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仏教説話をアメリカで描くとグレートファーザーになる

『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』(2011年製作/129分/G/アメリカ)監督:スティーブン・ダルドリー 出演:トム・ハンクス、サンドラ・ブロック、トーマス・ホーン

解説
2005年に発表され、「9・11文学の金字塔」と評されたジョナサン・サフラン・フォアによるベストセラー小説を、「リトル・ダンサー」「めぐりあう時間たち」のスティーブン・ダルドリー監督が映画化。9・11テロで最愛の父を亡くした少年オスカーは、クローゼットで1本の鍵を見つけ、父親が残したメッセージを探すためニューヨークの街へ飛び出していく。第2次世界大戦で運命の変わった祖父母、9・11で命を落とした父、そしてオスカーへと歴史の悲劇に見舞われた3世代の物語がつむがれ、最愛の者を失った人々の再生と希望を描き出していく。脚本は「フォレスト・ガンプ 一期一会」のエリック・ロス。オスカーの父親役にトム・ハンクス、母親役にサンドラ・ブロックらアカデミー賞俳優がそろう。

原作が積読だったなと録画した放送を見た。最初は生意気そうな我鬼(少年)が9・11で父を亡くした映画かぐらいの気持ちで見ていたのだが、話の展開が仏教説話にある、子供を亡くした母が釈迦に子供を返して欲しいと言う話に似ていると思い興味を持った。他の不幸な家に行って同じような境遇の話を聞くことでこの世の不条理と向き合うという話の仏教説話が、アメリカの合理的ストーリーの組み立て方が隙がないぐらい見事過ぎるので、帰って不合理なことではなく合理的なことなのかと思えてくる。それはやはり神の定めなのか(作家が神の役目?)。ただ話せない祖父というのが今いち謎でその部分が小説ではもっとしっかり描かれているのだろうと思う。むしろ映画では必要なかったんじゃないかと思った。

少年の死を乗り越える通過儀礼のような、そこに観音様みたいな母がいて、何もかも見守っていて、けっこう幸福なんじゃないかと思えてきた。少なくとも父親に幻滅する年頃でもなかったのだし、死んでしまえば一生尊敬できる父だし、ラストは目出度い出来すぎな話のように思える。それは9・11でアメリカの悲劇というのが特別のことでもなく、例えば戦争で父親を亡くした人がいたり、ただ少年の場合は死の恐怖があって父親の最後の電話に出れなかったということがあるのかもしれない。

そういうところの作りがやっぱ上手いと思わせる 脚本なのか、原作の良さなのか。最後のニューヨークが昔なんたらかんたらは良く分からなかった。そのへんはアメリカ人ネタなのかな?

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