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グローバル人材とは何か

こんばんは。
青山社中広報担当の佐藤です!

毎月配信している朝比奈一郎(あさひな いちろう)のメルマガに
記載した論考を掲載します。
今月は11月に朝比奈と水野が行っていた中国(成都・江油)が切り口です。
ぜひご覧いただけると嬉しいです!

2019年11月号メルマガ論考
「グローバル人材とは何か」

2度目の訪問となった中国四川省江油市からの帰りにこのエッセイを書いている。

江油市は、人口88万人の市であり、日本であれば政令市になれる人口規模だが、100万人都市が300あると言われる中国においては、人口の面ではよくある都市の一つに過ぎない。

この市を最も印象的に特徴づけているのは、詩仙と称され日本でも知る人の多い詩人、李白の出身地であることだ。厳密には李白の出身地については諸説あるが、幼少の頃に父とこの地にいたことは通説であり、同地には、巨大な李白公園、李白の博物館などがある。

李白について、私の興味を強く引いた事実は、詩そのものについてではない。日本人の阿部仲麻呂との交流だ。仲麻呂が日本への帰国に失敗し、途中、船の難破で死亡した際(誤報だった)、その死を嘆く詩を李白がわざわざ詠んでいることを江油市の博物館で知った。
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阿部仲麻呂は、遣唐使の留学生(遣唐留学生)として19歳の年に唐に渡り、最難関試験の科挙に合格(諸説あり)。玄宗皇帝に仕えるなど、以来50年以上の間、中国で活躍した。68歳の時には、安南都護府(現在のベトナム)にて軍や財政を統括する節度使となり、従二品まで登り詰めている(正一品、従一品、正二品に次ぐ、第四の位)。役人としては異例の大出世だ。そして73歳の時に、再び日本の地を踏むことなく現地で亡くなっている。

唐に来て35年ほど経った際に、一度日本に帰ろうと試みるも、船が漂流して失敗し(その際に死去したという誤報が流れて上記の通り李白がその死を嘆く詩を書く)、結局中国に残り続けるわけだが、阿部仲麻呂こそ、現代流に言えば「グローバル人材」であったと言えるのではないか。

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Wikipediaより引用

今流に言えば、米国に留学して、そのままアメリカのトップ企業に入り、上まで登り詰める、という感じであろうか。現在のアメリカ以上に世界では圧倒的存在だった中国(唐)で、しかも、企業に入るとか起業するなどの選択肢がなく、科挙をベースとした行政ヒエラルキーこそが中核だった唐で、出世を重ねた阿部仲麻呂に匹敵する「グローバル人材」は、もう日本からは生まれないかも知れない。
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「グローバル人材」と書きつつ、つらつら思うことは、意外にその定義が曖昧だということである。短絡的には、「英語が出来るなどして、海外で通用する人」ということになるが、何かそれも違う。英語に堪能で、アメリカ企業で活躍できる人というだけなら、それは単にアメリカ人なだけだ。誤解無きように書いておくが、そういう生き方を否定しているわけではなく、むしろ、自分には出来ない生き方として尊敬しているくらいだが、「グローバル人材」という定義にはそぐわない気がするということだ。

相手のこと、具体的には、相手の言葉はもちろん、文化や民族的志向の特性などを深いレベルで理解するということと同時に、何か、自分なりのスタンス、特に出身国・出身地の文化を色濃く反映する形で自分の在り方を打ち出すということが、真に「グローバル人材」と定義する際には要件として必要な気がするのは私だけであろうか。平たく言えば、英語がペラペラと話せることに加え、否、それ以上に、「お前は日本人として何者なのか、何がしたいのか」ということが「グローバル人材」には問われるのではないかと思う。

具体的には、「安かろう悪かろう」という“Made in Japan”の印象を変えるべくアメリカ社会に飛び込んでいったソニーの創業者の盛田昭夫氏や、最近だと、日本人としての求道精神をアメリカで見せつけたイチロー選手などが、「グローバル人材」の定義にふさわしい。
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阿部仲麻呂は、第10次遣唐使の帰国時に難破して長安に戻ってきた第2船の中臣名代らが無事に帰国できるように奔走し(ちなみに、第1船に乗っていたのが吉備真備や僧玄昉)、また、チャンパ(崑崙)王国に漂着して捕えられ、長安に逃げてきた平群広成一行4人が渤海経由で日本に帰れるように必死に便宜を図ったと言われている。

百人一首にも収められている阿部仲麻呂の歌の代表作は、有名な「天の原、ふりさけ見れば春日なる 三笠の山に出でし月かも」だ。唐にいながら、月を見て、「奈良の春日の三笠山の月と同じかも」と詠んだ彼の日本への想いは如何ばかりであったであろうか。

そういえば、李白が阿部仲麻呂の死を嘆く詩(「晁卿衡を哭す」:晁衡は仲麻呂のこと。卿は尊称)は、「日本の晁衡、帝都を辞す」で始まる。「日本人としての国際人」であることを忘れなかった阿部仲麻呂の佇まいが、李白にこの詩を詠ませたのだと信じたい。

筆頭代表CEO
朝比奈 一郎

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2019年5月末から青山社中で働く広報担当のnote。青山社中は「世界に誇れ、世界で戦える日本(日本活性化)」を目指す会社として、リーダー育成、政策支援、地域活性化、グローバル展開など様々な活動を行っています。このnoteでは新人の広報担当者目線で様々な発信をしていきます。