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#ネタバレ 映画「ファーストラヴ」

「ファーストラヴ」
2021年作品
大人気TVドラマ「チャンネルはそのまま!」は、この映画のアナウンサーに受かったバージョンか
2021/3/8 17:31 by さくらんぼ (修正あり)


( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。)

映画が始まると間もなく、丁寧に作られた作品だと感じられました。

そして観客に媚びることもなく、重く迫ってきますが、けっして重すぎることはありません。

主人公の北川景子さんも熱演されていましたが、芳根京子さんの怪演の中に見える愛らしさも光っていました。

私が観た作品の中では、今回の芳根さんはダントツでした。存在自体が血の通った人間を感じさせます。

そんな芳根京子さんに、ふと映画「羊たちの沈黙」を思い出しましたが、そういう映画ではありません。

見応えのある良作でした。

★★★★☆

追記 ( 「ガラスブロック」の謎 ) 
2021/3/9 10:03 by さくらんぼ

冒頭、大学の校舎が映ります。

カメラが近づくと、丸いガラスブロック越しに、画家・聖山那雄人(板尾創路さん)の刺殺体が見えました。

そのガラスブロックは何の記号だろうと思っていましたら、その後逮捕された画家の娘・女子大生の環菜(芳根京子さん)と、公認心理師・真壁由紀(北川景子さん)が接見するシーンで、多数の穴が開いた透明な壁が出てきました。

その他にも、同様の記号は散見されますが、あの「〇」は「視線」の記号であり、主題なのだろうと思いました。

冒頭の聖山那雄人は、視線の罪を犯したゆえに、視線の報いを受けたのでしょう。

追記Ⅱ ( 女優対決 ) 
2021/3/9 10:21 by さくらんぼ

主題が「視線」ならば、北川景子さんがヒロインに選ばれた理由は、美女だからだけでなく、目力が強い女優さんの一人だからでしょう。

すると、ストーリーとしては、環菜を助けに来たのは、環菜がもっとも忌み嫌う種類の人間だったことになります。

皮肉にも、北川景子さんがぐいぐいと環菜に接近することは、ある意味暴力行為と同じだったなのでしょう。

それならば芳根京子さんが共演に選ばれた理由も類推できます。芳根さんの目は大きくとも、目力という点では北川景子さんとは対照的であり、時に怯えた影さえ感じさせますから。

追記Ⅳ ( ファーストラヴの相手は ) 
2021/3/9 16:20 by さくらんぼ

女の子にとって、自覚があるか否かはともかく、ファーストラヴの相手は父だと言われています。

しかし、二人ともその父に失恋しました。

そして、無意識に助けを求めた二人目の恋人にも、失恋したのです。

追記Ⅴ ( 「おしおき」 ) 
2021/3/9 17:09 by さくらんぼ

そもそも環菜の父は、なぜ環菜をヌードの男子学生の中に置き、絵のモデルにさせて、多数の男子学生の晒しものにしたのでしょう。

私の知る限り、直接映画には描かれていませんが、間接的に描かれていたように思いました。

迦葉がベッドで「自分には20人以上の女性経験がある」と自慢げに言ったのに対し、由紀が覚めた声で「セックス依存症です」と斬り捨てた事で、迦葉は激怒して首を絞めました。

同様に、父の視線をデリケートに察知した環菜が、怯えた視線を返したので、「おしおき」だったのでしょうか。 「可愛さ余って憎さ百倍」の。

それでなくとも、芸術を専攻する大学生の中は、非常に個性的な人もいると聞いています。

それでなくとも性癖はさまざまでしょう。

ならば先生も。

追記Ⅵ ( 「コロナ過」を描いていたのか ) 
2021/3/9 21:42 by さくらんぼ

今、私たちが街へ出るときは、「誰が感染者なのか」と心配しながら歩いています。

目で睨んでいるわけではなくとも、心の中では警戒レーダーを発しているわけです。

そんな心象風景の苦しさと哀しみが、主題である「視線」になったのでしょう。

つまり、これもコロナ過を描いていた可能性があります。

追記Ⅶ ( 父の心の軌跡 ) 
2021/3/15 9:50 by さくらんぼ

>そもそも環菜の父は、なぜ環菜をヌードの男子学生の中に置き、絵のモデルにさせて、多数の男子学生の晒しものにしたのでしょう。(追記Ⅴより)

もう少し焦点が合ってきたように思います。

環菜の母・昭菜は、父・那雄人との交際期間に、別れていた時期があり、そのとき同棲していた男との子が、環菜だったのです。

その後、那雄人とよりを戻した時、那雄人は昭菜に、(他人の子である)環菜を含め、すべてを受け入れると話し、二人は結婚したのでした。

環菜は戸籍上、夫婦の子になりました。

この時の那雄人の決断は美しいものだったと信じたいです。

常識的に考えれば、環菜にそれを語るのは二十歳になってからでも遅くはありません(場合によっては一生語らない選択もあるかもしれませんが)。

そして母は父に借りが出来ました。

しかし、その美談を裏打ちしていたのは父の「昭菜を抱きたいという肉欲」だったのかもしれないのです。

でも…狂おしい「肉欲」もやがて消えていきます。

その時、那雄人に見えてきたのは、環菜が他人の子だという事実。

那雄人は環菜に、早々に出生の秘密を語ってしまいました。

これが復讐の第一章だったのかもしれません。

昭菜と環菜に憎しみを感じ始めた那雄人。いや、肉欲を満たすために、いっとき心の奥底に押し込んでいた憎しみが、だんだんと運河のヘドロのように浮き上がってきたのでしょう。

母が父以外の男と交わった結果が環菜なら、その環菜も裸の男の中に置き、さらに多数の男の視線に晒しものにして、復讐をしたのでしょうか。これが第二章。

この作品は、芸術の名を借りた、もしかしたら無自覚で、おぞましい復讐劇だったのでしょうか。



( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。 

更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)


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