あの頃の光溢れる映画館の映画
『エンパイア・オブ・ライト』(2022/イギリス/アメリカ)
監督サム・メンデス キャストオリヴィア・コールマン/マイケル・ウォード/コリン・ファース/トビー・ジョーンズ/ターニャ・ムーディ/トム・ブルック
イギリスの海辺の映画館で働くオールドミスの女性と黒人青年の恋愛ドラマ。それほどラブ・ストーリーでもないんだが、オリヴィア・コールマンが精神を病んでいく女性の役を好演?している。アカデミー賞でもいいぐらいの演技だけどノミネートされてないのか(アカデミー賞常連だが、これはオリヴィア・コールマンの映画だった)。
映画としては古き良き映画館映画というもので映画館が人々の癒やしの場所であり安らぎの場所であった時代も過ぎてしまったというような。時代的に余裕があった経済成長期じゃなくて、サッチャー時代の財政引き締め、ナショナリズムが出てくる時代で、ヘイトクライムのデモが行われている様子も描いている。
映画館の中年女性は、それまで抑えられない感情があり(例えば映画館の館長の情婦であったり)、そのどんよりした気持ちを晴れやかにしてくれるのが黒人青年であった。
海辺のシーンが素晴らしいというか、海辺の映画館なのだ。韓国小説で『鯨』という作品があったのだが、その中に「くじら映画館」というのが出てくるのだが、なんとなくそんなイメージを持ってしまった。鯨の胃袋の中で夢の世界に浸るような。地方に行けばそんな映画館はあるのだろうか?
むかしよく行った以前の二階がある文芸坐が近い感じだが、もっと大きくていくつもスクリーンがあるシネコンの走りのような映画館か。80年代のイギリスだから、不景気になる前に建てられた立派な建築物が廃墟になる感じか?それでもプレミアム上映会とかやって盛り上げようとする(『炎のランナー』だった)映画産業が斜陽化していく時代の流れを感じる。今もそうだから、監督のサム・メンデスにもそういう昔の映画館を懐かしむ気持ちが強いのだろう。どちらかというとノスタルジー感の映画かもしれない。
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