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歴史は立ち位置により変わる

『フランス史10講』 柴田三千雄(岩波新書)

フランク王国、百年戦争、絶対王政、フランス革命、一九世紀の革命、二つの世界大戦、「五月革命」など二千年余の激動の歩みを一冊でたどる。教会と国家、中間団体、名望家国家、政治文化など重要なテーマも掘り下げながら、「ヨーロッパ地域世界の中のフランス」という視点を軸に、フランス史の独自性を描き出す斬新な通史。

岩波新書の10講は、各国あるのだが、「講」と付いているだけあって学問的な趣き。中公新書ににたような物語シリーズ(『物語 フランス革命』とか)あるがこっちは小説っぽくて、学問的に極めたい人は岩波新書の方が基礎学的でいいんだろうが、ちょっととっつきにくい。

この『フランス史10講』は他のヨーロッパの国も出ていて一冊だけで理解しようと思っても、フランスだったら領土問題でイギリスとドイツが影響してくる。そしてソ連の影響。そこは日本のように島国でないのでわかりにくさがある。

一番興味あるのがやっぱ「フランス革命」か?そもそもマルクス『ルイ・ボナパルトのブリュメール18日』を読みたいからその前後を予習しようと思ったらいきなり「マルクス史観はソ連の崩壊で取らない」とか述べている。「歴史」とは何か?という根本的な疑問。立ち位置によって歴史感も変わるのだとあらためて思い知らされる。

一番あれっ?と思ったのはフランス革命を明治改革と同列に資本主義のブルジョワ革命と述べてしまうこと。構造がどうのこうのとわかりにくい。ブルジョア革命が日本では市民革命になったとか。実際は、ブルジョア革命、農民革命、市民革命が混然となって、貴族階級を打倒したが革命段階では共闘していたものが、革命と共に分裂し始める。それで結局、『ルイ・ボナパルトのブリュメール18日』という反動政治が始まるのだ。

ブルジョワ=市民と翻訳されたことにより市民が主体となったという勘違い。それは68年革命も「革命」でない。「パリ5月危機(権力側の立場)」と書かれているのも事実だった。香港の「雨傘運動」から始まった民主化運動は「革命」になるのか「暴動」になるのか?大澤真幸『社会学入門』で傍観者の社会学なのか、介入していく社会学なのかという問題があった。

関連書籍:『物語 フランス革命』


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