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シン・短歌レッスン15

カブトガニの映画も見たいけど余裕がない。配信待ちか。

シン・短歌レッスンも遅れ気味になっていた。毎日投稿するところを探した方がいいのか?そうすると短歌ばかりに追われて他のことが出来なくなる。悩ましい問題だ。

西行和歌

塚本邦雄『西行百首』

そろそろ西行の和歌にも飽きてきたところだ。これも釈教歌。新古新収録。その時の並びが凄いということなのだが、他の和歌を紹介するのも面倒だった。西行は辛気臭い和歌だということかな。嫌いじゃないけど。やっぱ幻想系がいいのかな。

短歌俳句十番勝負

今日も穂村弘X堀本裕樹『短歌と俳句の五十番勝負』から。最初は昨日と同じ五番勝負にするつもりだったが、思わず読み込んでいるうちに面白くなってしまった。俳句と短歌の同時に学べて違いも理解出来る。この本では穂村弘は幻想系で堀本裕樹はリアリズムに徹していると思うが、それは本人たちのキャラだけではないと思う。

「ぴたぴた」
あわあわの喉にぴたぴたあてられてすべりつづける刃よねむくなる  穂村弘
ぴたぴたと子が来てごまめ鷲掴み  堀本裕樹

谷川俊太郎「ぴたぴた」を抜かしていた。オノマトペの扱いをどう処理するか?なのだが、穂村弘は、幻想系ではなく床屋のリアリズムを歌ってきた。しかし、いつしか眠りにはいっていく導入的な音の合せ技。「あわあわ」と「ぴたぴた」を持ってきたところは評価が高いと思う。短歌ならではの字数だから詠えたというべきか。
一方俳句もリアリズムで子供が正月料理の「ごまめ」を握ってしまう情景である。ただ「ぴたぴた」はその子供の歩み寄りで季語の「ごまめ」からは遠い。「田作り」と言う意味もあるのか?普通に考えればいい句なんだが、子供の歌に偏見があるので、短歌の勝ち。

「文鳥」
文鳥の水浴びが光る珠をなすというあなたの部屋を思えり  穂村弘
文鳥の跳ぬる畳や夜の秋  堀本裕樹

夏目漱石に『文鳥』という名短編があった。書店員の題詠だけあって、そのへんなのかなと思う。忘れ形見の人の文鳥を見て幻想する穂村弘の短歌に近いかと思う。
ただ堀本裕樹も「夜の秋」は読書の秋に通じるようで、漱石を意識しているように思える。これは「持」でもいいんだけど、その前の勝負で私情が入ったので、判官びいき的に俳句の勝ち。

「罪」
有罪を告げて陪審員たちは歯医者と助手と患者にもどる  穂村弘
つくつくし誰が罪の尾を引きをらむ  堀本裕樹

これもいい勝負だな。穂村弘は歯医者=敗者と掛詞的に詠んでいると思う。被告は裁判に負けたのだ。そして、非日常から日常に戻っていく陪審員たちと有罪にうちひしがれている被告の対比があると思う。堀本裕樹は「つくつく」法師の無常観と「筑紫の人」というこれも掛詞らしいのだが難解だった。よって穂村弘の勝ち。

「ロール」
青空にエンドロールが流れだす 蝉が鳴いているだけだった夏  穂村弘
つやつやのバターロールや秋の湖(うみ)  堀本裕樹

「ロール」というだけでは難しく、短歌は「エンドロール」で俳句は「バターロール」と事象と物の対決になった。これも短歌と俳句の特徴が良く出ていると思う。穂村弘の夏の幻想短歌はけっこうありきたりなシーンだと思うので俳句の勝ちとするのだが、俳句の方の自説を読むと驚くべき句だった。
「秋の湖(うみ)」の持っていき方が不思議幻想句っぽいのだが、この句のイメージしたのが穂村弘の短歌「ジャムパンにストロー刺して吸い合った七月は熱い涙のような」を踏まえているのだという。そう、これは穂村弘への挨拶句でもあったのだ。堀本裕樹と言えば「東京マッハ」でも挨拶句の達人として知られている。よって俳句の勝ち。これが挨拶句と気づくはずもないが。

