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4月の読書まとめ

ベスト5

『消失の惑星【ほし】』ジュリア フィリップス, 井上 里 (翻訳)

『裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち』上間陽子 (著), 岡本尚文 (写真)

『戦争における「人殺し」の心理学』デーヴ グロスマン, 安原 和見 (翻訳)

『悪の華』ボードレール , 堀口大學 (翻訳)(新潮文庫)

『我が愛する詩人の伝記』室生犀星 (講談社文芸文庫)


2022年4月の読書メーター

2022年4月の読書メーター
読んだ本の数:19冊
読んだページ数:6541ページ
ナイス数:490ナイス

https://bookmeter.com/users/56191/summary/monthly/2022/4
■消失の惑星【ほし】
ソ連時代からプーチンのロシアに変わるカムチャッカ半島の話で、世代間ギャップのディスコミュニケーションを描いている。チェーホフのスタイルを汲んでいると思うが、働く女性は自立していく女性である。それはロシアの男性中心主義とは反するものだ。ただ希望は、女性同士の繋がり、シスターフッドと呼べるものなのか?繋がっているようで、離れ離れに。それはカムチャッカ半島から伸びるクルリ諸島のようで、北方四島もその先に見えそうで見えない(実は日本も影響を与えている)。また北海道の別の先にはサハリン(囚人の)島もあった。

読了日:04月30日 著者:ジュリア フィリップス
https://bookmeter.com/books/17219897

■物語 ポーランドの歴史 - 東欧の「大国」の苦難と再生 (中公新書)
「抵抗(蜂起)と挫折」のポーランド史は、ヨーロッパの中でもっとも重要性を帯びるのは対ロシアとの関係である。西側とロシアの中間に位置し、侵攻と抵抗の歴史はそのままヨーロッパの歴史になっていく。ウクライナ侵攻で難民が多く逃れてくるのもポーランドだ。ポーランドはわかりにくい国だが、今後ますます目が離せない国になっていくだろう。以下、https://note.com/aoyadokari/n/n5824abb36dd6
読了日:04月28日 著者:渡辺 克義
https://bookmeter.com/books/12015838

■増補 民族という虚構 (ちくま学芸文庫)
最近、司馬遼太郎の歴史小説を史実と受け取るのを見受けて興味を持つ。『坂の上の雲』はNHK大河ドラマでも放映され、司馬遼太郎は敗戦時に「日本人とは」という感情をそれほど歴史的に重要ではない青年に感情移入させた。それは文学なんだと思う。そういう物語を必要とされるのは、敗者であった日本人には必要だったからだろう。自虐史観というのは、ある面正しく、敗戦の歴史だったわけで、戦後学んだのは民主主義という勝者の歴史だった。以下、https://note.com/aoyadokari/n/n4af425c50f76
読了日:04月27日 著者:小坂井 敏晶
https://bookmeter.com/books/3076212

■NHK 100分 de 名著 ハイデガー『存在と時間』 2022年 4月 [雑誌] (NHKテキスト)
ハイデガー『存在と時間』は昔本を買ったけど読めなかった。それ以来哲学が嫌いになったのかもしれない。言葉の定義とか面倒。結局、言葉が言葉を産み(拡大させ)、絶えず後ろ後ろに後退していく感じ。そして「存在」なんだ。お前は、そこにいるでいいと思う。ハイデガーはいないけど。だから、問題なのか?言葉の意味と実際のものは一致しない。ものは時間と共に変化を伴うから、いつ(時間)のものなのか?そこが問題。以下、https://note.com/aoyadokari/n/n3b38fdc1e55c
読了日:04月26日 著者:
https://bookmeter.com/books/19601625

■ユリイカ2013年1月臨時増刊号 特集=百人一首 三十一文字にこめられた想い
ユリイカのこの特集号が出たのは、映画『ちはやふる』で競技カルタとしての百人一首のブームを文学のほうに結びつけたかったようでもある。まあ、競技カルタをやるにしても、百人一首を覚えなければならず、それも大変なのだった。暗記することで型を身に着け、意味は後からついてくるという主張をしているのが、「「型」という思想 和歌とともに守り続けてきたもの」冷泉為人のインタビュー。藤原定家から代々伝わる歌人の家元みたいな人。以下、https://note.com/aoyadokari/n/n4c41a5fd16f1
読了日:04月24日 著者:冷泉為人,馬場あき子,水原紫苑,末次由紀
https://bookmeter.com/books/5832711

■歴史のなかの自由―ホメロスとホッブズのあいだ (中公新書)
西欧社会における自由の変遷とその考察。その中心には絶対権力としての王や神の下での法があった。自由主義の自由が単に解放思想ではなく、西欧化の中で権力の下にある自由であり、やがてグローバル化によって資本経済中心の新自由主義を生み出すことになる。ホメロス、ギリシアのポリス、フランスのモンテスキュー、ホッブスによる自由論の展開。以下、https://note.com/aoyadokari/n/nc201d4319c29
読了日:04月22日 著者:仲手川 良雄
https://bookmeter.com/books/1587697

■裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち (at叢書)
著者は沖縄風俗調査で沖縄に帰ってきた。米軍基地近くの荒れていた中学時代。彼女らは学校の窮屈な管理教育の中で、学校に馴染めない少女たちは不良少女と呼ばれ、早熟な性体験をする。無関心な親たち。そんな中で彼女の家庭のように裕福な者たちは沖縄を出て、内地(日本)へ逃げていく。逃げる場所がない基地に囲まれた少女たちは、あまりにも早く大人になることを求められて基地の街のルールに染まっていく。以下、https://note.com/aoyadokari/n/n04b41d88f1c0/edit
読了日:04月22日 著者:上間陽子
https://bookmeter.com/books/11463597

■武器としての「資本論」
現在の社会分析としてはけっこう面白いと思うのだ。ただ机上の理論というか、実践するにはあまりにもファンタジーすぎないか?『資本論』が未完だったのも、マルクスの中でいろいろ矛盾が出てきたのではなかろうか?あと言葉が日常語ではなく専門用語だから、エリートしかわからない。「商品」「包摂」「余剰価値」「本源的蓄積」「階級闘争」。まあ、一般的な労働者がわかるのは「商品」ぐらい。それも正しく説明しろと言われても困る。一番のキーワードは、階級闘争だろう。唯物史観。ヘーゲルのアウフヘーベン(止揚する)を踏まえている。
読了日:04月20日 著者:白井 聡
https://bookmeter.com/books/15501126

■失われた時を求めて〈6 第4篇〉ソドムとゴモラ 1 (ちくま文庫)
「ソドムとゴモラ 」シャルリュス男爵と仕立屋ジュピヤンの同性愛の現場というより花と蜂の観察日記で50ページぐらい描写するとは。その後にゲルマント大公夫人のサロンのパーティーへ。これがソドムの入り口であるが、語り手は同性愛者ではなく、プルーストが同性愛者だったことからも語り手=プルーストとするのは無理がある。作家は作品の中に現れるとしたサント=ブーヴのバルザック批評の批判の為に書かれたのだから当然か?しかしまったくないかと言うとそれも違うであろう。どこかしら作家の趣向は混じってしまうものなのかとも思う。
読了日:04月19日 著者:マルセル プルースト
https://bookmeter.com/books/17920

■戦争における「人殺し」の心理学 (ちくま学芸文庫)
「戦いに際して兵士の15~20%しか発砲しない」という調査報告はどこにも存在しないので、この本は嘘であるという論調を見たのだが、ただ全てが嘘だったというのは無理があるように思える。一部が嘘だったとしても他の資料はどうなのか?実際に彼の資料から米軍が戦争に対して、無慈悲に人を殺せるプログラムを作っている事実もある。ベトナム戦争では、95%が殺人を出来るように訓練されたとある。以下、https://note.com/aoyadokari/n/ndaa2a7838770
読了日:04月16日 著者:デーヴ グロスマン
https://bookmeter.com/books/564956

■人間ぎらい
1666年作ということだからフランス革命の前、ルイ14世の時代だった。ヴォルテーヌより前の時代、ラシーヌと同時代ということ。ラシーヌの古典悲劇に比べ軽薄洒脱な宮廷(サロン)喜劇。小話的なアリストテレスの三一の法を遵守しているようであるが、一つの場所、一日の時間、一つの筋というのはラシーヌよりわかりやすい。コントの前身である。当時の貴族サロン批判の話で、文化的なスノッブなおしゃべりな女を喜劇的にコントにしたのである(後のプルーストと通じるところがあるが、こっちは小話である)。
読了日:04月16日 著者:モリエール
https://bookmeter.com/books/6669674

■悪の華 (新潮文庫)
ベンヤミンの『ボードレール』を読んで、ボードレールというよりは彼が描いたパリに興味を持ったのだ。それはまだ近代化途上のパリ、下水道が完備されずに汚物の臭いが溢れるが昼間はパサージュに閉じ込められた光溢れる空間だが、その先の路地を入ると街灯(ガス燈)に揺れる夜の街。4/9がボードレールの誕生日だということで、引き続きつらつら読んでいたら1984年の印が。まだ二十歳を超えたぐらいでこれを読んでいたらしい。ほぼ40ぶりに振り返るとボードレールが死んでしまった歳を過ぎてしまった。何たる不覚!もう、喜劇の世界だ!
読了日:04月13日 著者:ボードレール
https://bookmeter.com/books/565650

■初版 金枝篇〈上〉 (ちくま学芸文庫)
金枝とはの宿り木(やどりぎ)のことで、この書を書いた発端が、イタリアのネーミにおける宿り木信仰、「祭司殺し」の謎に発していることから採られた。日本の天皇=神についても出ているが大国主や武将(御上様)を天皇と一緒にするなど誤った解説も見受けられる。

