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シモーヌ・シニョレの色気は小野小町か?

『愚か者の船』(1965年製作/アメリカ)監督:スタンリー・クレイマー 出演:ビビアン・リー、シモーヌ・シニョレ、ホセ・ファーラー、リー・マービン、オスカー・ウェルナー


キャサリン・アン・ポーターの長編小説『愚者の船』を「ニュールンベルグ裁判」のアビー・マンが脚色、「おかしな、おかしな、おかしな世界」のスタンリー・クレイマーが製作・監督した人間ドラマ。撮影は「おかしな、おかしな、おかしな世界」でクレイマーとコンビを組んだアーネスト・ラズロ、音楽はアーネスト・ゴールドが担当した。出演は「ローマの哀愁」のヴィヴィアン・リー、「年上の女」のシモーヌ・シニョレ、「アラビアのロレンス」のホセ・フェラー、「キャット・バルー」のリー・マーヴィン、「突然炎のごとく」のオスカー・ウェルナー、「大いなる野望」のエリザベス・アシュレー、「キング・ラット」のジョージ・シーガル、他にホセ・グレコ、チャールズ・コーヴィン、ハインツ・リューマンなど。

ヴィヴィアン・リー引退作でトップクレジットだったのでてっきり主役のパルチザン協力者の伯爵夫人かと思ったら、それにしては顔がでかいなと思ってよく調べたらシモーヌ・シニョレだった。チラシもアメリカ人俳優が映し出されているが、主役級なのはシモーヌ・シニョレと相手役の船医オスカー・ウェルナーだった。まあ、グランドホテル形式の群像劇なんでヴィヴィアン・リーとリー・マービンの見せ場はあるのだが。

「Ship of Fools」というロックでよく歌われる一連の船を国家に例えた物語があるのだが、リチャード・パワーズ『舞踏会へ向かう三人の農夫』で自動車会社の社長のフォードが第一次世界大戦で平和会議の船を出したという話が出ていたので興味を持ったのだ。

しかしこの映画は第二次世界大戦前の話でアメリカの砂糖労働者が不況で大量解雇されたのをヨーロッパへ返すというナチス・ドイツの船という群像劇で、グランドホテル形式の映画と成っている。最下層が移民たちのごった煮という感じでほとんどドラマは最上級の人々を映し出すのだが。戦争前とは思えない平和的な観光船なのだが、その中にユダヤ人商人やら、金持ちを狙うフラメンコダンサー一家がいたりするのだ。

ヴィヴィアン・リーはアメリカの絵描きカップルだが、男が絵のために俺についてこいと言ったとたん別れるといいだすキャリア志向の強い女性の役だった。その後に観た日本の家政婦並の扱いの夫婦の映画を観たのだが、今ではこのアメリカスタイルになっているだろうと思う。それでも、1965年制作で戦時前はそういうことを言う男もいたのだった。この映画で扱われる女性はほとんど恋の相手としてのドラマだが。

その中でシモーヌ・シニョレの伯爵夫人と船医オスカー・ウェルナーとのラブストーリーに話は進んでいく。シモーヌ・シニョレも当時はかなり老けているので42歳ということだが62歳ぐらいに見える役で老いらくの恋という感じなのか。ヴィヴィアン・リーはまだ若い姿なんで、これで引退はもったいないなと思うほど、シモーヌ・シニョレの老いの演技が素晴らしいのだった(アメリカではヴィヴィアン・リーでも引退させられるのにフランス映画はそういう役者もおおいのか?カトリーヌ・ドヌーブがいまだにトップを張っているのを見るとそういう歴史もあるのだろう。


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