男性ですから、生理時の女性の気持ちは良く分かりませんが、あれは引き金になったような気がします。

ふと映画「キャリー」〈1976年〉の私のレビュー,、タイトル「血が流れると人は変わる」を思いだしました。

追記Ⅷ ( 彼女は勇気を探していた ) 
2018/4/21 15:50 by さくらんぼ

彼女は攻撃について誰にも相談をしていません。

映画とは無関係ですが、どなたかのツイッターに、「相談するのは、止めてほしいからです。本当にやりたい事は、誰かに相談してはいけません」という趣旨のことが、書いてあり、納得しました。

追記Ⅸ ( 彼女は帰って行った ) 
2018/4/23 17:11 by さくらんぼ

( 映画「永遠の0」のラストに触れます。)

>そして同時に、彼女は夫と子どものところへ行こうと、自殺未遂をしていましたから、その両方なのでしょう。
>物語の表層にある自爆理由は。(追記Ⅵより)

映画「永遠の0」では、主人公が出陣するとき、妻にこう言いました。「ぜったい帰ってくる」と。

ならば映画「女は二度決断する」の自爆理由は、「夫と子どもの元へ帰って行った」というウエイトが、大きいのかもしれませんね。

追記Ⅹ ( 「海軍一の臆病者」 ) 
2018/4/24 8:42 by さくらんぼ

>偶然に犯人とすれ違っていた彼女は、裁判で証言しますが、被告の弁護士にやり込められ、犯人は無罪になってしまうのです。それどころか、逆に裁判で辱めらて…。(追記Ⅱより)

裁判で無罪になる事は珍しくないかもしれませんが、原告が辱められてしまうのは、意外な展開なのではないでしょうか。

もし自分がその立場に立ったら、どんな気がするのでしょう。世間は、国は、この世は、もう自分の居場所ではない、そう思ってもおかしくないほどの、絶望感が生まれるのでは。

それが、その後の彼女の行動にもつながっていくわけですが、辱められる彼女は、まさに「海軍一の臆病者」と貶められた、映画「永遠の0」の主人公と同じですね。



( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)


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