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あの頃の光溢れる映画館の映画

『エンパイア・オブ・ライト』(2022/イギリス/アメリカ)
監督サム・メンデス キャストオリヴィア・コールマン/マイケル・ウォード/コリン・ファース/トビー・ジョーンズ/ターニャ・ムーディ/トム・ブルック

解説/あらすじ
1980 年代初頭のイギリスの静かな海辺の町、マーゲイト。辛い過去を経験し、今も心に闇を抱えるヒラリーは、地元で愛される映画館、エンパイア劇場で働いている。厳しい不況と社会不安の中、彼女の前に、夢を諦め映画館で働くことを決意した青年スティーヴンが現れる。職場に集まる仲間たちの優しさに守られながら、過酷な現実と人生の苦難に常に道を阻まれてきた彼らは、次第に心を通わせ始める。前向きに生きるスティーヴンとの出会いに、ヒラリーは生きる希望を見出していくのだが、時代の荒波は二人に想像もつかない試練を与えるのだった…。

coco映画レビュアー

イギリスの海辺の映画館で働くオールドミスの女性と黒人青年の恋愛ドラマ。それほどラブ・ストーリーでもないんだが、オリヴィア・コールマンが精神を病んでいく女性の役を好演?している。アカデミー賞でもいいぐらいの演技だけどノミネートされてないのか(アカデミー賞常連だが、これはオリヴィア・コールマンの映画だった)。

映画としては古き良き映画館映画というもので映画館が人々の癒やしの場所であり安らぎの場所であった時代も過ぎてしまったというような。時代的に余裕があった経済成長期じゃなくて、サッチャー時代の財政引き締め、ナショナリズムが出てくる時代で、ヘイトクライムのデモが行われている様子も描いている。

映画館の中年女性は、それまで抑えられない感情があり(例えば映画館の館長の情婦であったり)、そのどんよりした気持ちを晴れやかにしてくれるのが黒人青年であった。

海辺のシーンが素晴らしいというか、海辺の映画館なのだ。韓国小説で『鯨』という作品があったのだが、その中に「くじら映画館」というのが出てくるのだが、なんとなくそんなイメージを持ってしまった。鯨の胃袋の中で夢の世界に浸るような。地方に行けばそんな映画館はあるのだろうか?

むかしよく行った以前の二階がある文芸坐が近い感じだが、もっと大きくていくつもスクリーンがあるシネコンの走りのような映画館か。80年代のイギリスだから、不景気になる前に建てられた立派な建築物が廃墟になる感じか?それでもプレミアム上映会とかやって盛り上げようとする(『炎のランナー』だった)映画産業が斜陽化していく時代の流れを感じる。今もそうだから、監督のサム・メンデスにもそういう昔の映画館を懐かしむ気持ちが強いのだろう。どちらかというとノスタルジー感の映画かもしれない。


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