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面倒な愛

『LOVE LIFE』(2022/日本)監督・脚本:深田晃司 出演出演:木村文乃、永山絢斗、砂田アトム、山崎紘菜、嶋田鉄太、三戸なつめ、神野三鈴、田口トモロヲ

解説/あらすじ
愛する夫と愛する息子、幸せな人生を手にしたはずの妙子に、ある日突然、降りかかる悲しい出来事、そこから明らかになる本当の気持ち。そして彼女が選ぶ人生とは…。矢野顕子の同名楽曲をモチーフに、「愛」と「人生」を描いた人間ドラマ。

coco映画レビュアー

人間関係のドラマなんだが、けっこう歯がゆさがある。微妙な空気感というか、子連れで再婚した夫婦と目の前の団地?に住む夫の両親。嫁と舅の関係が良くない子供のパーティから始まる。市役所の福祉課に務める夫とボランティアのホームレス支援をしている妻と立派すぎるのだが、家族間は上手く行ってない。夫の母親が舅と嫁の間に入ることで、幸福な家族を演じているような関係なのだ。

それは夫の元カノが両親に好かれていたこと。突然の別れと子連れと結婚というので、両親にはもやもや感があったのだ。そしてそのパーティに元カノが出席することになっていたが途中で耐えられなく逃げてしまう。

こういう関係の緊張感の中での子供の事故死。夫の母親は子供を家に連れて行くことに反対する。昔住んでいた場所を汚されたくないのだという。逆に夫が宥めて場は治まるが人間関係の複雑さが息苦しい空気感。

行方不明の韓国人の夫が出てきて、物語は大きく変わる。いきなり葬儀場に入ってきて息子と対面すると、元妻をいきなり平手打ちにするのだ。明らかに場違いな男なのである。そして彼は聾唖者でもあった。ただ主人公の妻はそこで号泣して感情をあらわにするのである。

彼とコミュニケーションが取れるのは元妻しかいなかった。日本での生活はホームレスで生活保護申請をしたいという。
最初はそれほど関わりたくなかった妻だったが市役所の夫は仕事柄、通訳して面倒を見てくれると助かるという。このへんも微妙な関係だった。

そのうちに夫の両親は別の所に引っ越し、空き部屋に元夫を住まわせる。明らかに過剰な関わりあいになってしまっている。そんな妻と元夫の関係を知らず、自らも元カノとの逢引をしている複雑な関係になってくる。そして夫は妻と元夫の韓国人が自分に黙って親の部屋に住まわせていちゃつくろころを目撃してしまう。この辺の舞台の作り方とか上手いと思う。向かい合っている団地の部屋で、人間関係の駆引きがあるのだった。夫は感情的になり怒鳴り込んでいくが妻はいない。元夫も聾唖者だから夫の怒りは聞こえない。

なんでこんな面倒な関係性の映画なのだろうか?今の日本の繋がりはもしかしたらそういう面倒な関係性の方が圧倒的に多いのかもしれない。自我を押し通すよりも相手の身になって考えるという、それは確かに人を傷つけまいとすることなんだが、本心はみんな隠しているのだ。その本心の嫌な空気感は、争いがない分よけい陰湿な感じになってくる。争いがないわけでもなかった。それが出てくると抑えようとしてしまうのだ。しかし押さえられない気持ちが出てきてしまう。

韓国人の夫の身勝手さ。それは韓国の息子の結婚式に会いに行くのに、父が危篤だと嘘をつくのだ。その為の旅費まで面倒をみたのに、妻が同行するという。夫は耐えられるわけがないのだが、妻は強引に行ってしまった。

そして、韓国では、日本人と韓国人の感情の出し方の違いを知ることになる。韓国人は感情的に激しいのだ。それでもその感情爆発の後に晴れやかさがあるような。そのシーンを象徴するのがにわか雨だった。日本人の妻は元夫に付き添いながら、そこには別の家族の姿があるのを知る。結婚式にのこのこ登場する元夫への元妻の激しい怒り。そして二十歳の息子はいかにも孝行息子という感じで父との再会を喜ぶ。
そしてカラオケ・ダンス大会に発展してみんなで踊り出す。日本でのカラオケシーンでは、歌う人だけが盛り上がる感じで周りは白けムードかな。義務的に盛り上げようとするのだが、全員でダンスというわけにはいかない。そのへんの感情表現の違い。そして突然のにわか雨でカラオケ・ダンス大会は中止になりみなは引き上げるのだが、残された日本人の元妻だけは一人で踊り続ける。このシーンは『母なる照明』のダンスシーンを想起させるような踊りだった。

そんなこんなで日本に戻らざる得ない妻が再び夫とところにで戻るのだが、それでいいのだろうか?日本人の気を使いながら傷つけまいとすることで、ぐだぐだな関係になっていく空気感は今の日本を象徴していると思った。

それでも詰まらない映画ではないのは木村文乃を始め出演者の演技も良かったからだろうか。


映画の元になった矢野顕子の主題歌は、ちょっとわからなかったな。遠い愛とか。矢野顕子も坂本龍一と別れたから、今の姿があると思うんだけどな。


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