見出し画像

#ネタバレ 映画 「ビッグ・フィッシュ」

「ビッグ・フィッシュ」
2003年作品
見えない魚
2004/6/25 16:19 by 未登録ユーザ さくらんぼ

( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。 )

名作映画「カサブランカ」は戦意高揚映画だったと言われている。主人公は自分の恋の成就より、恋敵の仕事(レジスタンス活動)が成就するように陰で支えたのである。

ひるがえって映画「ビッグ・フィッシュ」。恋人との中を兵役が引き裂く。主人公は少しでも早く兵役を終えるために、あえて危険な任務を志願する。

映画「ビッグウエンズデー」にも兵役が出てきたが、そこには仮病を使い兵役拒否をたくらむ者や、堂々入隊する者など、様々な人生のありかたと、その顛末が描かれていたのに比べると、映画「ビッグ・フィッシュ」には選択肢がない。「危険な任務に志願する」という事に何の疑問も躊躇も描かれていない。

このエピソードがいつまでも私の心の中で溶けずに残った。

そう言えば、前段のエピソードとして、人間を食うと噂された大男を一人で退治に出かけたり、都会へ行く途中の岐路では、魔物が出るという脇道にわざわざ入って行ったりする。そうやって危険な道を選択する事が、まるで楽しい事のように描いておいて、兵役のエピソードにつなげて行くのである。

そして敵地では人を殺す事の心の痛みの描写など無く、まるで007シリーズの様に敵は倒れる。

そこにはかつて米軍が使った枯葉剤の影響だったか、双頭の子供を思い出すような双胴の女性が出てきた。彼女は主人公の勧めで米国へ渡りショービジネスで成功を目指す。双胴である事を売り物にする。そういえば、例の大男も単純にサーカスの見世物になった。ヒンヤリとした何かに触れた。

この映画の表面で語られる物語、それは感動的だ。実際ラスト近くでは涙した。しかし、そのサービス精神の中に密かに忍ばせてある、知らぬうち心に送り込まれてしまうシグナルも有るのかもしれない。心の中で溶けずに残るものがそれを教えてくれた。

追記
2004/6/26 14:21 by 未登録ユーザさくらんぼ

今日、話題の映画「ブラザーフッド」を観てきた。その感想はまたいつか書きたいが、痛い戦争映画だった。

それを観ながら思い出していたのが映画「ビッグ・フィッシュ」である。映画「ビッグ・フィッシュ」が戦争に対してどのようなスタンスで作られていたかについて、たとえ意見が分かれたとしても、戦争の痛みの部分の描き方が軽い事は映画「ブラザー・フッド」と比較すると良く分かる。偶然なことに「危険な任務に志願する」というエピソードがどちらの映画にも出てくるのだ。



(  最後までお読みいただき、ありがとうございました。

更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?