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#ネタバレ 映画「ブリング・ミー・ホーム 尋ね人」

「ブリング・ミー・ホーム 尋ね人」
2019年作品
イ・ヨンエさんのランボーⅤ(ファイブ)
2020/10/7 16:46 by さくらんぼ

( 引用している他の作品も含め、私の映画レビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。 )

看護師のジョンヨン(イ・ヨンエさん)の息子が失踪し、彼女が探し回るお話なのですが、さながら、これはイ・ヨンエさんの、ランボーⅤ・映画「ランボー ラスト・ブラッド」ではないですか。

もう少し地味な、純文学的な作品かと思いましたが、とんでもない誤解でした。

もっとも、

あんなにあくどい連中は、これくらいの落とし前をつけないと、恨(ハン)の国、韓国国民は納得しないのでしょう。

人間相手であろうと、動物相手であろうと、暴力シーンが痛いと感じるほどリアルで、エンドロールに出てきた「この映画では虐待は行われていません」みたいな言葉が、単なる形式ではなく感じられ、初めて安心させてくれたぐらいです。

美女の誉れ高かったイ・ヨンエさんも(失礼ながら正直に申せば)若さを失いましたが、それを補って余りある演技力と魅力を見せてくれました。

★★★★☆

追記 ( 「冬のソナタ」 ) 
2020/10/8 10:02 by さくらんぼ

『 ところで、ユジンとミニョンはいつでも正直者でしたが、サンヒョクとチェリンは追いつめられると嘘つきになりました。

しかし、自分の恋愛経験から言っても、どうして、あんなに嘘つきになれるのか疑問でした。しょせんドラマだから、と言う解釈も、当然にありますが…。

それから、サンヒョクの父たちの軽率さにも呆れます。チュンサンがユジンと兄弟だと決めつけて、二人を別れさせてから、その後で、DNA検査をして、実は、チュンサンはユジンとは他人で、サンヒョクと兄弟だったと分かるのです。

そんな、大事なことは、口外するまえに、秘密裏にDNA検査をするものです。そして十分すぎるほどの確証を持ってから、口外するなら、するものです。それなのに、若者をリードすべき大人としては軽率すぎます。ここにも、しょせんドラマだから、と言う解釈も、当然にありますが…。

そんなことを最近TVで放送された「冬のソナタ」新編集版も再観して、思っていました。

そんな矢先、韓国でフェリーの沈没事故が起こったのです。

前途のある、若い、多数の学生たちが亡くなった、本当に痛ましすぎる事故でした。船が沈没するまで、わりと時間があったようですので、なんとか、もう少し、上手に人命救助できなかったものかと、やるせない気持ちでいっぱいになりました。謹んで哀悼の意を表します。

そして、時間の経過とともに、次々と明るみに出る、韓国社会の問題点に驚きました。

いくつもの嘘と、軽率が、明るみに出ました。

それを見聞きすると、私は「冬のソナタ」はしょせんドラマだから、と思っていましたが、あれは、もしかしたら韓国のリアルでも、あったのかもしれないと、軽率にも、少し思ったのでありました。 』

( 「冬のソナタ」2014/5/12 17:52 by さくらんぼ より抜粋 )

『 かりに会社の粉飾決算が当たり前になると、もう会社の信用は無くなり、株の人気も地に落ちて、株価が暴落します。

かりに国民の嘘が当たり前になると、もう他人は信用できなくなり、社会生活が機能不全を起こします。

映画「冬のソナタ」には、嘘つきに豹変するサンヒョクとチェリンが出てきましたが、実は、ミニョンが、嘘つき大嫌い設定、になっていることも見逃せません。

うっかりミニョンに嘘をついた恋人のチェリンは、ミニョンから問答無用で捨てられます。ミニョンは嘘の理由を尋ねることもなく、チェリンは弁解の機会すら与えられませんでした。

また、ユジンは、普段はストイックに自らの感情を抑え込んでいますが、酒に酔った時には、不覚にも、ミニョンに正直な言葉を吐くのです。「過去に、あなたにそっくりな人がいた」と。ミニョンはそれを、言い寄るための嘘だ、と勘違いして、ユジンを嫌うのでした。ここは、涙なくしては見られない名場面の一つです。

