#ネタバレ 映画「宇宙でいちばんあかるい屋根」
「宇宙でいちばんあかるい屋根」
2020年作品
少女の視野、お婆さんの視野
2020/9/10 9:23 by さくらんぼ
( 引用している他の作品も含め、私の映画レビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。 )
「少女が空を向いている写真だけ」でこの映画を選択しました。
私の前でチケットを買った人も、私と同年代のおじさんでしたから、そのような人にはピンとくるものがあるのでしょう。
無名の新人さんだと思っていたら、どこかで見た顔です。
映画の終わりまで来て思い出しました。
NHKドラマの佳作「螢草 菜々の剣」のヒロイン・清原果耶さんでした。
「女の武士道」を描いた作品で、「女らしさを失わず、男よりも武士らしい」を見事に表現していました。
あれも映画化してほしいと思います。
それはともかく、この映画「宇宙でいちばんあかるい屋根」は、上品ではありますが、(失礼を承知で)正直に申せば、どこか少し物足りない感もありました。
たとえば、「家族から疎外感を感じる孤独な少女の戦い」を描いた、田中麗奈さん主演の佳作映画「がんばっていきまっしょい」と比較すると分かっていただけるような気がします。
しかし、このような癒し系の作品がめずらしいことは確かです。
★★★
追記 ( 少女の視野、お婆さんの視野 )
2020/9/10 15:07 by さくらんぼ
ヒロイン・つばめは隣家の大学生・亨に恋していました。一生懸命書いたラブレターを必死の思いで投函するエピソードで映画は始まります。
別に地球の裏側まで探し回る必要はありません。運命の恋人は隣家に住んでいたという事もあると思いますが、映画でそれを描いているという事には意味があり、俯瞰すると、あの恋は(若いが故の)「視点の低さ」の記号だと思います。
人生には(老いても想像できない程の)「意外」が詰まっており、俯瞰して、可能な限りそれに気づくことが大切です。
例えば、つばめの(今は話もしたくない)元彼の、(会った事もない)祖母が、つばめの人生相談に乗ってくれる秘密の師になったり…
つばめと暮らす(父を奪った宿敵だと思っていた)義母が、実は父と結婚できれば幼いつばめも娘に出来ると喜んでいた事実、実母と義母が(押し付け合いではなく)つばめの奪い合いをしたという事実もあるのです。
再婚した者がときどき配偶者の連れ子を虐待したという話がニュースになります。
虐待した者の気持ちが想像できないわけではありませんが、連れ子を可愛いと思い、一気に家族が増えることを喜ぶ人の気持ちも分ります。あれは本当のことです。まさに人生いろいろなのです。
別れ際に謎の老婆(桃井かおりさん)がつばめに言うたくさんの言葉の中に、「これからの人生、一杯恋をするよ!」みたいなセリフがありますが、この言葉の中にも、人生の大きさ(視点の高さ)が集約されているのだと思います。
追記Ⅱ ( 先生の片思い、も )
2020/9/11 9:46 by さくらんぼ
義母との葛藤もあり、自宅が面白くないつばめは、居場所を求めて書道教室に通っていました。
その誰もいない屋上も、ラブレターを書いたりできる、つばめ最高の憩いの場でしたが、そこで謎の老婆(桃井かおりさん)に出会ったのです。高いところに上ったせいです。
しかし、出会いはそこだけではなく、書道教室の男の先生もそうでした。つばめは気づいていませんが、先生はつばめが好きでした。
何かとつばめに話しかけることがあり、「よかったら水墨画をやってみませんか」などと誘っていました。もちろんつばめの中に何らかの才能を見出したのでしょうが、私が診るにあれは恋愛です。
この恋は、映画の中では告白することもなく、つばめが気づくこともなく終わるのですが、つばめが絵の個展を開くまでに成長した時、会場には密かに先生の姿がありました。
あの後、二人はどうなるのでしょう。つばめの寄り道は人生を変えたのかもしれません。
追記Ⅲ ( 「人間万事塞翁が馬」 )
2020/9/11 16:48 by さくらんぼ
>義母との葛藤もあり、自宅が面白くないつばめは、居場所を求めて書道教室に通っていました。(追記Ⅱより)
>人生には(老いても想像できない程の)「意外」が詰まっており、俯瞰して、可能な限りそれに気づくことが大切です。(追記より)
自分のことを薄幸な女だと思っていたつばめですが、振り返ってみると、色々なことは良い方向へ進んでいたではありませんか。
「視点の高さ」 → 「人間万事塞翁が馬」に気づくこと。
なのかもしれません。
ならば馬はどこにいる。
屋上で出てきた「キックボード」にその意味も含ませてあるのかもしれませんね。
( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。
更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)
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