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アフガニスタンの実態は?

Netflix · ドキュメンタリー『ターニング・ポイント: 9・11と対テロ戦争』(アメリカ/2021)

ソ連のアフガニスタン侵攻から、80年代まで遡るアルカイダの起源、米国内および海外におけるテロをめぐる対応まで。あの9・11テロ攻撃を真っ向からとらえたドキュメンタリーシリーズ。

1、「重大な脅威」

9.11のツインタワー崩壊はそれまでアメリカ人が体験したことがない同時多発テロ事件だった。航空機がアルカイダのテロリストにハイジャックされ、最初の一機が世界貿易センターに突入し爆発炎上、続く旅客機が別の南棟に突入して崩壊した。同時にペンタゴンに突入。その現場をインタビューで解説。

それまで体験したことがないテロ事件に全世界がショックを受ける。特にツインタワーが崩壊する映像は衝撃的だった。日本人が設計したとのこと。強度とかどうだったのだろう?最初の一機で崩壊せずにいたのに、ニ機目で崩れ堕ちて行った。黙示録的な世界。誰もが衝撃を受けたが冷静になれる指導者がいなかった。ブッシュはアルカイダのテロ攻撃だとして、全世界に団結を呼びかける。

9.11が起きる前、1979年にアフガニスタンにソ連が侵攻。それに対抗するためCIAはビン・ラディン、アルカイダへのアメリカの武器供与があった。武装勢力に頼ってソ連に対抗してのだ。イスラム教徒のジハードは、民族主義的なものがやがて宗教戦争になっていく。イスラム穏健派よりもイスラム原理主義が台頭してくる。

参考映画『バイス』


2、危険地帯

アメリカはアルカイダのテロ攻撃に対して全面戦争に突入する。ツイン・タワー崩壊の地での「ゴッド・ブレス・アメリカ」の合唱。キリスト教徒の宗教的感情を煽る。大統領令(戦争の権限を全てを大統領に与える)で反対する議員は一人だけだった。ブッシュの後ろで糸を引くナショナリストたち。

ブッシュは報復攻撃を宣言する。アメリカの戦争は、ここでもベトナム戦争と同じように敵対する北部同盟に頼る戦争だった。アフガニスタンの山岳地帯ではタリバン勢力の一掃は難しかった。そして、ロシアと中国の賛同を得られなかった。すでにアメリカの支配力は低下していた。この戦争に係ることによって、経済では中国に負け、ロシアとは協調関係を築けなかった。武力行使は、最悪の結果となったのだ。その責任は誰が負うのか?ベトナム戦争と同じだ。アメリカの威信は地に落ちた。トランプの自国主義。バイデンでは変わらないだろう。

参考ドキュメンタリー、NHKBS世界のドキュメンタリー「裏切り者 米軍基地通訳者たちのそれから」

「“裏切り者” 米軍現地通訳者のそれから」
イラクやアフガニスタンで駐留アメリカ軍を支援した現地の通訳者たちが、過激派に「裏切り者」と見なされ命を狙われている。元通訳たちと家族を長期取材し、現状を伝える。
祖国の復興を助けたいと駐留アメリカ軍の通訳に志願したアフガニスタンの男性たちは今、イスラム過激派により「裏切り者」と見なされ、命を狙われている。顔を隠し家族で引っ越しを繰り返す者、難民ボートでヨーロッパへ向かう途中で船が難破し妻と娘を失った者。人生の再建を図ろうとする元通訳者たちの不安と苦しみを描き、映画祭で数々の賞に輝いた作品。原題:The Interpreters(アメリカ 2020年)

3、暗部

9.11のテロを許した背景にFBIとCIAの連携がなかった。FBIはテロリストのアメリカの入国情報を掴んでいたがCIAはその情報を見逃していた。どっちが権力を握るかの奢りなのだと思う。実際にこういう大きな組織は対立してしまう派閥みたいなのがあるのだろう。

