「ある男」より「ある女」がいい
『ある男』(2022/日本)監督石川慶 出演妻夫木聡/安藤サクラ/窪田正孝/清野菜名/眞島秀和/小籔千豊
平野啓一郎の小説の映画化。小説はけっこう錯綜として、それを映画化した監督の手腕は感じられる。別の男に成りすました男とそれを調査する男の二重写しの展開の緊張感がいい。成りすまされた男がなかなか出てこないのがミステリー性を醸し出す。じれったいぐらいに。
ただラストのミイラ取りがミイラになるのはやり過ぎのような気がした。原作通りなんだろうけど。「ある男」の立場が入れ替わることによってなくなるではないか。それに弁護士をなげうって素性のわからない男になるというのはリアリティがないような気がする。平野啓一郎の文学的美学のような気がする。
あと柄本明は最近いつも同じような役柄で辟易する。確かにトリックスター的な役柄なんだが。けっこう見飽きてしまうパターンだった。
ただそれ以外のキャスティングが素晴らしいのだ。やはり安藤サクラの目を見開いて一筋の涙を流す演技が秀逸なのだ。泣きの安藤サクラは代名詞になるぐらい。最近の邦画では予告編では必ず泣きのシーンがあるがみんな演技過剰で安藤サクラのように静かになく演技は引き込まれる。
妻夫木聡は無難な弁護士役で、その佇まいが落ち着いた感じで良かったのかな。声を荒げるシーンがアクセントとして印象的だった。窪田正孝はあまり観ていないのだがこれは代表作になるのではないのか。
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