それだから駄目だというレビューを読んだがそういうことではない。一神教の神に対しての宿り木の神なのだ。接ぎ木される神の思想は、日本でも例えば古事記で描かれる日本神話の神に民間信仰の神が重ね合わせて、多神教であるはずの神道が皇室神道に置き換わる。
読了日:04月11日 著者:ジェイムズ・ジョージ フレイザー
https://bookmeter.com/books/18763

■我が愛する詩人の伝記 (講談社文芸文庫)
近代詩の中心的人物の室生犀星が出会った詩人たちのエピソード集。ただの伝記集ではないのは、詩作のこぼれ話も含んでいるので、当時の詩人たちの詩に対する熱意や関係性も伺えて面白い。室生犀星は何よりも日本の近代詩の頂点という朔太郎との義兄弟的雰囲気があったようで、あの時代の『仁義なき闘い』で言えば、菅原文太の一匹狼に対する梅宮辰夫のポジションかな。詩人の想い出と共に詩が掲載されているのがいい。それも室生犀星好みの詩なのだろうか?
読了日:04月09日 著者:室生 犀星
https://bookmeter.com/books/11083968

■死刑囚最後の日 (光文社古典新訳文庫)
社会派映画や読書をしても世界は変わらない。だから意味がないというわけでもなく、例えばユゴー『死刑囚最後の日』が発表された時は、ギロチン全盛時代にあって、それでもユゴーはこの本を書いたわけだ。圧倒的多数は死刑制度廃止を考えようともしなかったし、死刑を見世物として楽しんでいたりもした。フランスで死刑制度が廃止されるのは、1981年だ。それまでの間人々が無関心のままでいたのかと言うとそうでもなく、脈々と関心を持つように働きかけた人がいたということ。
読了日:04月08日 著者:ユゴー
https://bookmeter.com/books/13703682

■フェードル アンドロマック (岩波文庫)
ラシーヌの古典悲劇は、ホメロスやギリシア悲劇から着想を得て、アリストテレス『詩学』(古典悲劇の教則本)を踏まえて書かれている。その特徴は詩であること(韻文)。「三単一」の法則がある。時間が現実と一致、場所も同じ、筋が統一。その他にもあるがここでは割愛。シェイクスピアに慣れているとまどろこしい。一番はカタルシス(浄化)の劇で害毒を吐き出す効用を狙ったもの。『フェードル』はまさにフェードルの欲望(性欲)が害毒なのです。以下、https://note.com/aoyadokari/n/nadc141633c19
読了日:04月07日 著者:ジャン ラシーヌ
https://bookmeter.com/books/19861

■物語 パリの歴史 (講談社現代新書)
たぶんパリには行く予定も行ったこともないのだが、パリについてはすごく興味を持ち始めている。それは、主に文学のパリなのだが、最近プルーストやベンヤミンで開眼されたわけだった。
 この新書の著者は、プルースト『失われた時を求めて』の翻訳者であり、興味を持って購入していた。すぐには読まないで積読状態だったのは、観光案内のような紹介が帯に書いてあったので、すぐには読まなかった。
 ただここで書かれているのはパリの歴史から見た観光案内で、分類としてはパリの歴史エッセイの部類だと思う。
読了日:04月06日 著者:高遠 弘美
https://bookmeter.com/books/15003564

■失われた時を求めて〈5 第3篇〉ゲルマントのほう 2 (ちくま文庫)
『失われた時を求めて』高遠弘美 訳(光文社古典新訳文庫)では6巻目でヴィルパリジ夫人のサロンに招かれた(ここまでは読んでいた)後に、祖母が病気になり亡くなってしまう。サロンでのどうでもいいスノッブな雰囲気とは対称的な近親者の死。そして、いきなり祖母の死でした。けっこうドタバタ劇風。ゲルマント公爵の場違いの訪問とか思いやりのなさ。ゲルマント公爵の自己中心的な貴族性を露わにしてます。そういえば祖母は誰に対しても思いやりがある人と描かれています。とくに病弱の語り手には。
読了日:04月04日 著者:マルセル プルースト
https://bookmeter.com/books/18351

■パサージュ論 ((三)) (岩波文庫 赤 463-5)
第三巻は、k~pまでのキーワードについて、ベンヤミンのメモ書きと書物からの引用で成り立っています。パーサジュというのは、アーケードの中の遊歩道でその両脇に出店が並んでいる感じです。正式なブランド品じゃなく、バッタモンのカラフルさ。それはベンヤミンの引用が名著によるものではなく、ただベンヤミンの関心をよぶものを揃えているからです。以下、https://note.com/aoyadokari/n/n61859bfea227
読了日:04月01日 著者:ヴァルター・ベンヤミン
https://bookmeter.com/books/17755798


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