そして、その失敗から今度は逆のことをやり始める。あらゆることを大統領の元に管理していく権力が働くのだ。法を無視し始める(大統領令)。そして、愛国法。イスラム教徒でタリバンやアルカイダの繋がりがあると思ったものいは捜査令状なしで捜査できる。そして、ビッグデーターを使ったネット監視の操作方法。管理監視社会の構築。アメリカで行われていることは日本でも行われるようになっている。

アフガニスタンでは、密告を奨励するビラを配る。情報提供者は一年余り働かない暮らせる賞金が出る。それによって多数のイスラム教徒が逮捕される。彼らの収容場所がキューバのグアンタナモ収容所だった。治外法権で米国の法が適用されない。何より驚くのが民間企業が経営していたのだ。軍産複合体の暗躍。

軍産複合体と言われる国家とは別機構だが、それだけに成果主義で法すれすれのことを行う。治外法権ならばなおさらで人権侵害で問題になった。拷問の仕方がギリギリのところを突き詰めてやるのだ。そしてテロリストは国家ではないのでジュネーブの捕虜条約がない。最初から犯罪者だ。やりたい放題で人権問題となる。

それでアフガン人の反感を買うのは目に見えていた。国内のイスラム教徒の反感も。そんな状態にしたのは、危機的状況のときに冷静な指導者がいなくて感情だけで動く指導者(大統領)だったからだ。これも今の日本に似ている。アメリカで爆撃された時に、それまで爆撃してきた歴史を思いだすべきだった。報復による報復が続く戦争。

4、良い戦争

イラク戦争はでっち上げで、結局アフガニスタンの兵力を削ぐ形となってタリバン勢の勢いを抑えることが出来なくなった。イラクは悪い戦争、アフガンは良い戦争というオバマ大統領の考え。しかしバイデンは撤退主義。その折衷案で期限付き限定戦争という形でアフガンの兵力を増強させた。

しかし、長期戦になって撤退期限を決めているから戦意にも影響し、相手も持続戦をし続けれる。厄介なのは自爆攻撃と地雷。一部隊の誰かが犠牲者になる戦争。ベトナムの再来だった。民間人が信じられなくなる。軍服を着ていない民間人のテロリスト。そして、15歳の少年兵を殺さねばならない。戦争後遺症PTSDの帰還兵たち。

傀儡政権の腐敗で賄賂が横行した。カルザイ大統領の長期政権は犯罪者集団になった。前線にお茶を出すティーボーイと呼ばれる少年性奴隷たち。麻薬が横行して、アフガン兵は酩酊状態だった。タリバンの民衆支持は当然だった。アメリカ兵は何の為の戦争かわからなくなる。そして、アフガン撤退。

それまで報道は戦果を上げたような政府要人の発言ばかりを流していた。アフガン戦争は巧妙に隠されていた(ベトナム戦争の教訓)。戦術はあっても長期的な戦略はなかった。その場限りの戦い。今の日本と似ているというか、日中戦争も同じだった。勝ち戦ばかり報道したが最初の電撃作戦だけだった。悲惨な戦争だ(負け戦は特に)。末端兵士たちのPTSDの現実。

5、帝国の墓場

2011年、オバマ大統領はパキスタンにいるビン・ラディンの居場所を突き止める。国交がないパキスタンに秘密裏に侵入して、住居の中のビン・ラディンを暗殺する。バレれば国際問題だった。

グアンタナモ収容所の捕虜拷問裁判。アメリカは三権分立がはっきりしているから裁判になる。グアンタナモ収容所の実態が明らかになる。

2011年アフガニスタンの目標が達成できた(ビン・ラディン殺害?)と撤退を表明。2016年までの撤退プログラム。アフガン兵の訓練。米兵の横暴な姿が問題となる(タリバンの遺体にしょんべんをかける)。無人機によるタリバン基地の破壊。民間人も多く犠牲になる。アフガン兵の反抗。トランプの自国主義はアフガニスタンに留まる理由がない(無関心)。見捨てられたアフガン人(アメリカ協力者)。タリバンとアフガン兵の内戦になる予感。

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