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#ネタバレ 映画「半落ち」

「半落ち」
2003年作品
毎日
2004/1/17 9:53 by 未登録ユーザ さくらんぼ (修正あり)

( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。)

泣かせのシーンは極力排除されているように観えた。ところどころ断面的に挿入される主人公夫婦の回想シーンが、控えめに彼らの悲劇を語る。観客は想像力をたくましくする。

映画の後半になり、走り回っていた女性記者が、真剣な顔でなにかをつぶやくシーンが有る。セリフは忘れてしまったが、真剣な表情のアップから、この映画が涙の映画ではなく、問題提起型の辛口の作品である事を感じた。

人は、それぞれが自分が持っている器や過去の経験の範囲でしか、相手を、物事を、真には理解できない。さらに自分の都合の良い方向に理解しようとする力も働く。

たくさんの登場人物が皆それぞれの範囲で事件を理解しようと努力する。そして事件は明らかになり、再び封印された。

いや、事件は本当には明らかになってはいなかったのかもしれない。

正義感の塊のように見えた青年裁判官もまた、自分の範囲でしか事件を理解できなかったのである。彼はプライベートで被告と少しだけ似たような状況を抱えていた。だから被告に同情し温情的な判決を出す事は、自分自身の崩壊へとつながる事を恐れたのだろうか。

そして主人公夫婦。最愛の子供を亡くした悲しみを、認知症のため毎日のように忘れては思い出す生き地獄は、私にも想像すらできない大きさである。

追記 ( 不完全な人間たち )
2004/1/24 8:09 by 未登録ユーザさくらんぼ

自宅で庭いじりをしている父の背中が写るシーンがありました。その背中には住所、氏名などを書いた布が縫い付けてあったようです。背中はその人の真の姿を表します。ですから、そこにある名札は、病気でも父親には命があるのだという映画からのメッセージだと思いました。

それから、主人公が法廷で「魂がなくなったら人ではなくなる」と言っていましたが、私は少し違和感が残ったセリフでした。もちろん私にはあのような経験は無く、事の何たるかを理解できていない事はすでに書いた通りですが、もしかしたら妻や事件を自分だけは完全に理解していると自信あり気な主人公でさえも、完全には理解できていなかったのかもしれません。

そして、検事もまた裁判官の個人的事情を理解していなかったために、目論見どおりの判決には導けなかったのではないでしょうか。

そんな不完全な人間たちが集まり実らせた判決は、一見温情的ではない、重いものだったのかもしれませんが、結果として自殺を予防し、主人公にゆっくりと考える時間を与える事のできる、予期せぬ賜物になったのかもしれませんね。

追記Ⅱ 2022.10.30 ( お借りした画像は )

キーワード「1/2」でご縁がありました。きれいですね。近所の公園も色づいてきました。モミジはほとんどありませんが、毎年癒されています。少し上下しました。ありがとうございました。



( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。 

更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)


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