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コンフォートゾーン脱出訓練 ーー My Year With Eleanor を読む

一時期、「やってみた」系ノンフィクションが流行ったことがございましてね。まだYouTubeが一般化する前というか、こういう広まり方をする前の話です。実際の自分の体験を、一冊の本にまとめる。

ふーんそれっていわゆるルポタージュじゃないの?って感じですが、伝統的ジャーナリズムとか、そういった肩肘はったものじゃなく、もうほんと「やってみた」としか言いようのないスタイルで、今だったらYouTubeにあげちゃうんでしょうけどね。

英語ではimmersion writingとか言ってることが多いような気がします、「やってみた」系。

で、そのやってみた系ノンフィクション、なぜか、「一年間やってみた」がすごい多かったんですよ。

で、そういう本のタイトルって、だいたいどれも、My Year どうのこうの、ってなってる。もうお約束。

で、そういうジャンルのを、目につく順に買って暇つぶしに読んでた時期があったんですけど、その中の一冊に、Noelle Hancockという女性の書いたMy Year with Eleanorというのがありました。

このハンコックさんは、芸能ゴシップのライターとして生計を立てていたんですが、ありがちな話ですけど、できるからやってるだけで、やりたいからやってるわけじゃない、やりたいこと、ほんとの私はどこ~~~???状態。

I was reminded of a conversation I had a few years ago. I'd been interviewing Joaquin Phoenix for a freelance article when he stopped me and asked, "Is this really what you want to be doing with life? --- "

My Yer with Eleanor

だからといって人間すぐにフレッシュスタートが切れるわけじゃない。彼女も完全に人生の迷子になってます。

 So when I got back to New York, I'd created a Microsoft Word document titled 'My One-Year Plan,' where I could list my goals for the next year. No job meant my future was wide open. Too wide open, as it turned out. Weeks later, the document was still empty. Looking at the white screen now, I felt I was looking at my future. Blank.

My Year with Eleanor

私みたいなおばちゃんからすると、お嬢さん、焦るこたねえ、ゆっくりいきな、って言いたくなるところですが、そうも言っていられないのが現実です。30歳目前、高学歴、一人暮らし、いろいろと思うこともあるでしょう。

そんなとき、彼女は偶然、こんなものを目にします。

While I waited my eyes drifted aimlessly around the café.  --- On the far wall there was a small chalkboard sign featuring an inspirational quote of the day. Today's quote, written in pink chalk and squiggly handwriting, was:
 
     Do one thing every day that scares you.
                 ---- Eleanor Roosevelt

My Year with Eleanor


Eleanor Rooseveltというのは、エレノア・ルーズべルトと読みまして、フランクリン・ルーズベルト大統領の奥さんです。これがまあとんでもない大人物で、政治とか婦人運動とか作家とかいろいろやっててですね、大金持ちに生まれて進歩的な教育を受けていて、大変なリベラルとして知られ、名言も多く残っています。とにかくすんんんごい大物。

そのエレノア・ルーズベルトの、Do one thing every day that scares you. 「一日に一つ、自分ではこわくてできないと思うことをやってみなさい」という言葉に、ハンコックさんは感情を揺すぶられるんです。で、気づくんですよ、

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