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『システム・クラッシャー』という見守りフクロウが居ない巣の中の少女の映画

『システム・クラッシャー』(2019年/ドイツ/カラー/ビスタ/2h05/DCP)監督・脚本:ノラ・フィングシャイト 出演:ヘレナ・ツェンゲル、アルブレヒト・シュッフ、リザ・ハーグマイスター、ガブリエラ=マリア・シュマイデ


怒りだしたら、手が付けられない どこにも居場所のない9歳の女の子
幼少時に父親から受けた暴力のトラウマで、怒りの制御ができない9歳のベニー。行く先々でトラブルを起こしては、保護施設をたらい回しにされる彼女を、ひとりの職員が「森で3週間、1対1で世話をする」と提案する。小さな体を震わせて怒り続ける少女の物語。

ジャック・二コルソンがアカデミー賞を取った映画『カッコーの巣の上で』を連想した。ただあの当時のアメリカは電気ショック療法が行われて、精神医療も権力的な構造を暴き出すような映画だったが、今回の映画はそれとは違うのだろが、少女が拘束されて薬で朦朧とさせられる絶望感の目が、伊藤比呂美が保護犬を飼うときに、野生故に一番絶望した目の子犬を保護したという話も思い出す。

彼女の絶望は母親に捨てられたことによるのが大きいのだが、彼女を救いたいと思った青年と山に行き、こだまをやってごらんというのに、「ママ」をくり返しこだまが聞こえる前に叫び続ける少女の絶望感が良く出ていると思った。そこで彼女は母親から嫌われているというのだった。

青年との繋がりがカッコーではなくフクロウ。フクロウの巣を見に行くのだが居なかったのだ。青年は森の見張り番というような存在のフクロウになってあげたかったのかもしれない。ただそんな青年からも見放されてしまうのは青年には別の守らなければならない家族があったのだ。

「システム・クラッシャー」というホラー映画のようなタイトルで、パニック障害を起こす少女もモンスターなのだが、それはやはり野犬となって飼い犬にするには難しいということなのか?犬と吠え合う姿や、ラストでの彼女の寄り添うのがそういう野良犬だったのが印象深い。

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