試合にRapsodoを持っていこうという話
著:原島(監督)・梅村(部長) 編:梅村(部長)
~嘘のような本当の話~
Rapsodoにおいて回転数は「rpm」で表記されます。「rpm」とは「revolutions per minute」なので、言い換えると「1分間に何回転するか」です。何を当たり前なことを…という話なのですが、これを知らない子がRapsodoを見るととんでもない勘違いをします。「僕の球は(リリースから)キャッチャーが捕るまでに1800回転もしてるんですか!」と言い出す子がいるわけです(そんなわけあるか)。球速に拠りますが、リリースからミットまでおよそ0.5秒で到達するので、1800rpmなら約15回転です。投球中に1800回転もしていたらとんでもないことになります。216000rpmです。化け物かな?
Rapsodoを使う前に基礎知識は教えとかんとなあ…と感じたお話でした。
今回は、そんなRapsodoを試合前に使ってみようという話です。本校もまだまだ模索中なのでご意見などございましたらコメントください!
それでは今回もよろしくお願いいたします。
1.試合前に計測をする意味
そもそもの始まりは、ある投手と試合前での会話でした。
そもそも3km/hぐらいってなんやねんと思いましたが、そのときは彼の自己評価を否定するツールは持っていませんでした。ただ彼の自己評価と僕から見た評価に乖離があったので、僕は首をかしげていた記憶があります。そのときに「調子(という曖昧なもの)はある程度数値化して、確認し合えた方がいいのでは?」と思ったのが始まりでした。
そんなきっかけで始まった試合前の測定です。本校は試合前のブルペンで常に計測して、自分の身体がどれだけ仕上がっているかを確認しています。つまり、数値でその日の調子を確認するということです。
いままで、投手の調子はバッテリーの感想や実際にブルペンの投球を見て判断していました。しかしプロならまだしも、高校生は嘘をつく(特に調子が悪いとき)ことがあったり、そもそも自分の調子を正確に把握できなかったりする傾向があります。言い換えるなら、高校生は正確な自己評価をすることが難しいということです。
そのようなときにRapsodoの出番です。実際の投球を客観的に評価して、いつもと同じか、いつもとどのように違うかを数値で表してくれます。もちろん投手の体調などを数値にはできませんが、投げた球という「結果」を数値化してくれるのは、現状「調子」という曖昧なものを最も客観視させてくれる数値でしょう。
投手としての目標は、試合前のブルペンでいつもと同じ球速・回転数に仕上げることです。これはアップをどのように取り組んだかで変わります。何となしにアップをするのではなく、数値をいつもと同じ調子に持って行かないといけないという意識を持ってアップをすることには相応の意味があると考えています。もちろん、体調などの理由でいつもの数値にならないときもあります。そのため、常にいつも通りということにはなりにくいのですが、「いつも通りではない」という事実をバッテリーが認識して試合を迎えることに意味はあるでしょう。
対して、回転軸や縦/横の変化量などはアップをどれだけ行っても、その日の調子などで変わってしまうことが多いです(アップに問題があることもあります)。ですので、ここで異常が出た場合はトレーナーさんの出番です。ケアをしていただいたり、追加でアップを行ったりすることもあります。
ここまで長く書きましたが、Rapsodoは「調子」を数値で可視化するために用いています。次章は実際に測っているときに気にしていることを中心にお話していきます。
2.実際に指導してくださっているスタッフの観点
では、実際に試合前のブルペンで指導してくださっている方に何を見ているか、どのようにアプローチしているかを話していただきます。ここからは部長にバトンを渡して、数値的な観点からの問題点や改善点を話してもらいます。
↓以下部長から。
練習の時と試合の時で、Rapsodoを使用する意義は大きく変わります。練習時のRapsodoの役割を「現状認識」「試行に対する評価」であるとすれば、試合時のそれは「状態確認」「問題の検出」であるといえます。
具体的には、ボールを放す位置や角度といった「リリースの状態」、回転数や変化量、回転効率といった「ボールの質」が「普段と変わりないか」を確認するためのツールとしてRapsodoは用いられます。
この使い方は、練習時の使い方に比べて少しレベルの高いものです。なぜなら、「普段の状態」を選手、指導者の両方が把握していなければそもそも比較ができないからです。本校でもようやく最近、定期的にRapsodoで計測を行う癖がついたことで、このような使い方ができるようになってきました。
さて、その上でデータ担当としてどの部分に注目して見ているかを①リリースの状態②ボールの質に分けて説明します。
① リリースの状態
個人的に、数値を見てまず注目するのがこの点です。アップ段階でどの程度のボールが投げられているか、というのは正直それほど参考にならないように思います。これらの値が参考になってくるのはあくまでも身体の準備ができて、試合で投げられる状態になってから。むしろ問題視すべきは投球フォームであると考えます。ボールの回転が悪くても最悪滅多打ちされるだけで済みますが、フォームが崩れていれば思わぬ故障につながる可能性すら生まれてきます(回転の質低下もフォームに起因することが多いですし)。したがって、リリースする高さや幅についてはかなり注目して見ています。
たとえば、ストレートを何気なく投げる際にリリース位置が下がっているのであれば、(ア)いつもより投球時の肘が下がっている、あるいは(イ)いつもよりブルペンのマウンドが低いことが考えられます。