「はにかむ」
野良猫のはにかみしらず恩しらずミルク嘗めつつ唸る眼光  穂村弘
むかごみなはにかむごとき零余子(むかご)飯  堀本裕樹

「はにかむ」という題詠が短歌に有利だと思うのだが穂村弘は幻想歌というよりリアリティを感じられる。一方俳句は「零余子飯」が幻想の世界だった(食べたことがないのでよくわからん)。「むかごみな」の上五もよくわからない言葉だった。「零余子」という山芋の一種だそうだ。調べると俳句の奥ぶくさを感じのだが、最初の読みの衝動としては、短歌のイメージの掴みやすさで、短歌の勝ち。

「古本屋」
古本屋に入ったことがあるだろうか、朝青龍は、松田聖子は  穂村弘
古本出ずれば年の歩む音  堀本裕樹

「古本屋」はけっこうイメージが膨らむと思うのだが、朝青龍と松田聖子を登場させて挫く短歌。いまだとすでに過去の人だから連想性はあるのだが、二人が古本屋に入らないというイメージでもない。特に朝青龍は新弟子の時に日本語を賢明に勉強しようとして古本屋に入ったと思うのだが。勉強する面でもないだろうと言われればそれまでだが。一方俳句は上手くまとめていると思う。「年の歩む音」がいい。そこが季語的なのか?「年の瀬」を感じさせる一句。よって俳句の勝ち。いつの間に6番勝負になってしまった。この勝負は時を忘れるぐらい面白いから十番勝負にするか?

「ゲーム」
五円玉にテープを巻けばゲーム機は騙されるって転校生が  穂村弘
賀客迎へゲーム対戦相手とす  堀本裕樹

出題者が「東京マッハ」メンバーの米光一成だった。穂村弘の通貨偽造の犯罪歌に対して挨拶句的な内容の俳句。モラルとしてはどうなの?と思うがそういう転校生もいたようなリアリティは感じてしまう。挨拶句だとわかりやすいのも媚びを売っているようで。で、短歌の勝ち。

「誕生日」
垂直に壁を登ってゆく蛇を見ていた熱のある誕生日  穂村弘
初音てふ贈りものかな誕生日  堀本裕樹

これも千野帽子のお題で「東京マッハ」メンバーなのだが挨拶句はないような。「初音てふ」がよくわからないけど「初音みく」の親戚だろうか?「てふ」は「蝶」のような気がする。そう思うと思わぬ幻想句っぽい。短歌も幻想短歌なんだが、「蝶」と「蛇」の対決では「蝶」の勝ちかな。「初音」とは「鶯の声」だと自説解説。それで「初音みく」なのかと別の関心を呼んだ。

「部長」
部下たちの耳つぎつぎに破壊して出世してゆく部長の笑顔  穂村弘
胡瓜のど蒔きしと部長話し出す  堀本裕樹

これも「東京マッハ」メンバーの長嶋有のお題。「部長」はけっこう難しいと思うのだが、イメージが真逆だった。イメージとしては短歌の部長かな?親しみを出す俳句の部長もいそうだが話を合わすのも面倒だ。よって短歌の勝ち。

「稲荷」
動き出す前に駅弁たべるなとアナウンスあり 七色稲荷  穂村弘
うららかやぽこぽこできる稲荷寿司  堀本裕樹

「七色稲荷」って実際にありそうだ(神社はあった)と思ったのだが夢の中の食べ物だそうだ。俳句も夢のような句で「うららかや」と「ぽこぽこ」が効いているような美味しい稲荷寿司を想像する。「七色稲荷」は食べたくないような。よって俳句の勝ち。

映画短歌

昨日の映画『ワタシの中の彼女』から。

噂する彼女の未来
六道の
髑髏(しゃれこうべ)から薄(すすき)靡(なび)くや


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