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シーフードは食べられなくなるかもしれないドキュメンタリー

『ゴースト・フリート 知られざるシーフード産業の闇』(2018/アメリカ)監督シャノン・サービス/ジェフリー・ウォルドロン 出演パティマ・タンプチャヤクル・トゥン・リン/チュティマ・シダサシアン

解説/あらすじ
あなたの買っているシーフードやペットフードは「海の奴隷」が捕ったものかもしれない。信じられないかもしれないが、現代も奴隷が存在し、世界有数の水産大国であるタイには、人身売買業者に騙されるなどして漁船で奴隷労働者として働かされている「海の奴隷」が数万人存在するといわれている。日本は決して無関係ではない。日本はタイの水産物輸入で世界第二位で、ツナ缶やエビなどを輸入している。キャットフードの約半分はタイ産だ。安さの裏側で犠牲になっている人々が存在する。本作は、タイの漁船から離島に逃げた人々を捜索し、救出すべく命がけの航海に出るタイ人女性、パティマ・タンプチャヤクル(2017年ノーベル平和賞ノミネート)たちの活動を追う。奴隷労働5年、7年、12年──。ミャンマー、ラオス、カンボジアなど貧困国から集められ、 売り飛ばされた男性たちをパティマたちは救うことが出来るだろうか?

以前見た『ボヤンシー』はこの映画のフィクション版だったのか?『ボヤンシー』が2019年だからこの映画の直後に作られたのだ。

『ゴースト・フリート』はドキュメンタリーで2017年ノーベル平和賞ノミネートされたタイのパティマ・タンプチャヤクルの活動を中心に描いていて、現代の奴隷船のシーフード産業の闇を暴き出す。スーパーで売られている安い魚やシーチキンなどの缶詰、猫缶のペットフードの類の低下価格商品は、誘拐した者を船上に住まわせて奴隷労働させる。陸に上がることはなく(逃亡するから)、捕れた魚は別の船に積み替える。つまり死ぬまで帰れない奴隷として危険な作業に従事するのだ(巻き上げのワイヤーで手を持っていかれたり)。それも一晩中、眠らないで働かされる。眠らせない為に覚醒剤とか船長の鉄の制裁とか。

日本でも蟹工船の悲劇があったが、あれはまだ奴隷ではなかった。それでも長時間労働の低賃金労働者の悲劇なのだが。それが現代に、まさか奴隷制はとっくに廃止されたと思っていたのに、こんな形で存続しているなんて。スーパーの安売りのからくりはそういうことだった。

またタイ沿岸では魚を取りすぎて(底網漁だからなんでもかんでも)、遠洋にインドシナの海で延々と作業させられる。誘拐して、長い人で10年とか奴隷生活をさせられている。それでもやはり逃亡する人はかなりいて、海へ飛び込んで命さながら島に逃げ込む。捕まらない為にジャングルに隠れて生活をするのだ。

そんな人々を探し出して、タイに返す支援をしているのが、タイの女性であるパティマ・タンプチャヤクルさん。癌にかかって生死をさまよい、生きていたのでその命を他者の為に役立てようと思ったのだそうだ。なかなかこういうことは出来ない。だから、ノーベル平和賞にもノミネートされたのだろうけど。

映画は、島へ逃げ込んだ青年が何年も帰れずにそこで生活していた。現地妻もいて子供もいるのだが、人にはタイに帰りたいと言っていたという。その青年を捜して、フェイスブックで父を捜し、家族と再開させる。これは出来すぎだと思うが、うまく編集している。思わず泣けた。

ほとんど奴隷とされた人は悲惨な状況しかないわけで、この親子対面物語を入れることでほっこりとしたドキュメンタリーになっているのである。

関連映画:Netflix『Seaspiracy:偽りのサステイナブル漁業』



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