見出し画像

9月に読んでもらいたい本

『九月、東京の路上で 1923年関東大震災ジェノサイドの残響』加藤直樹(2014)

関東大震災の直後に響き渡る叫び声。 ふたたびの五輪を前に繰り返されるヘイトスピーチ。 1923年9月、ジェノサイドの街・東京を描き、 現代に残響する忌まわしい声に抗う―― 路上から生まれた歴史ノンフィクション!

表紙カバーの絵は、小学生が描いた朝鮮人虐殺の絵。それも何枚もあるというのだからそれが特別のことではなく誰もが目にした光景だった。

それが忘却されていたのを再び掘り起こしたのは小学校の女教師だった。荒川の歴史を調べるために、たまたま聞いたお年寄りの話から衝撃を受けて調べ始めた。それが「追悼する会」を立ち上げるきっかけとなっている。

今回小池都知事の虐殺朝鮮人の追悼式を忘却しようとする行為によって再びこの本が脚光を浴びたのだ。それは過去のことではなく今も人々の深層にあることを思い起こして欲しい。

東京・横浜で起きた関東大震災でのデマを警察が拡散し、自警団が作られた。軍隊も出動した。時間の流れと地方まで拡散していくジェノサイドを証言・記事(読売新聞を作った正力松太郎の証言も。今では無かったことにしたいみたいだが)から追っていく。

さらに時間を経ての著名人の証言(芥川や萩原朔太郎)。劇作家の千田是也はこの時に朝鮮人に間違われて殺されそうになったので、芸名を千田(千駄ヶ谷)のコレヤン(Korian)と名付けた。現在の新大久保ヘイトデモ、さらにニューオリンズのハリケーン被害でデマの黒人虐殺が起きたことも。

これは教科書なることがない日本の歴史です。せめて副読本として絶版にされたりしないことを願う。(2017/09/23)

初出は「大震雑記」が「中央公論」[1923(大正12)年]、「大震に際せる感想」が「改造」[同年同月]、「東京人」(初出時「感想一つ」)が「カメラ」[同年同月]、「廃都東京」が「文章倶楽部」[新潮社、同年同月]。小品集「百艸」[新潮社、1924(大正13)年]に収録。「古書の焼失を惜しむ」は「婦人公論」[中央公論社、同年同月]、単行本未収録。全集10巻に合わせて収録。いずれも関東大震災に関する文章。

日比嘉高先生の『子供の震災記』深掘り

だれが小学生の作文を改ざんしたのか:検閲、震災、虐殺、発禁本 - 日比嘉高研究室 https://hibi.hatenadiary.jp/entry/2017/11/29/113609

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?