先ほど、国民の嘘が当たり前になるとき、の話に触れましたが、他人が信用できない世の中など、考えてみただけでも、寒々としてきます。

「冬のソナタ」の冬は、そんな寒々とした心象風景を表していたのかもしれません。

でも、そんな中でも、嘘をつかない、信用できる人が一人でもいたら、その人は、周りの人の輝けるポラリスになることでしょう。

「冬のソナタ」の雪は、そんな清い心を表していたのかもしれません。

この映画は「ポラリス」が主題でしょうが、表では、初恋の人という恋愛のポラリスを、裏の主題では、正直者と言う社会生活のポラリスを、謳っていたのだと思います。

(「冬のソナタ」追記 2014/5/14 14:06 byさくらんぼ より )

追記Ⅱ ( 荒唐無稽なのか ) 
2020/10/8 10:21 by さくらんぼ

ネットを見ると、韓国社会には、日本のニュースではあまり報じられない誘拐事件が少なくないようです。

この映画「ブリング・ミー・ホーム 尋ね人」が生れた背景には、そんな国内事情もあるのでしょうか。

この作品では、誘拐した子供を、(どこにでもいそうな善人顔をした)悪のグループが、昔のアメリカの黒人奴隷のように働かせていました。

そして、「映画「ブリング・ミー・ホーム 尋ね人」にも、嘘つきが出てきます。

ドラマとしてデフォルメしているのでしょうが、「冬のソナタ」を思い出すとき、必ずしも荒唐無稽ではないのかもしれないと思ったのでした。

追記Ⅲ ( 「不都合な真実」 ) 
2020/10/8 13:45 by さくらんぼ

映画「ブリング・ミー・ホーム 尋ね人」の舞台は、韓国の島にある釣り堀です。

警官の中には癒着している者がいて、家族のように飲食を共にしたり、ワイロを受け取ったりしていました。

そんな釣り堀の子が、「誘拐された子とそっくりだ」という話が出てきたのです。

しかし、癒着している警官は、誘拐された子であろうと無かろうと、そんな騒ぎは起こしたくありません。

癒着が上層部にバレてもいけませんし、釣り堀がつぶれても、金ずるが無くなるからでしょう。

だから、力ずくでもみ消そうとします。

釣り堀に来る大勢の客たちも、尋ね人のチラシを渡しても、誰一人として情報の提供をする者はいません。

おそらく島に一つしかない釣り堀が閉鎖されても困るからでしょう。もちろんそれは悪ですが、スポーツジム等へ通っている人なら、なんとなく理解できる心情でもありましょう。

一方、子どもを探して6年目の母・ジョンヨンは、それにもめげず執拗に食らいつき、(いろいろあって)台風の日の、堤防の上で、やっと再会を果たします。

しかし、子を抱きしめようとしたその瞬間、大波が一瞬で子を消し去ってしまったのです。

子を殺したのは釣り堀の悪党たちではありません。

子を殺したのは「もしかしたら、追い詰めた、私かもしれない…」。

この後のジョンヨンは、悪党を「人殺し」とはなじれませんでした。

「子に手錠をかけた」と言って責める事しかできなくなったのです。

しかし、「子はもういない」。

なぜ、

「自分が死に追いやったから」。

その絶望的な答えの中、とうとうジョンヨンの心は壊れてしまったようです。

そして、(生きるために)すべてを忘れてしまいました。核心部分の記憶が消えたのです。

人は誰でも、自分に都合の悪いことは、無かったことにしたいものです。

追記Ⅳ ( 事件は闇から闇へ葬られたか ) 
2020/10/8 13:55 by さくらんぼ

いかに気の毒であっても、殺人事件が起きたのに、加害者であるジョンヨンは、無罪放免のようですね(正直ほっとしましたが)。

たぶんそれは、ジョンヨンが心を病んでしまい証言困難になった事もあるでしょうが、警察の上層部が、この件に警官が関与していたことに薄々気づき、もみ消したかった、からなのでしょう。

証言困難を正当な理由として。

追記Ⅴ ( 「アジア映画の情念」 ) 
2020/10/8 15:15 by さくらんぼ

映画「ブリング・ミー・ホーム 尋ね人」の主題は「不都合な真実」だと思うのですが、これは普遍的に刺さる言葉ですね。

そして私が感動したのは、中国映画でありながら映画「チィファの手紙」にはあまり感じられなかった「アジア映画の情念」が、満額回答のように詰まっていたからでもあります。



( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。 

更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)


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