この場合、(ア)であればまずトレーナーさんへの相談です。実際に目視で肘が下がっているように見えるか、もし見えるのであれば原因は何なのかを確認する必要があります。この後フォームを多少修正するか、そのまま行くのか、あるいは最悪当日の登板を取りやめるか……といった判断は私の領域から外れますので触れませんが、何らかのアクションを取ることになるでしょう。
一方、(イ)マウンドが低いと考えられる場合はどうするかですが、これは投手への伝達になります。一般的に、マウンドが低く、柔らかいと投手は普段よりも速いボールを投げられなくなります。踏み込みによる地面反力が使いにくくなるからです。当然投手は「いつもよりいい球が投げられない」「調子が悪いんじゃないか」と心配そうに聞いてきます。そこで、「いつもよりマウンドが低いからボールの質が落ちていても仕方ない」と伝えてあげることで、多少なりとも不安の解消につなげることができます。
なんだそれは、しょーもないなという話に思われるかもしれません。ただ、個人的な経験からも、ブルペンで思うようなボールが投げられていないのは不安になるものです。特に体がどこも痛くないのにボールが行かないとなると、余計に不安になります。逆に、思うように投げられていなくともある程度理由がわかっていれば少しは落ち着いて投げられるもの。高校生ならなおさらです。実際本番しっかり投げられるかはさておき、これもそれなりに意味のある役割だと考えています。
続いて②ボールの質ですが、こちらは何かを修正するというよりは、今日の状態を確認した上でどのように投球を組み立てるべきか、という相談をすることになります。たとえばいつもよりストレートの回転数が多いのであれば、ストレートの割合を増やそう、という話になりますし、そうでないのであればチェンジアップやカーブの割合を多くしては、という話にもなります。ここまでやれると、なんかかっこいいですね。笑
ただ、個人的には高校生のレベルで上記のような配球の変更をどこまですべきか、という疑問もあります。こう言ってはなんですが、一般的な高校野球の投手に配球は必要ではないと思っています。変に配球に頭を悩ませ、中途半端な質のボールを投げ込むよりは、思い切って質の高いボールを投げた方が良い結果を生むのではないかと思うからです。
データを見た上で詳細な配球の相談をするよりは、上手く行くかもしれないから頭の片隅に入れておいて、ぐらいのスタンスで話をするべきかな、と個人的には思っています。
3.試合中にも使ってみたいという話
ここまでで、練習&試合前の投球を計測することはできました。あとは試合中の投球を計測すれば、想定しうる全ての状況での投球を計測できることになります。
「ブルペンエース」という言葉があります。文字通りブルペンなら素晴らしい投球をしますが、試合になると実力を出し切れない選手のことを指すそうです。原因としては精神的な問題や実践不足などが挙げられています。
このように、目に見えてパフォーマンスが落ちる事例ならわかりやすいのですが、厄介なのはパフォーマンスの低下があまり現れない選手や、部分的(局所的)に低下する選手です。
Rapsodoの強みとして「可視化」があります。Rapsodoは人間の目では評価しきれないパフォーマンスの低下/上昇を視えるようにしてくれるので、変化が分かりにくい選手も見つけられるようになります。もしかしたら、「お前試合になるとパフォーマンス下がるんかい!」となる選手も新発見されるかもしれませんし、逆に試合になるとアドレナリンが出てパフォーマンスを上げる選手もいるかもしれません。
パフォーマンスが上昇するにしろ低下するにしろ(その是非は一旦置いておいて)、知っている自分の球と異なる球を投げているという事実は知っておく必要があるでしょう。
原因が選手にある場合だけではありません。球場(高校野球なら学校)のマウンドと、ブルペンのマウンドの形状が異なることも原因の一端としてはあるでしょう。この辺りは前章で部長が言及していますので、そちらをご参照ください。
というわけで、ブルペンと試合でのパフォーマンスに違いが出ないか知るためにRapsodoを練習試合で使ってみたいという話でした。
とはいえ、それは無理やろなあ…と思っていたところに、我々の願いを叶えてくれるかのように生まれたのがRapsodo 3.0です!商品はこちらから。
カッコいいデザイン…!(崇拝)
Rapsodo Japan様の商品紹介を一部引用します。
素晴らしい…!(心酔)
まさに試合で使われることを想定した機能になっています。これを使えば、これまで可視化できなかった「本番に強い/弱い」が一目瞭然になります。ブルペンのデータと試合でのデータを突き合わせて分析すれば、本番で自分の能力を何%発揮できているかが分かります。
冒頭にも述べましたが、高校生は自己評価が曖昧です。自己評価を正しく行い、不足している部分を解決していくことは根拠のある自信にもつながります。メンタルが大きな影響を及ぼす野球というスポーツ、特に高校野球において自信の積み重ねはパフォーマンスの安定・向上につながることでしょう。
というわけでRapsodo 3.0を購入して使ってみようという話になるのですが、販売価格は¥1,265,000 (税込)です。お買い得(5年ローン)ですね。ただ、PITCHING 2.0およびHITTING 2.0を下取りに出すことで、PRO 3.0の割引する下取りプログラムがあるようなので、皆さん買いましょう。僕はローンが終わってお金が貯まったら買いますのでお先にどうぞ。
ということで、今回はRapsodoを試合に持って行ってみようという内容でした。
冒頭でも申し上げましたが、本校でも現在試行錯誤しています。ご意見やアドバイスなどございましたら、コメントかリプ、引用リツなどでお寄せいただけると幸いです。
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