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#ネタバレ 映画「森崎書店の日々」

「森崎書店の日々」
2010年作品
価値観が合わなければモノは売れない
2011/1/2 21:55 by さくらんぼ

( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。 )

古本に値段をつけたことはありませんが、けっこう難しそうですね。

いくら内容が素晴らしいからと言って、高すぎる値段をつけたら売れません。かといって、この本は安い値段にしたくない、などと考え始めると、いろいろ悩みそうです。

主人公の貴子は(私と同じように)読書をしない人間のようでした。恋人は自分の人間性を棚に上げ、そんな貴子を無教養だと捨てたのでしょう。くやしいですが読書家から見れば本を読まない人間は空っぽに見えるのかもしれません。

( もっとも、それを超越するのが愛であるのですから、「結局、男には彼女に対する愛情がなかった」という結論になるのでしょうが、それは、さておき… )

モノはすべて、売り手と買い手の価値観が合致しないと売れないのでした。

なんとなく落ち着いた気分の私小説的物語、と言ったところでしょうか。年末のふと時間の空いた午後に観たらお似合いの物語でした。

★★★★

追記 ( サナトリウム )
2011/1/23 10:25 by さくらんぼ

昔、仕事で悩んでいた私と友人は、戯れに「転職するなら小さな本屋さんが良いね」と話し合ったことがあります。

職場の近くに小さな本屋さんがあって、そこは、病院の待合室のように静かで、人生の疑問に答える書物が沢山あり、ほっとできる癒やしの空間だったからです。

騒々しい自分達の職場と比べれば天国に見えたのです。

( もちろん職業にするからには、何処の職場もそれ相応の苦労があることは承知していますが、若者の目には、隣の芝生は青く見えたのですね。)

映画館が「暗闇のサナトリウム」ならば、案外、本屋さんは「静寂のサナトリウム」だったのかもしれません。あれから数十年、悩み事があると、いつも本屋さんに立ち寄り、しばし、立ち読みすることでリフレッシュしてきましたから。

本に囲まれた本屋の店主さんならば、教養のある方が多いと想像します。西洋では悩み事があるとき「金持ちは精神科のカウンセラーに相談し、庶民は酒場の親父に相談する」とか言うそうですので、本屋さんが人生相談にのる、映画の様な話も有りなのかもしれません。

本の売り上げが落ちているようです。不況でお小遣いが減らされれば、本も買えなくなるのは私も経験済みです。この上、電子書籍になれば、ますます、古本屋などからも客足が遠のくのではないでしょうか。

かばんの中に軽い電子書籍一枚を入れておけば、数千冊の本を持ち歩いているのと同じだということになれば、重たいカバンを持ち歩きたくない人たちは飛びつくかもしれません。

しかし、映画のように「本ではなく書店がサナトリウム」と発想するならば客足ももどるのかもしれませんね。そして神保町という街も…。

追記Ⅱ ( おせち料理 ) 
2015/11/23 17:51 by さくらんぼ

新聞に、おせち料理の広告が入る時期になりました。家人がそのチラシをもって、何か、もごもご言っていましたので、久しぶりに注文してしまいました。

チラシとは違いますが、とあるビストロの「洋風おせち」です。

そこは、私が在職中に会社の近所に新規開店した店で、オープン当時はランチにときどき通っていました。

15年以上前にも一度、頼んだことがありました。とても美味しかった。でも、大晦日の午後に取りに行かなければいけないのが面倒で、以後、買っていないのです。

寒い中、徒歩で行きますし、自宅に戻るまでに、けっこう重くて、指が痛くなった思い出もあります。雨や雪でも降ったらどうしよう。

今回、久しぶりに注文し、値段が上がったことに気がつきました。今の2~3人分の料理の値段で、昔なら3~4人分が買えたのです。いや、値段も、もう少し安かったような気もします。

今の値段を換算すると、一人分で、7,000円~10,000円になります。

それを大晦日に受け取るわけですが、もし大晦日に食べると、元旦の分が無くなります。されとて元旦まで取っておくと味が落ちます(朝食は抜き、ランチは外食の予定なので、夕食に食べることになります)。保存が前提の伝統的な和風おせちではなく、西洋おせちですから。

それにしても、一泊二日で温泉旅行にも行けそうな、よいお値段ですね。

新聞広告などを見ると、もっとお値打ちなおせちもあるようです。もちろん、食べ比べてみないと、広告だけでは分かりませんが。

つい、そんな比較をしてしまうのが貧乏性なのでしょう。値段以上の満足感を得られるのかどうか、それを楽しみにしています。

そもそも料理屋さんに注文するおせちとは…

① なじみの料理屋さんに対する、お得意さんからの一年分のご祝儀であり、もらう料理は値段以下を覚悟すべし(昔読んだ、たしか作家先生のエッセイに、年末になると、飲み屋にいる馴染の若い店員さんに、一年分のお礼を込めて1万円のチップをはずむ話が出ていたので)。

② お得意さんに対する、料理屋さんからの、福袋・お年玉であり、渡す料理は値段以上のものが必要。

③ 単なる等価交換な商取引。

私としては、①の思いを持った客に返礼するために、②の料理を出す店が好きです。


(  最後までお読みいただき、ありがとうございました。

更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)


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