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時代の流れにおいておかれた子役スターの悲喜劇。

『リコリス・ピザ』(2021/アメリカ)監督ポール・トーマス・アンダーソン 出演アラナ・ハイム/クーパー・ホフマン/ショーン・ペン/ブラッドリー・クーパー/ベニー・サフディ/トム・ウェイツ


解説/あらすじ
舞台は1970年代のロサンゼルス、サンフェルナンド・バレー。実在の⼈物や出来事を背景にアラナとゲイリーが偶然に出会ったことから、歩み寄りすれ違っていく恋模様を描き出す。共演はショーン・ペン、トム・ウェイツ、ブラッドリー・クーパー、ベニー・サフディと各界のレジェンドが集結しているのも⾒逃せない。

映画では1970年代のロサンゼルス、サンフェルナンド・バレーとされているのだが、その前に『ローレル・キャニオン 夢のウェストコースト・ロック』を観ていたので、重なってしまった。60年代のカッコいいロック映画の裏側的映画のように思えた。

イケてない60年代のバカップル映画。「カリフォルニア・ドリーミング」の時代の子役スターの凋落とユダヤ人女性の這い上がれなさ。子役スターの悲劇(『オズの魔法使い』主演のジュディ・ガーランドの悲劇が元ネタ?)が喜劇的に描かれていて面白い。

ヤッピーの市長選のシーンは『タクシー・ドライバー』を連想した。その他、『サタディナイト・フィーバー』のジョン・トラボルタ・ファッションとか。懐かしの映画のパロディのようなシーンが多数。バーバラ・ストライサンドの『スター誕生』は、実在するプロデューサーの話だという。

朝鮮戦争のヒーローのスターがバイク・アクションを見せるシーン。誰かモデルがいると思うのだが、よくわからん。グレース・ケリーと共演したアクションスター?ゲーリー・クーパー(ウィリアム・ホールデンだった)かな。それを演じているのが、ショーン・ペンだった。そして友人のプロデューサー役にトム・ウェイツと映画愛が伝わってくる。

ポール・トーマス・アンダーソン監督の幼少期の思い出を青春ラブ・ストーリーで包み込んだ癒やしの映画。藤谷文子が「フィールド・グッド・ムービー」と言っていたのだが。1973年ということなんだが、村上春樹『1973年のピンボール』も感じさせるのは、喪失感だろうか。


パンフレットにはあの当時の懐かしのポップソングが並んでいるらしい(パンフレット買ったことないのでわからないがそういう情報もある)。そういう夢(バブル)がニクソン(オイル)・ショックで終わっていくのが、次なる展開の『タクシー・ドライバー』(右傾化した暴力性)なのだ。そう考えると今の時代にも通じる映画だ。

私が一番耳をそばだててしまったのは、チコ・ハミルトン「ブルーサンズ」だった。その朝に聞いていた。その雰囲気が50年代だなと思った。懐かしの50年代ということだ。アメリカン・ファミリーがハリウッドで喧伝されていた時代の青春映画なのだが、村上春樹的になると刹那感が漂うのもそんなところか。時代の流れについていけない子役スターの喜劇。

つなげ方がエピソード記憶というのも面白い指摘だった。こういう映画はいろんな人の解説を聞いてみたくなる。



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