読書メモ「アナログ」
「幸せな気持ちなんて、大切なものが一つだけあればなれるものかもしれない。」
ビートたけしによる恋愛小説。連絡先を知らないまま恋人になった2人は毎週木曜日に喫茶店で会う。何とロマンチックなラブストーリーかと読み始める。冒頭、主人公の上司のビジネス横文字ばかりの変な会話から始まる。笑いを誘われると同時に、筆者は随分とお年を召しているはずなのに、こうしたワードをしっかりとフォローしていることに驚く。
そして圧巻なのは主人公の親友2人の会話の面白さ。まるで、でなく、そのまま漫才の台本である。何度も声を出して笑ってしまい、電車内でにやけてしまうのを抑えていた。
主人公は、仕事に充実を感じつつも、施設にいる寝たきりの母に対して感謝と親不孝を詫びる気持ちで過ごしている。親不孝な僕自身を重ねてしまう。
笑わせられ、しんみりさせられながら、軸となるラブストーリーが進んでいく。
ラストの決断は何だろう。下品な笑いと母へのすまない思い、そうしたものがぐちゃぐちゃになった果ての決断は、まるで苦界の煩悩から解かれて浄土に導かれるような、そんなラストに思える。
打ち込める仕事があり、親友がいて、そばにいる愛する人のために尽くす人生は、ひとつの理想の人生だと思う。
仕事でアナログを通していた男が愛する人のためにデジタルを駆使するようになるのも面白い。
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