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拭えない血とペパーミント・キャンディー

『ペパーミント・キャンディー 4Kレストア・デジタルリマスター版』(韓国/1999)監督イ・チャンドン 出演ソル・ギョング/ムン・ソリ/キム・ヨジン

解説/あらすじ
1999年、春。40歳のキム・ヨンホ(ソル・ギョング)は、旧友たちとのピクニックに場違いな恰好で現れる。そこは、20年前に初恋の人スニム(ムン・ソリ)と訪れた場所だった。仕事も家族もすべてを失い、絶望の淵に立たされたヨンホは、線路の上で向かってくる列車に向かって「帰りたい!」と叫ぶ。すると、彼の人生が巻き戻されていく。自ら崩壊させてしまった妻ホンジャ(キム・ヨジン)との生活、互いに惹かれ合いながらも結ばれなかったスニムへの愛、兵士として遭遇した「光州事件」…。そして、記憶の旅は人生のもっとも美しく純粋だった20年前にたどり着く…。

『バーニング』のイ・チャンドン監督の2000年の韓国映画。70年代のATG風な、最初はちょっと古いスタイルかなと思ったが電車が逆行して走る幕間で1999年の現代から1980年まで遡っていくストーリー。一人の男の軍政に翻弄された人生。光州事件とか。

「徴兵制とペパーミント・キャンディー」という副題かな。ペパーミント・キャンディーで象徴されるものが映画の中で青春時代の刹那さという感じでラストは号泣。それもソル・ギョング(『殺人者の記憶法』の人か。)の駄目な中年男から純情な青年まで見事に演じている。(2019/03/30)

アマプラで4Kレストア・デジタルリマスター版。この映画は、韓国映画のターニングポイントとなった作品だ。今見ると最近のフェミニズム映画に慣れてしまっているから古臭い感じもするが、演出の仕方が斬新だ。最悪に陥った現在から少しづつ過去を紐解いていく。ほとんど最後の方にならないと光州事件が原因とはわからない作りになっている。

解説で光州事件と分かるが、韓国に詳しくない日本人は光州事件の意味はよくわからないと思う。それでも何か重たいものを背負わされた時代の暗部を感じるのだ。その対象となるのがペパーミントの純粋な時代。それを無惨にも踏みつけてしまう兵役時代。どんどん汚れていくのを一枚づつ剥がしていくのだ。精液や冷汗やアルコールというもの。このへんならば日本人でも社会人になって経験することかもしれない。

しかし、最悪なのは拭えない血が彼の身体に染み付いてしまっているのだ。それはあまりにもペパーミントの爽やかさとは対照的である。何より歌と共に時間が流れていく演出もいい。フォークソングから軍歌、カラオケ(ジャズ風)。

間違いなく韓国映画で一番好きな映画だ。


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