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いかのぼり半端者にもムコリッタ

『川っぺりムコリッタ』(2021/ 日本)監督荻上直子 出演松山ケンイチムロツヨシ満島ひかり/江口のりこ薬師丸ひろ子笹野高史緒形直人吉岡秀隆


あらすじ・ストーリー 北陸の塩辛工場に勤める山田は、古い安アパートの“ハイツムコリッタ”で暮らし始める。誰とも関わらずに生きていきたいと願っていた山田にとって、アパートの生活は理想的な環境だった。だがある日、隣人の島田が上がり込んできたことで、日常が一変する。
解説 『かもめ食堂』の荻上直子監督による、ハートフルな人間ドラマ。川沿いのおんぼろアパート“ハイツムコリッタ”に引越してきた孤独な青年が、ひょんなことからアパートの住人たちと関わりを持ったことで、自身の人生を見つめ直す姿を描く。松山ケンイチが主演を務めるほか、共演にムロツヨシ、満島ひかり、吉岡秀隆ら豪華キャストが集結した。

ぴあ

アパートの管理人の満島ひかりが『めぞん一刻』の大家さんみたいな感じの映画か。落語の長屋もののような人情ストーリー。ふらりとやってくる風来坊の松山ケンイチは前科者。その隣人であるムロツヨシが落語者である八つぁんタイプか?

父の遺骨を抱えた前科者が、父との関係を精算する映画か?面白いのは題名で「ムコリッタ」は仏教の時間の単位。1/30日=48分。一日が「ブラフマー」で最小の単位が「刹那」だという。その「ムコリッタ」は幸福な時間という意味もあるらしい。そういう関係性が食卓での関係なのか?「川っぺり」は川沿いということもあるが「変わり者」の掛詞的な感じがする。そんな変わり者同士が同じ空間の時間を過ごすのが「ムコリッタ」なのではないのだろうか?

主人公が働く場所が烏賊の塩辛工場。その辺もちょっと塩辛い人生模様を醸し出している。ラスト近くに上がる「いかのぼり」も俳句的かもしれない。そのあたりの俳諧趣味もいい味を出している。

父の遺骨をどうするか?それに悩む主人公である。そのまま捨てると罪になり、粉にして散骨すれば罪にならないという。本当なのだろう。このへんの不条理観か?葬儀という息子の自立していく通過儀礼的な映画でもある。そのことに大きく関わるのが大家さんである満島ひかりなのか?彼女も内なる孤独を抱えるが最後は立派な大家になっていくのが彼女にとっても通過儀礼となっていくのだと思う。それは大家としての母性みたいなものか?

薬師丸ひろ子が出ていると書いてあったので、彼女の出演シーンを探したが「命の電話」による声の出演だった。つまり境界上にいる母なる声なのだと思った。女神的な。そういうことをひっくるめると自然という母なる川があり、その側で暮らす人々の営みという映画だ。川は氾濫することもあるが普段は癒やしの空間だった。どこにでもありそうな川べりなのが良かった。

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