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エンタメとしての戦争映画。

『激動の昭和史 沖縄決戦』( 1971/日本)監督 岡本喜八 出演小林桂樹/丹波哲郎/仲代達矢/酒井和歌子/大空真弓/加山雄三/池部良

Amazon Primeで昨日まで無料で観れたので再見。朝はやく観たのでけっこう、うとうと途中眠りながら観ていた。それでも群像劇なのでそのシーンごとに見せ場があり、エンタメ映画でありなおかつ反戦(戦争)映画なのだ。

1971年の映画だから当時の娯楽(エンタメ)映画として、岡本喜八監督だったのかもと思える。脚本が新藤兼人で、群像劇で本土の足止めとして沖縄が犠牲になった過程を描く。また特撮としてゴジラを制作した円谷英二の元で助監督をしていた特撮の中野昭慶の起用も大きい。

また映画産業が存続を賭けたシリーズとして「東宝8.15シリーズ」と銘打ってオールスターキャストのエンタメ映画を作ろうとしたこともあったようだ。第一作は、これも 岡本喜八監督『日本の一番長い日』でこちらは残虐シーンをふんだんに盛り込んだスプラッター映画のエンタメ作品となっている。その中に戦争に対する主観映像ではなく、客観的な視線があるのだ。

なによりも岡本喜八の喜劇的センスがけっこう重い内容なのに最後まで苦痛なく見通せてしまう。その中に無論残虐シーンはあるのだが、笑いの要素で中和させている。その微妙な塩梅がこの映画の持ち味ではないのか?最近のお涙頂戴の主観映像とは違う客観映画の大作。

『新世紀エヴァンゲリオン』の庵野秀明が100回以上見たという。そのモチーフに沖縄戦がある。鉄血勤皇隊は14歳ぐらいの少年兵を使っていたのだ。だからかつての日本の姿を暗示させるのだ。戦車の下に潜り込んで自爆するシーンなど、まさにエヴァの悲しさそのものではないか?

沖縄県民の約3分の1が亡くなった(史実)沖縄戦の地獄絵図を日本軍の軍人や政府高官と沖縄の戦争を利用して商売しようとするものや悲劇の只中にいるひめゆり、鉄血勤皇隊までを主観映像というよりも客観映像で見せる。最近のお涙頂戴の日本映画とはその点で違う、様々な思考の問いに起きる悲劇を描いているのだ。

ラストの戦闘シーンの凄まじさとかそれこそスプラッターやゾンビ映画かいなと思うシーンもあるのだが、エンタメ系戦争映画としては案外いいかもしれない。終盤で一人一人亡くなっていくというのはドラマ的には盛り上がる。

『日本のいちばん長い日』と共に大作だが、こちらは女と子供も出てくるので、こちらのほうが群像劇としては多層性に富んでいる。沖縄の民間人を楯にするような戦争だったわけで、沖縄を日本の航空母艦にも喩えていたり(後に日本列島がアメリカの不沈空母に例える総理大臣もいた=中曽根元総理)、米軍の無差別殺戮も酷さも描いている。

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