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読書メモ 浅田次郎「流人道中記」
舞台は江戸幕末、14代家茂の時代であるが、この物語はバディもののロードムービーの最高峰の一つといっていいと思う。ムービーじゃないけど。
見習い役人の乙次郎は数え19歳の若者。この若者が破廉恥な罪を犯したとされる偉い侍の青山玄蕃を江戸から青森の北の先まで送り届ける。
若くて融通のきかない堅物の乙次郎と、洒脱で聡明な玄蕃とのコンビが、途中で様々な事件に遭遇する。見事解決できる事件もあれば、思うようにならない事件もある。やがて、乙次郎は、玄蕃が本当に罪を犯したのかと疑念を抱くことになる。
ラストに明かされる玄蕃の出自と犯した罪、そして彼の決断に驚き、唸ってしまった。一読目はそれが理解できなかったが、二度読んでぼんやりと分かった。それほど玄蕃の器が大きくて、果てが見えないということかもしれない。
浅田次郎氏のいくつかの幕末ものはいつも素晴らしい。やがて、それぞれがピースとなり、大きな物語ができていくように思う。
そうした作品群で一貫して語られるのは、武士という生き方である。武士として意地を張って生きる。それは時に誇らしく、時に滑稽で、時に愚かしい。しかし、僕はそれが失われた現代を寂しく思う。
男らしさというワードが御法度になりつつあるが、それでも僕は武士らしさ、男らしさを見せられると打ち震えてしまうのだ。
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