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転落の人生の方が面白い?

『ガタカ』(1997/アメリカ)監督 アンドリュー・ニコル 出演 イーサン・ホーク/ユマ・サーマン/ジュード・ロウ

遺伝子操作により管理された近未来。宇宙飛行士を夢見る青年ビンセントは、劣性の遺伝子のため希望の無い生活を送っていた。そんなある日、ビンセントは闇業者の手配により、事故により身障者となった優秀な遺伝子をもつ元エリート、ジェロームに成りすます偽装の契約を結ぶ。そうして、ジェロームの遺伝子を借りてエリートとなったビンセントは、宇宙飛行施設“ガタカ”に潜り込む。が、そんな中、彼の正体に疑いを持っていた上司の殺人事件が起こり……。

SF映画というよりミステリーの部類だろう。最初の設定がSFだけど、偽装工作、殺人事件、なりすまし、というミステリーになっていく。でもミステリーだと思うと結局何も解決していないのが不思議な映画だ。

「適正者」「不適正者」の識別は『ブレードランナー』を踏まえている。このテーマは、ナチスのユダヤ人狩り辺りから一般的なテーマとしてあるのだと思う。だから、そういう共通項に人は惹かれる。

二つの世界を描いているのが名作とされる所以なのだろうか?それほど目新しいテーマでもないけど、まず宇宙と地球があって、兄弟争いがあって、チャンピオンの転落があって、同じもの同士の恋愛がある。

そういうしがらみを抜けて宇宙に飛び立つ映画と言えばいいのか?でも、そこに感情だけが残る。理知的に行けない悲劇があるのは、もう片方の銀メダリストの挫折だろう。そこが悲しいというか一番でなきゃ駄目だと思わせる社会なのか?トップを目指す話だからか?

悲劇のテーマとしては、カタルシスに忠実な作りで、その辺りはハリウッドの計算されたところなのかの思う。音楽のマイケル・ナイマンも泣かせるし。

ただ殺人事件を解決しないのがちょっと不満。あと採血するときにゴムをまかないで直接するのは、刑事だから許されるのか?そんな細かいところはどうでもいいんだろうけど。

主人公のイーサン・ホークの成功よりも影武者のジュード・ロウの悲劇に重点があるような。あと何気なく刑事役で出てきた弟とか。

そうだ『太陽がいっぱい』に似ているかも。結末は違うがなりすまし要素が。

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